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  • 2019年5月5日:吉田寮現棟の明け渡し訴訟に対する声明文

    吉田寮現棟の明け渡し訴訟に対する声明文

    5月5日 吉田寮自治会

    4月26日、京都大学執行部は、吉田寮生に対し、食堂を含む吉田寮現棟の明け渡しを求め、訴訟を提起しました。私たち吉田寮自治会は、現棟の老朽化対策を含む吉田寮の問題を、京大執行部が話し合いによる解決ではなく法的措置に訴えたことに強く抗議します。

    大学当局(とりわけ理事ら執行部)は、学生である寮生より、はるかに多くの法的権限を有しています。大学当局と学生との間には、厳然たる権力差があるのです。このような2者間で、権力を持つ側である大学当局が学生を相手取って訴訟を起こすことは、権力濫用にほかなりません。

    私たちは、5年以上も前から、現棟補修の実行可能性を大学当局に対して説明してきましたし、補修以外にも、一部建て替えも含む改修案を複数提示し、迅速な老朽化対策の実施を求めてきました。しかし、京大当局は、これらの建設的提案に対し「検討中」と、何年も繰り返すばかりで、実質的な解決に向けた歩み寄り、対話による解決策の模索を拒んできました。

    また、2017年12月には、「寮生の安全確保」を目的に、2015年竣工の新棟も含めた全寮生の退去を一方的に通告し、寮生に有形無形の圧力をかけることで、全棟退去を強いてきました。2019年2月には寮生による自治自主管理を根拠も示さずに非難し、入退寮選考権など従来認められてきた自治権を放棄した者にのみ新棟への居住を認めるという方針を発表しました。京大当局は、「寮生の安全確保」以上に、自治を問題視する姿勢を強めています。

    私たちは、根本的な問題の解決のために、2019年2月、建設的な話し合いが行われるならば現棟から一旦退去するという妥協案を提示しました。しかし、学生担当理事の川添信介氏は、寮生の提案を、大学当局の決定に従っていないことを理由に、一蹴しました。

    今回の提訴は以上のように、対話を軽視し、圧力によって異なる意見を封じこめようという流れの中にあるものです。こうした強硬な姿勢は、学生など当事者の主体性を軽んじる暴力的なものです。

    過去には、新棟の建設や寮食堂の補修(いずれも2015年に完了)のように、寮生と大学当局の話し合いによって、問題を解決してきました。学生など当事者との対話による問題解決は可能であり、それこそが「対話を根幹とした自由の学風」に適う決定プロセスではないでしょうか。

    一方で私たちは大学執行部に提訴されたからといって、強硬かつ一方的な姿勢に屈することもはできません。属性や経済状況によらず誰しもが持つはずの学ぶ権利を守るため、吉田寮という福利厚生施設を未来につなげるために、裁判においても従来私たちが行ってきた主張をはっきりと述べるつもりです。

    しかし私たちは、大学当局と学生の対話こそが、根本的な問題解決のための最善の方法であると考えています。訴訟は寮生の勉学、生活といったものを確実に破壊します。また長期間をかけて学生を追い出すか否かが争われることとなり、実質的な安全確保である改修はどんどん先延ばしになってしまいます。それは未来の学生の福利厚生を損なうことでもあります。歪んでしまった信頼関係を回復し、よりよい京都大学を目指していくことこそが重要であると考えています。

    私たち吉田寮自治会は話し合いを放棄するつもりはありません。

    私たち吉田寮自治会は京都大学執行部に対して、学生を相手にした訴訟を取りやめ、話し合いを再開するよう切に求めます。

  • 2019年3月16日:要求書

    京都大学総長 山極壽一 殿

    学生担当理事・副学長 川添信介 殿

    要求書

    2019年3月16 日 吉田寮自治会

    川添信介・学生担当理事は3月13日付で発表した文章「吉田寮自治会の『表明ならびに要求』について」の中で、2月20日付で私たちが行った表明と要求を「吉田寮の今後のあり方」に反しているという理由で拒否しました。

