2020年10月1日:2020年10月からの京都大学役員一同への要求書

京都大学総長 湊 長博殿
男女共同参画、国際、広報、渉外(基金・同窓会)担当理事 兼 副学長 稲垣 恭子殿
研究倫理、研究公正、研究規範担当理事 兼 副学長 北村 隆行殿
国際渉外、海外同窓会担当理事 久能 祐子殿
研究、評価、産官学連携担当理事 兼 副学長 時任 宣博殿
総務、労務、人事、危機管理、施設担当理事 平井 明成殿
教育、情報、図書館担当理事 兼 副学長 平島 崇男殿
財務、入試担当理事 兼 副学長 村上 章殿
戦略調整、企画、学生、環境安全保健 担当理事 兼 プロボスト 兼 副学長 村中孝史殿

2020年10月からの京都大学役員一同への要求書

 吉田寮自治会は、本日2020年10月1日より京都大学の役員となる皆さまへ以下の通り要求します。2020年10月31日までに回答してください。なお、やむを得ない事情により期限までに回答できない場合は、その理由と共にいつまでに回答できるかを吉田寮自治会までお知らせください。

1、老朽化対策を含む今後の吉田寮のあり方について、団体交渉を含む、寮自治会など当事者との話し合いを再開すること

2、吉田寮自治会と歴代役職者が締結してきた確約を引き継ぐこと

3、寮生・元寮生を被告とした建物明渡請求訴訟を取り下げること

以下、それぞれについて詳細を述べます。

1、老朽化対策を含む今後の吉田寮のあり方について、団体交渉を含む、寮自治会など当事者との話し合いを再開すること

 これまで吉田寮自治会は、寮生など当事者間の「話し合いの原則」を軸としながら、差別や抑圧を可能な限り減らし学生の学ぶ権利を確保することを目指して、京都大学の学生寮として責任ある自治を担ってきました。性のあり方や国籍による入寮資格の制限を撤廃し、福利厚生の門戸を吉田寮自治会が主体的に広げてきたことは、その一例です。

 他方、大学執行部が一方的に寮のあり方を決め、その決定を居住者である寮生に押し付けることは、学生の生活実態にそぐわない運営を招く危険なものにしてしまいます。実際、京大学内の他寮において近年寮費の大幅な値上げが行われたり、当局が管理する留学生寮では在寮年限等が厳しく制限されている現状があります。

 川添信介・前学生担当理事は「全学生への公平な福利厚生の提供」を主張しましたが、それは役員会が一方的に定める画一的な基準によって安易に達成されるようなものではなく、多様な属性をもつ居住する学生自らが話し合いに主体的に参加することが重要であると考えます。吉田寮に関する問題については、寮自治会など当事者の意思が尊重され、当事者との対話と合意形成の上で決定される必要があります。

 2015年までの数十年間、寮自治会と大学当局は、公開の場での話し合い(団体交渉)を通じて合意形成をはかり、その内容を確約書として取り交わしてきました。話し合いを公開の場で行うのは、双方の間に大きな権力差があることを認識し、また吉田寮に関係・関心をもつ多様な当事者を話し合いの場から排除しないためです。実際にこの合意形成プロセスを通じて、吉田寮食堂の補修・新棟の建設(2012年に確約締結、15年に完了)など、吉田寮に関する問題は大きな進展をみてきました。

 しかし2015年に就任した川添信介・前学生担当理事は団体交渉を「『話し合い』とはかけ離れた異常なもの」だと断定して出席を拒んだ上、過去に締結された確約書は「半ば強制されたもの」で「機関決定を経ていない」ため無効である、と一方的に主張してきました(注1)。しかし、具体的にどの団体交渉について、どのような事実に基づき「異常」だというのか、確約のどの部分がどのような根拠で「半ば強制された」ものなのか、明らかにしていません。これは、これまで長きに渡り、丁寧に当事者と話し合いを積み重ね確約を締結してきた、当局の歴代責任者の主体性を全否定することでもあります。なお確約書の有効性は大学当局側の文書にも証左があります。例えば2015年には、吉田寮自治会からの公開質問状に対して杉万俊夫・元学生担当理事名義で公式に回答がありましたが、その中身は、明らかに寮自治会との確約が有効であることを前提としています(注2)。