    しかし、大学当局の主張している現棟の立ち入り禁止は、その後の施設管理について言及されていない現状では、むしろ現棟の火災や、吉田寮新棟・大学内講義棟への延焼、建物の劣化といった危険性を増してしまうことになります。また、2015年に補修が完了した食堂からの退去にこだわり、2015年築の新棟に限定した新規入寮募集をあげつらう理事の姿勢は、安全確保という本来の目標を見失っているように思われ残念でなりません。

    「表明ならびに要求」(2月20日付)で述べたように大学当局及び川添理事が主張している、新棟居住に際しての6つの条件は、福利厚生の質を大きく損なうものであり、すべての条件を受け入れることはできません。もちろん、私たちは、大学の示した条件をすべて否定するつもりはありません。「吉田寮の未来のための私たちの提案」(2月20日付)で示したように、より良い福利厚生施設のあり方に向けて、建設的な話し合いを進めていきたいと切に願っています。これからの寮のあり方を考えていくうえで、これまで寮の運営を担ってきた寮自治会、寮生との対話が必要であることは、対話の価値を重んじてきた京大の執行部には、理解していただけると信じています。

    吉田寮自治会が、福利厚生施設として、自治空間として、どのようなあり方を残していきたいかについては、「吉田寮の未来のための私たちの提案」で示した通りです。私たちは、安全確保のため、信頼関係回復のため、大学執行部と手を取り合いより良い福利厚生施設を未来につなげていくために上記を踏まえ2点を京都大学に要求します。

    1. 5月末を目途とした現棟からの居住取りやめに向け、「食堂の継続使用について」、「現棟の維持管理について」といった項目を含む建設的な話し合いをよしだ寮自治会と行うこと
    2. 吉田寮自治会はより良い寮自治のために京都大学が提案した新棟居住に際して提示した六条件それぞれについての根拠の説明を求める。また条件一つ一つを寮自治会とすり合わせる建設的な話し合いを設定すること
  • 2019年3月5日:二度目の占有移転禁止の仮処分に対する抗議声明

    抗議声明

    2019年3月5日 吉田寮自治会

    さる2019年3月4日、京都大学当局の申立てを受け、京都地方裁判所によって、吉田寮現棟および食堂について、占有移転禁止の仮処分が強制執行された。これは、本年1月17日における占有移転禁止の仮処分に引きつづき、2度目の執行である。また、同日、京都大学ウェブサイトにおいて、京都大学名義にて「吉田寮現棟に係る債務者不特定の占有移転禁止の仮処分の執行について」と題する文章が発表された。 吉田寮自治会は、京大当局が寮自治会との話し合いによる問題解決を等閑視し、またも法的手段に訴えたことについて遺憾の意を表すとともに、当該文章における、これまでの経緯を捨象し、寮自治会に責任の全部を押しつけるかのような表現にたいして強く抗議する。以下、当該文章における問題点を具体的に記述する。

    当該文章では次のように書かれている。

    現棟に関しては、本年1月17日に、安全確保の観点から、寮生である債務者を特定した占有移転禁止の仮処分が執行されましたが、その際に、本学が把握する寮生以外の者が現棟に居住している可能性が高いことが判明しました。(中略)

    その結果、本日の執行により、本年1月17日の執行の際に特定された寮生以外の者が、現棟を権原なく占有していることが確認されました。

    たしかに、吉田寮現棟には、1月17日の執行時に債務者として名前を挙げられた寮生のほかにも、居住する者がある。しかし、それは次のような経緯により、正当なものである。吉田寮自治会は、月ごとに大学当局へ寮生の名簿(各寮生が現棟/新棟のいずれに居住しているかを明らかにしたもの)を提出しているが、2018年4月以降、寮自治会が従前どおり毎月名簿を提出しようとするも、大学当局はそのたびごとに受け取りを拒否しつづけている。その後も、寮自治会は、寮内での定期的な引越し、卒業等による退寮、新入寮生の受け入れなどにさいして、名簿を随時更新してきた。1月17日の執行における債務者の簡抜は、大学当局が受理した最後の名簿、すなわち2018年3月時点の名簿に根拠をおいているようであるが、当局が名簿を受け取らない以上、当然のことながら現在の居住の実態を反映したものたりえない。このように、現棟に居住する寮生を当局が把握できないというのは、ひとえに名簿の受け取り拒否という職務怠慢によるものである。

    また、「本学が把握する寮生以外の者」が「現棟を権原なく占有していることが確認され」たとされているが、吉田寮に居住する寮生はすべて、寮自治会による適切な選考を経た京都大学の学生である。したがって、今回の執行において名前を挙げられた寮生による現棟の占有は、正当な居住権にもとづいたものである。

    なお、吉田寮自治会は、本年2月20日付で発表した文書「表明ならびに要求」にて、一定の合意がえられるかぎりにおいて、本年5月末を目途として現棟における全寮生の居住を取りやめることとすると表明している。吉田寮自治会は、このような法的手段ではなく、大学当局との話し合いにもとづいた現棟老朽化問題の解決を切に望んでいる旨、あらためて強調する。

  • 2019年2月20日:表明並びに要求

    総長 山極壽一殿

    学生担当理事 川添信介殿

    表明ならびに要求

    吉田寮自治会は従来、大学の責任者と共に議論し、手を取り合い福利厚生の拡充と責任ある自治の実現に尽力してきました。吉田寮食堂の補修や新棟建設は、その信頼関係の大きな成果です。これは、寮自治会と京都大学のその時々の役職者が、ともに対話を尊重してきたからこそです。

    しかしここ数年、とりわけ現在の寮務担当の責任者である川添理事就任以降はそれがうまく機能しなくなっています。従来行われてきた建設的な話し合いの場を持つことは拒絶され、歴代の大学責任者との合意事項をまとめた書面である確約書は一方的に無効とされています。具体的な議論もなく一方的に確約書を無効だと主張する現理事の姿勢は、これまでの役職者がその時々判断を下して署名してきたという事実を著しく軽視したものです。この度京都大学が発表した「吉田寮の今後のあり方について」の中で新棟居住に際して提示した現棟および食堂からの退去、新棟での居住継続に関する、入寮募集停止を含めた6条件はあまりに唐突であり、福利厚生施設及び自治寮としての吉田寮の質を大きく損なうものだと考えています。

    一方で、寮自治会は現在の信頼関係の破壊の責任がすべて大学の執行部および川添理事にあるとは考えていません。私たちが実施しつつづけた新規入寮募集がその大きな要因であるということも認識しています。話し合いで合意に至らなかったことは、寮自治会としても自らの責任を重く受け止めています。

    ここに吉田寮自治会は破壊された信頼関係回復の第一歩として、以下の表明ならびに要求を行います。上記を踏まえ2019年3月13日までに誠実な回答を求めます。

    1 2019年春季の入寮募集について、現棟に関しては実施しません。

    2 安全性の担保されている吉田寮食堂の継続使用と、清掃や点検といった吉田寮自治会による従来通りの現棟の維持管理を行うことを大学当局との合意にいたることをもって、吉田寮自治会は本年5月末を目途として現棟における全寮生の居住を取りやめることとします。

    3 現棟の老朽化対策に関する吉田寮自治会との建設的な話し合いを、早急に再開することを求めます。

    2019年2月20日 吉田寮自治会

  • 2019年2月20日:吉田寮の未来のための私たちの提案

    吉田寮の未来のための私たちの提案

    2019年2月20日 吉田寮自治会

    1)「吉田寮の今後のあり方について」を受けて

    2019年2月12日、京都大学は『吉田寮の今後のあり方について』(以下、本文書において「今後のあり方」と言う)という文書を公式サイト上で発表し、記者会見を開いてマスコミ向けにこれを説明しました。この文書のなかでは、現棟の歴史的経緯について大学として配慮すること、および安全性の観点からは新棟の居住について問題がないことの2点が確認されています。これは、吉田寮自治会としてこれまで主張してきたことが認められたということで、前向きに評価できます。

    しかし一方で、大学当局は「適切な管理」や「時代の変化と現在の社会的要請の下での責任ある自治」を名目として、寄宿料・水光熱費を個別納入方式に変更することや自治会による入退寮選考を認めないことといった、新棟居住継続希望者に対する新たな条件を一方的に提示してきました。