 川添信介・前理事は、団体交渉を否定した上、寮自治会が当局側の条件(時間制限・人数制限・一切の傍聴を認めないなど)を受け入れることで実現した非公開の場での話し合いにおいてすら、「意見は聞くが合意形成はしない」と言い放ち、たった2回で話し合いを打ち切りました。総じて前執行部は、当事者との対話をあまりに軽視する姿勢であったと言わざるを得ません。

 吉田寮自治会は、団体交渉を含む方法によって、当事者との話し合いを再開し、現棟の老朽化対策など、吉田寮の今後のあり方について協議を再開することを要求します。なお新型コロナウイルス感染症が流行している現状においては、オンラインツールを利用するなど感染症対策に留意した新たな話し合いの形式についても双方の協力の下模索したいと考えています。オンラインを駆使してより多くの人が参加できるように開かれた形で行うなど、従来のあり方に囚われない形での発展的な形式での話し合いを是非とも共に模索してみませんか。

(注1) 2018年8月28日 川添信介理事『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』

(注2) 2015年8月17日 杉万俊夫理事『吉田寮自治会からの公開質問状に対する回答』https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/kyoiku-suishin-gakusei-shien/kosei/news/2015/150817_1.html

2、吉田寮自治会と歴代役職者が締結してきた確約書を引き継ぐこと

 確約には、「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」(項目1)とあります。これは、大きな権力差のある二者間での話し合いが対等なものであることを保障するための努力の一つの表れです。当局の歴代責任者は、大学当局と吉田寮自治会との間に権力差があることを真摯に受け止めていたからこそ、こういった項目が含まれる確約を遵守し、できる限りその権力差を是正するように尽力して来たのです。吉田寮の今後のあり方を決めていく上で、本確約が引き継がれることは絶対不可欠です。

 確約には、「吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ」(項目17)と明記されています。大学の責任ある交渉主体である理事・副学長が約束したことが、責任者が交替した途端に一方的に無視されることがあってはなりません。本項目に基づき、これまで数十年に渡り、大学当局側の責任者が交替する度に確約は引き継がれてきました。直近の確約は、2015年2月12日に杉万俊夫・元学生担当理事との間で締結されたものです。ところが2015年11月に就任した川添信介・前理事は、確約の引き継ぎを拒み、上述のように確約の有効性自体を否定するようになりました。これは過去長きにわたる当局と寮自治会双方の努力を無に帰そうとする暴挙です。

 吉田寮自治会は新執行部に対し、まず2015年の確約の引き継ぎを行うことを求めます。繰り返しますが、確約書は責任と権限をもつ大学理事との合意事項を記したものであり、一方的に内容を変更したり、破棄することは認められません。内容を変更するならば、団体交渉において議論する必要があります。前任の川添信介・元学生担当理事が確約の引き継ぎを拒否したため、5年間の歳月を経て文言の調整・変更が必要である項目が項目9にあります。それらについての議論も、前項2で要求した通り、吉田寮自治会など当事者との団体交渉をもって行いましょう。

 なお、確約やその他の合意事項、継続協議中の内容、それらの議論の経過を正確に引き継ぐためには、これらの経緯について把握している前任者の出席もあればより望ましいと考えます。

3、寮生・元寮生を被告とした建物明渡請求訴訟を取り下げること

 2019年4月26日、京大当局は吉田寮生20名を被告として、吉田寮現棟・寮食堂の明け渡しを求める訴訟を提起しました。さらに2020年3月31日には、25名の寮生・元寮生を被告として追加提訴しました。