    これまで吉田寮自治会は、「適切な管理」、「責任ある自治」の実現に向けて、試行錯誤しながら尽力してきました。しかし、「今後のあり方」の中で大学当局はその事実について何ら言及しておらず、主張の根拠は単なる大学当局の印象でしかありません。このような、事実に基づかない印象操作で寮自治会を非難しながら一方的に方針を提示するあり方は、健全な学内民主主義を否定する執行部の暴走だと言わざるをえません。以下では、私たちの取り組みを具体的に説明するとともに、大学当局との対話による合意形成に向けて、寮自治会としての提案を発表します。

    2)吉田寮のこれまでの管理・運営について

    2-a) 対話を根幹とした運営

    吉田寮においては、全寮生で構成される吉田寮自治会が責任を持って管理・運営を担ってきました。寮運営にあたって私たちは、「話し合いの原則」を大切にし、過剰な権力の介入を避け、起きた問題に一人一人が向き合って解決することを目指してきました。特に、差別や抑圧を可能な限り減らし、学生の学ぶ権利を確保することに向けて努力してきました。

    2-b) 入寮募集

    かつて男子学部学生しか住むことのできなかった吉田寮の門戸をあらゆる性を持つ学生、多様な国からやってくる留学生に開いたのも京都大学の執行部ではなく、私たち吉田寮自治会でした。

    入寮選考については、入寮選考委員会が希望者1人1人を面接し、各々の経済状況など寮を必要とする理由を聞き、合格者を決定してきました。寮生の努力や工夫によって、様々な方を受け入れて今日に至っています。

    2-c) 開かれた場を作るための試み、その象徴としての吉田寮食堂

    さらに私たちは福利厚生施設としての吉田寮だけではなく、地域や世界に開かれた吉田寮としての運営にも取り組んできました。後述する吉田寮食堂を起点に、寮生と地域の方々と手を取り合い、ライブ、演劇、マーケットやシンポジウムほかにも様々な文化的諸活動の場を作り上げてきました。昨年からは、吉田寮現棟の歴史的文化的価値への理解を深めるため市民に向けた見学会を始めたほか昨年9月には、吉田寮現棟の保存活用、再生プランを検討するシンポジウムを開催しました。

    「今後のあり方」では2015年に補修も完了した吉田寮食堂も、使用禁止の対象とされています。食堂は、1986年の炊フの配置転換により、給食機能を失いました。その代わり、使用者会議で寮生・寮外生が話し合いながら、イベントスペースとして運営し、これまで様々な表現活動の拠点となってきました。現在では京都における、重要な文化活動・芸術活動の一拠点となっています。現に、大学当局の主張する「退去期限」以後も活発にイベントが開かれ、多くの方に足を運んでもらっています。以上のことから、吉田寮食堂は、京大の「基本理念」に掲げられた、「地域の社会との連携を強める」こと、「国際交流を深める」ことの実践の現場であると考えています。

    2-d)その他の取り組み

    他にも吉田寮では、より良いあり方を志向して、様々な問題提起や試みが寮生や使用者により行われてきました。例えば、大学を筆頭とする公共施設には通常女/男別のトイレしかないために、トイレを使う時に、自分の望まない性のあり方を強要されたり、そのためにトイレを我慢しなければいけないという問題があります。このことから、吉田寮新棟を建設する際には、寮生間の話し合いにより、寮内トイレのオールジェンダー(性不問・完全個室)化を図ることとしました。また、日本語を得意とする人とそうでない人との情報格差を埋めることを目的とした「言語支援局」を設立し、ビラ・資料の多言語化の試みを行ってきました。

    2-e)居住管理に関して

    「今後のあり方」では、居住実態の管理についても言及がありました。この点については、これまでは入寮選考委員会が部屋割りを作成し、居住の実態まで含めて適切に把握をしてきました。

    居住実態の把握にあたっては、寮生個人のプライバシーには極力配慮しています。また、相部屋制度や共有スペースの確保などで寮生同士に日常的な顔の見える関係性があることによって、災害時に協力して対応したり、孤立を防いだりしてきた面があります。

    京大当局は、職員の立ち入りが拒まれているかのような書き方をしています。しかし、これは明らかな事実誤認もしくは印象操作です。まず、前提として寮は生活空間ですので、職員といえど不必要に部屋に立ち入ることは好ましいことではありません。また、寮内で起こる生活上の問題などは職員の立ち入りで解決するわけでもありません。それでも、職員が立ち入りの必要性を説明すれば、寮生が立ち入りを妨害することはありませんでした。現に、消防設備点検や設備補修の際には、業者が寮内に立ち入ることがありました。

    2-f)まとめ

    このように、吉田寮の運営は、寮生を中心とした当事者が主体的に試行錯誤をしながら担ってきました。もちろん、すべての活動がうまくいったわけでも、すべてが正しかったわけでもないと思います。ただ、これらの取り組みが長い歴史を積み重ね、その延長に現在の私たちの自治があることは、この社会において少なからず意義があることだと考えています。

    3)私たちが残したいもの

    私たちは、経済的困難をはじめとする様々な事情を抱えた学生の福利厚生施設としての吉田寮、また豊かな自治が行われ多様な人が集い交わるこの場を、吉田寮現棟の歴史的な価値とともに後世に残していきたいと思っています。そしてそういった吉田寮の存在意義を保ち続けるために、寮生自らが最適な寮の運営を主体的に決定するための機関としての寮自治会が、必要不可欠であると考えます。

    吉田寮はいかなる場所であるべきか。吉田寮は、京大で学ぶ人の権利を保障するための福利厚生施設であることは言うまでもなく、その他京大の学生、そうでない学生、教職員、地域の方など、様々な人が集い、交流し、知識を共有し新たな文化を創造するパブリックスペースとして一定の役割を果たしてきました。このようなあり方をこそ、残していくべきだと私たちは考えています。これは、京大の「基本理念」に掲げられているような「開かれた大学」という理想に沿うものでしょう。こうした理想の実現のために、吉田寮の今後のあり方を決めていく過程において、実際に関わる当事者の意見を尊重してほしいと願っています。現執行部の進める方策は、寮生を「無責任」だと非難こそしても、この場所にどのような価値を見出し、今後どのように運営していきたいのか、ビジョンに乏しいと言わざるをえません。

    4)大学執行部との信頼関係回復に向けて

    円滑な寮運営には、大学当局との信頼関係が不可欠であることは確かです。従来は、大学の責任者と共に議論し、落としどころを見つけて手を取り合いそれを実現してきました。吉田寮食堂の補修や新棟建設は、その信頼関係の大きな成果です。これは、寮自治会と京大のその時々の役職者が、ともに「対話」を尊重してきたからこそです。

    しかしここ数年、とりわけ現在の寮関係の責任者である川添理事就任以降はそれがうまく機能しなくなっています。従来行われてきた建設的な話し合いの場を持つことは拒絶され、歴代の大学責任者との合意事項をまとめた書面である確約書は一方的に無効とされています。具体的な議論もなく一方的に確約書を無効だと主張する現理事の姿勢は、これまでの役職者がその時々判断を下して署名してきたという事実を著しく軽視したものであると考えます。

    一方で、寮自治会は現在の信頼関係の破壊の責任がすべて大学の執行部および川添理事にあるとは考えていません。話し合いで合意に至らなかった場合、一方のみに責任を押し付けることは適切ではなく、寮自治会としても自らの責任を重く受け止めています。

    しかし、入寮募集を一方的に「無責任」と非難されることには疑問を感じます。現棟の老朽化については、居住している私たちこそ、とても憂慮しており、その対策を30年以上も前から求めてきました。ところが、これらに真摯な対応がなされることがなく、今後の老朽化対策案についても何ら明示しないまま、「募集停止要請」は出されました。要請を受けて、寮自治会からは、内部で議論を積み重ね、「話し合いで合意がなされれば部分的に退去する用意もある」ことを大学当局に対して説明してきました。さらに自治会が譲歩を重ね大学の提示する条件(参加者10名まで、傍聴不可、時間を2時間のみとし途中で打ち切りも可能にするなどの多くの制限)を受け入れ、行われた二度の話し合いの中では、こちらからは、さらに具体化した補修案を提示しました。しかし、川添理事は「意見は聞くが合意形成はするつもりはない」と言い放ち、こちらの案への応答を拒否し、こちらからの説明をさえぎる形で恫喝するなど、話し合いの前提を崩しました。理事がいまだに恫喝というハラスメント行為について、謝罪を拒み続けていることからも、当事者に対して真摯に向き合い合意を形成する意思がないように思われます。