 「吉田寮現棟の明け渡し訴訟に対する声明文」(2019年5月5日)においても抗議した通り、本訴訟は大学当局と学生との権力差を利用した恫喝的訴訟です。それだけではなく、大学当局は、吉田寮自治会からの幾度もの話し合いの要求、寮自治会が提示する現棟改修案を一切無視し続けてきました。とりわけ2019年2月20日に寮自治会は、現棟における居住の取りやめをも含む妥協案を提示し、話し合いの再開を求めましたが、大学当局は「大学の決定に従っていないから」という理由をもってこれを一蹴しました。

 この訴訟は、前大学当局執行部が繰り返し発言してきたような、「やむを得なかった」ものでは決してなく、多少でも当局側の歩み寄りがあれば、十分回避できたものです。それを敢えて提訴に踏み切ったことは、京都大学当局は、当事者との対話を軽視し、圧力によって異なる意見を封じこめようとする考えがあってのことと評価せざるを得ません。

 本件訴訟については、学内の教職員、学生団体、吉田寮食堂・厨房使用者、元寮生、元教員、元京都大学総長、地域住民など広く学内外から、京都大学当局に対して、取り下げを求める声が上がっています。今年7月に行われた京大総長選の最終候補者のうち一人も、本訴訟について「不幸なことに、京都大学における近年の『変化』を象徴する出来事」であり、「大学が学生を提訴しているという状態を一刻も早く解消し、あらためて当事者との対話を再開する必要があ」ると述べています(注3)。こうした明確な反対意見の表明が学内にすらある状況で、少数の役員会のみの判断で訴訟を継続することは、学内民主主義を骨抜きにし、京都大学に対する社会的信頼を失墜させるものです。

 吉田寮自治会は、新執行部がこれまでの方針を見直し、一刻も早く「大学が学生を訴えている」という異常な事態を撤回し、寮自治会との建設的な話し合いを再開することを要求します。

(注3) 「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」ウェブサイト https://president-election.hatenablog.com/entry/2020/07/11/131441

以上

2020年10月1日
吉田寮自治会

【参考資料】2015年2月12日に杉万俊夫学生担当理事(当時)と締結した確約書

2020年秋季入寮面接について/2020 Autumn Semester Application for Yoshida Dormitory(Yoshida Ryo)/关于2020年秋季吉田寮入住面试/요시다 기숙사 2020 년 가을 학기 신청 (요시다 료)

(日本語)既に告知している通り、吉田寮は2020年秋季も予定通り入寮募集を行います(詳しくは、以下のウェブページに掲載している募集要項をご覧ください:yoshidaryo.org/enter/)。入寮面接も予定通り行います。

ただし、新型コロナウイルスの感染が拡大している昨今の状況を鑑みて、特別な措置を取ることとします。吉田寮への入寮面接を希望している方で、新型コロナウイルスに罹患した方及びその疑いのある方、感染を避けるために正規の面接期間に寮に来られない方に関しては、9月15日までにその旨メールしてください。メールを送って頂いた方には期間外の面接などの柔軟な対応をいたしします。

なお、自治会としてはマスクや消毒用アルコールを確保して飛沫拡散防止・手指消毒などの対策を講じており、今後も感染拡大防止に努めていきます。
寮での面接は、換気が十分に可能で、面接ごとに消毒を行える場所で行います。来寮される場合は、マスクの着用をお願いします。

そのほか、個別に懸念事項・質問事項などがある方は下記アドレスまでご連絡ください。感染症が流行しており先行きも不透明な状況ですので、個々の状況に応じて、メールや電話、オンライン通話で相談に乗り、柔軟に対応いたします。入寮を検討しておられる方にはできる限りのサポートをしたいと考えておりますので、ためらわずに相談をしてくださいますようお願いします。