    入寮募集については、大学当局が募集停止要請を喧伝する中でも数十人の入寮希望者が毎年ありました。しかし募集停止要請が一方的なものであったとしても、大学当局の要請に逆らったことに問題が全く無かったとは思いません。しかし、それだけ寮を必要とする学生が毎年おり、今もいるという事実は、真摯に受け止められるべきではないでしょうか。吉田寮への入寮を求める学生の中には、学費、生活費の全額を自ら支弁しなければならない苦学生や、学位課程の学生とさほど変わらぬ学費を納入しなければならないにも関わらず、大学からの授業料減免をはじめとする経済支援を受けられない種別の、いわゆる非正規学生など、吉田寮に入寮できなければ京都大学における学習・研究を諦めざるを得ない者も多数います。吉田寮自治会として、京都大学の福利厚生施設を必要としている人々に応えることも、大事な責務であったと私たちは考えています。

    5)吉田寮自治会からの提案

    自治のあり方については、一方的な通告ではなく対話によって合意が図られるべきものだと私たち寮自治会は考えます。大学執行部が独断で決定し、当事者との合意なく決定した方針が押し付けられるだけの今のあり方は適切とは言えません。今回京都大学が新棟居住に際して提示した現棟および食堂からの退去、新棟での居住継続に関する、入寮募集停止を含めた6条件はあまりに唐突であり、福利厚生施設及び自治寮としての吉田寮の質を大きく損なうものだと考えています。

    しかし同時に吉田寮自治会は、大学執行部が提示した条件の全てを否定することはしません。破壊された信頼関係回復の事始め、大学の執行部と吉田寮自治会が手を取り合いより良い京都大学を作っていく第一歩として、

    1.安全性の担保されている吉田寮食堂の継続使用

    2.清掃や点検といった吉田寮自治会による従来通りの現棟の維持・管理

    上記の二点を合意できるのであれば、安全確保に向け五月末をめどとした現棟の居住取りやめを行うことを表明します。

    なお、2019年度春季入寮募集に関しては現棟への募集をとりやめ、安全性が十分に保障されている新棟に限定して通常の日程で行います。

    そして吉田寮自治会との現棟老朽化対策をはじめとする種々の議題の建設的な対話の再開を求めます。私たちは、京都大学が法的手段によってではなく、吉田寮自治会との対話によってこの問題を解決できると信じています。大学執行部が、京都大学の「基本理念」にも掲げている「自由の学風」「自由と調和」といった観点を尊重して判断をされることを切に望みます。

  • 2019年1月19日:京大当局による『占有移転禁止の仮処分』申し立てに対する抗議声明

    京大当局による「占有移転禁止の仮処分」申し立てに対する抗議声明

    2019年1月19日 吉田寮自治会

    1月16日午前、京都地方裁判所の執行官が来寮し、「占有移転禁止の仮処分」を吉田寮現棟・食堂に下した。京大当局が同日夕方に発表したところによれば、京大当局がこの仮処分を申し立てたという。

    私たち吉田寮自治会は、当事者との話し合いを放棄して法的措置に手を出した京大当局に対し、厳しく抗議するとともに、改めて、現棟の老朽化対策については、対話による合意形成によってすみやかに進めるべきだという立場を表明する。京大当局が、訴訟に踏み切るのを控え、学生との話し合いのテーブルにつくよう改めて求める。

    ◆「占有移転禁止の仮処分」とは

    「占有移転禁止の仮処分」とは、明け渡しを求める訴訟の前提として、被告となる占有者を固定するための措置である。今回の仮処分の対象は、現棟と食堂で、数十名の寮生が「債務者」として、占有の移転を禁じると公示された。