2020年8月17日 吉田寮自治会

yoshidaryo.nyusen@gmail.com

(English) As already announced, Yoshida Dormitory will welcome new residents for autumn 2020 (more info: yoshidaryo.org/enter). We will also conduct an interview for applicants as usual.
However, considering the current situation that the novel coronavirus is spreading, applicants are given some additional support by the application. Applicants, who are infected or suspected to be infected with the novel coronavirus or who hesitate to come to Yoshida Dormitory for the interview because of the risk of infection, please inform that by sending an email to yoshidaryo.nyusen@gmail.com, then you can have an interview even before or after the official interview period.
As for preventive measures, Yoshida Dormitory is provided with enough medical masks and sanitizer so that residents and visitors can sanitize their hands and prevent infection. We will keep making efforts in providing preventive measures.
The interview will take place in a room which can be ventilated and sanitized enough after each interview. Please note that you have to wear a mask during the interview.
If you have any question or concern, please send an email to
yoshidaryo.nyusen@gmail.com. Since the situation regarding the novel coronavirus is still serious and also changing, you can feel free to consult us via email, phone call or online call. Please be aware that this talk is different from the compulsory interview. The interview will be held in principle only in person at the dormitory. We would like to be informed of applicant’s situation in order to meet the need of each applicant as much as possible, so please contact us anytime if you are planning to live in Yoshida Dormitory.

17th Aug, 2020. Yoshida Dormitory Residents Association

【吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟】追加提訴訴状送付に伴う声明

2020年8月6日
吉田寮自治会

 去る2020年3月31日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行が世界的に問題となっていくさなか、国立大学法人京都大学当局が、現在進行中の吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟について、新たに25名を追加提訴をしたと発表した。吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、2019年4月26日に、京都大学の学生である吉田寮生のうち20名を選び出し、京大当局が提訴した民事訴訟である。追加提訴されたのは、現寮生だけではなく、2019年3月以降に京都大学を卒業・退学した元寮生が含まれている。以下、この度の明渡請求訴訟及び追加提訴について、京大当局のおかしな所を指摘していく。

1.現寮生だけではなく、元寮生に対しても提訴をしていること

 今回被告とされ提訴された25名の内訳は、10名の現寮生と15名の元寮生である。元寮生の中には、当局に対して卒業後の進路及び吉田寮からの転居先を報告した者も含まれており、進学先の大学教務へ京大当局から連絡が為されたり、転居先住所に訴状が届けられたケースもある。

 今回の「吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟」とは、吉田寮現棟・食堂という「建物を明け渡す」ことを請求されている民事訴訟である。当然の事ながら、転居した元寮生達は既に建物から退去しており、提訴する必要性は一切無い。実際に吉田寮に居住しているか否かに関わりなく、大学当局が2020年1月に提出を強要した「退去報告書」(今後吉田寮現棟・寮食堂に立ち入らないことの誓約を含む)(※1)を、完全に大学当局の指示通りの書式で提出しなかった者が、提訴されたのである。

 そもそも吉田寮は京都大学の学生寮であり、居住する寮生は全て吉田寮の入寮資格を満たした「京都大学に在籍する学生及びその者と切実な同居の必要性がある者」である。卒業ないし退学により、京都大学の学籍を失った者は、直ちに吉田寮での在寮資格が無くなるため、寮での部屋割りが無くなり、卒業・退学と同時に退寮している。そのことは、吉田寮自治会が毎月京大当局に提出している寮生名簿を参照すると明らかであるはずだが、2018年4月以降、不可解な事情により京大当局が一貫して寮自治会の名簿の受取を拒否し続けている。「誰が吉田寮に住んでいる寮生か分からない」という京大当局の言い分は、寮自治会が用意し提出し続けている寮生名簿の受取拒否に全ては起因している。

 なお、吉田寮の入寮資格である「その者と切実な同居の必要性がある者」について説明する。京大当局(教育推進・学生支援部)が管理する国際交流会館(留学生寮)においても、配偶者や子どもの入寮が認められている。これをさらに現状に即して、異性間の婚姻のみを優遇するなどの差別的側面を取り除き、介助者等も想定し、1990年代から制度化・運用しているのが吉田寮の入寮資格の「その者と切実な同居の必要性がある者」なのである。