    ◆法的措置は大学自治の放棄である

    京大当局は、「やむなく今回の仮処分の申立てを行った」1と説明しているが、吉田寮自治会が求めている話し合いを拒絶しておきながらのこうした説明は詭弁というべきである。京大当局が、真に、すみやかな現棟の老朽化対策を進めたいのであれば、吉田寮自治会との交渉により合意形成をすべきである。現に、川添理事の就任以前の2015年2月までは、補修の方向性で議論を進めていくことで合意をしてきた2。しかし、2015年3月以降、老朽化対策に関わる交渉を一方的に打ち切り、川添理事が就任した2015年11月以降は、そもそも交渉の場すら開かれなくなった。交渉形式に固執して話し合いに応じない川添理事に配慮して、寮自治会が、理事の提示する話し合いの条件(非公開、出席人数制限など)を受け入れて設けられた2018年7月と8月の交渉の場でも、川添理事は、これまでの議論の積み重ねや、寮自治会からの新たな提案を無視した3。このような大学当局の頑なな姿勢こそが、寮自治会の切に望むところである現棟老朽化対策を遅らせているのであり、このような事実を捨象して、居住を続ける寮生を非難し、法的措置に踏み切ったことは、大学自治を放棄したに等しい由々しき問題である。大学自治とは、意見が違う他者に耳を傾け、対話し、合意を形成していく営みによってはじめて可能になるのではないのか。意見が異なる相手に向き合わず、権力機関をも利用して従わせる今の京大当局のあり方に、私たちは強く抗議する。

    ◆京大当局によるハラスメントを許さない

    今回の仮処分を受けて京大当局は、「明け渡し訴訟は排除していない」と説明し、「寮生には賢明な判断をしてほしい」とコメントしている4。訴訟という措置をちらつかせながら、自らの方針に従わせようとするこのようなあり方はハラスメントである。寮自治会と、法的な最終決定権を持つ大学当局との間には厳然たる権力差がある。このような関係性を権力を持つ大学当局が利用して、意見の違う他者を従わせようとすることは、明白な人権侵害である。そもそも、これまでの合意形成の証拠である確約を一方的に破棄して、退去を迫る「吉田寮生の安全確保についての基本方針」が、寮生ら当事者に対するハラスメントであり、それに加えて今回のような威圧的措置を取っていることは、仮にも教育機関であるはずの京大のあり方として不適切というべきである。

    ほかにも、川添・学生担当理事は、7月13日の交渉で行った恫喝というハラスメントについて、被害者から謝罪を求められているにも関わらず、居直り続けている。今回1月17日の記者会見の場でも、川添理事は謝意を示すどころか、恫喝を当然視する発言をした5。川添理事においてはまず自身の問題行動を振り返り、当事者に謝罪し、寮自治会との関係を修復する努力をまず行うべきである。それらを伴わない川添理事には吉田寮に関して公的に発言する適格性がないことを、改めて付言しておく。

    ◆私たちはあくまで対話を求め続ける

    私たち吉田寮自治会は、京大当局に対して、訴訟に踏み切らず寮生との話し合いを再開することを要求する。現棟老朽化対策は、話し合いによって解決を急ぐべきなのであり、法的措置に訴えることは根本的な問題解決にはならない。私たちは、京大当局による脅迫的な退去強要には応じない。あくまで対話による合意形成を求め続けていく。

    1京大公式サイト「吉田寮現棟に係る占有移転禁止の仮処分の執行について(2019年01月17日)」、http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/kyoiku-suishin-gakusei-shien/kosei/news/2018/190117_1.html

    22015年2月12日確約第11項には「大学当局は本確約末尾に示す『吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義』を認め,その意義をできるかぎり損なわない補修の実現に向けて,今後も協議を続けていく」とあり、杉万理事(当時)は、補修の方向性で議論を進めることに同意していた。

    3交渉については、寮自治会が出している「吉田寮タイムズ1」、「吉田寮タイムズ3」、「180713交渉詳細報告」、「180830交渉報告(詳細版)」を参照。

    4毎日新聞1月18日朝刊「京大・吉田寮に仮処分 大学側『明け渡し訴訟排除せず』」、https://mainichi.jp/articles/20190118/k00/00m/040/075000c

    5京都新聞1月18日朝刊「京大吉田寮生「恫喝」した副学長 『反省求めるのは当然』と強調」(https://www.kyoto-np.co.jp/education/article/20190117000189)

  • 占有移転禁止の仮処分について

    2019年1月17日、京都地方裁判所の執行官が来寮し、吉田寮現棟・食堂に対して「占有移転禁止の仮処分」を下しました。同日、京大当局は記者会見を開き、処分の申し立てをしたことを明かしました。

    吉田寮自治会からの抗議声明:pdf

    吉田寮タイムズ6:pdf

  • 2018年11月21日付「公開質問状」

    学生担当理事・副学長 川添信介殿

    公開質問状

    2018年11月21日

    吉田寮自治会

    2018年11月9日の京大当局による警察への通報行為について、あなたの名前で「大学としての」弁明が為されている。これを受けて、あなたに対して以下の質問をする。

    質問1.

    2018年11月9日の京大当局による警察への通報行為について、現場の職員に警察に通報するよう指示を出したのは川添理事で間違いないか。2回の通報それぞれについて答えよ。

    質問2.

    公安警察が大学に入構するような事態を招いた結果に対して、どのように責任を取るつもりか、説明せよ。

    質問3.

    学生とのトラブルなどの学内問題に関して大学当局が警察に通報行為をする際、どのようなプロセスを経て機関決定し、誰が警察の入構を許可するのか、ガイドラインを明らかにせよ。

    回答期限は12月14日とする。

  • 2018年11月21日:2018年11月14日に京大当局が発表した「平成30年11月9日の警察への通報について」への見解

    2018年11月14日に京大当局が発表した

    「平成30年11月9日の警察への通報について」への見解

    2018年11月21日

    吉田寮自治会

    2018年11月9日、吉田寮自治会が京大当局に対話を要求する行動を行った際、大学職員から寮生に対する暴力的な行為や、警察導入による威嚇が行われた。この件について、11月11日に寮自治会より抗議声明を発表したところ、11月14日に川添信介学生担当理事・副学長(以下川添理事)文責にて「平成30年11月9日の警察への通報について」と題して「大学としての事実関係の説明」が発表された。今回は、寮自治会として、この「説明」に対する見解を述べておく。

    まず、発表された「説明」文には、以下のような問題点がある。

    問題点1.

    なぜ吉田寮生達が、川添理事らを本部棟前で待ち、足止めして対話を要求し続けたのかという経緯が抜け落ちている。

    問題点2.

    事態が収束しない一番の原因である「当局による対話拒否」問題を解消する道筋を示さないまま、ただ「事態を収束させるために警察に通報した」とだけ言われてもその正当性の釈明になっていない。

    問題点3.

    学内処分をほのめかし、立場の弱い相手を脅すことによって、指示に従わせようとしている。

    問題点4.

    11月9日当時、大学構内に入構した警察の中には、公安警察の姿もあった。警察権力の中でも、公安課とは現国家体制の方針に基づいて、市井の思想や運動を調査し取り締まることを目的とする組織である。大学における公安警察の介入は、教育や研究自由及び構成員らの自主的な活動を脅かし得る行為として、殊更慎重であらねばならない。川添理事文責の「説明」文を呼んでも、公安警察が大学構内に入構するに足る十分な説明が為されていない。

    吉田寮自治会は、川添理事の提示する少人数交渉の条件に全て従い、話し合う場を設定する努力を行ってきた。しかしその交渉も2回で打ち切られ、再開の目処が立っていない。10月17日には公開質問状を提出したが、回答も拒否された。このような状況で、寮自治会は直接川添理事に会いに行くほかなく、対話に応じてほしかった。どうしても立ち去ってほしくなかったのだ。

    しかしながら、意見の違いを擦り合わせ、対立を解消するために対話再開による問題解決を求めた寮生らに対して、「説明」文では学内処分がほのめかされた。これは、「自身の権力や立場の優位性を利用して相手にさまざまな苦痛を与える行為」と等しく、ハラスメント行為の典型であり、到底容認できない。

    吉田寮自治会は、あくまで対話によって現棟の老朽化対策ならびに吉田寮の「退去期限」問題の解決を前に進めていきたいと考えているという立場を改めて強調する。事実の誇張や隠蔽、脅迫といった小細工を行うのではなく、事実関係とこれまでの積み重ねにもとづいて、京大当局との建設的な対話を進めていきたい。

    川添理事および京大当局には、このような脅迫的態度をあらため、一連のハラスメントに対して改めて反省と謝罪を求める。そして、2018年8月30日に中断された交渉を直ちに再開するよう求める。

    なお、本件に関して、当事者である吉田寮自治会側に、自分の主体と責任でもって事実確認を行いたいという学内有志がいれば、我々はいつでも応じる準備があることを表明しておく。