2.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下に不要不急の提訴を行っていること

 京大当局が、今回の25名追加提訴を行ったのは、2020年3月31日という、新型コロナウイルス感染症の流行が世界的に問題となっており、日本各地の大学でも新学期以降の授業、課外活動、研究会、大学運営などについてどのようにしていくかという対応を迫られている時期であった。本来、吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、京大当局が吉田寮の補修をサボタージュしたり、恣意的に話し合いを打ち切ったり、寮生名簿の受取拒否などをしなければ、一切起こす必要のない裁判であったことは、何度も説明を尽くして来ており(※2)、被告側吉田寮生は一貫して「裁判を取り下げ、現棟補修に向けた建設的な話し合いの再開」を当局に要求し続けている。こともあろうに、新型コロナウイルス感染症という未知のウイルスによる感染症が流行する時に、京都大学における対策や2020年度前期の対面授業の有無などよりも先だって不要不急の裁判の提訴を優先した京大当局の姿勢は、全くもって理解に苦しむ。大学の執行部として、「任期中(現執行部の任期は2020年9月末まで)に吉田寮生に対して加えられるだけの圧力を加えておく」という利害を優先し、大学としての然るべき運営を疎かにした行為であると捉えざるを得ず、厳しく批判されるべきことである。

 実際に、この京大執行部による訴訟強行姿勢は、吉田寮にて寮生が行っている新型コロナウイルス感染症対策に対して京大当局が協力することをも妨げている。

 2020年4月1日に吉田寮自治会は「吉田寮における新型コロナウイルス対策と京都大学への協力要請」を出して、新型コロナウイルスという未知のウイルスによる感染症の拡大防止のために「衛生物品の支給」「寮生名簿の受領再開」「感染症対策のための寮自治会との迅速な協議開始」を京大当局へ要請した。仲立ちをした厚生課窓口では「訴訟が進行中であり、また大学としては吉田寮自治会という主体を認めていないので、寮自治会の要求に大学として応えることはできない。大学が寮自治会の要求に応えるということを、裁判などにおいて悪用されることを理事会は懸念している」という旨の回答が為された。新型コロナウイルス感染症対策という生命の安全に関わる問題に至るまで、「吉田寮生を提訴している」という建前を優先し対応されなかったという例である。

3.「寮生の安全確保」が蔑ろにされ続けていること

 京大当局が新型コロナウイルス感染症対策よりも訴訟強行を優先したことにより、生命の安全確保の問題を軽視している姿勢が表れていることは前項に述べた。以下では、そもそも吉田寮からの寮生追い出しを当局が正当化していた理屈である「寮生の安全確保」について、それを蔑ろにし続けているのは当局であるということについて改めて指摘しておく。

●建物の補修をサボタージュし続けてきたのは大学当局である

 現在争点となっている吉田寮現棟の老朽化対策については、2012年に補修の方向性で継続協議することが合意され、以後2015年まで具体的な補修方法についての議論が行われてきた。また寮自治会は建物の部分的・段階的な改修工事により、現在の寮生数を減らさずとも安全性の向上が可能であることを示してきた。しかし、2015年に現任の川添学生担当理事が就任して以降、5年以上にわたって吉田寮自治会の補修案に対する回答は「検討中」のみであり、具体的なレスポンスや代替案の提示が行われない状況が続いている。2019年2月に川添理事が発表した「吉田寮の今後のあり方について」でも「安全確保に加え収容定員の増加や設備の充実等を図りうる措置を講じた上で学生寄宿舎として供用する」とされたのみで、具体的な現棟老朽化対策のビジョンは今なお示されていない。更に寮自治会は同年2月、現棟の継続的な清掃・点検や耐震補修が完了している食堂の使用継続が認められるならば現棟での居住を取りやめる用意があることを表明した。しかし大学当局はこれをも拒否し、何らの歩み寄りも示さないまま、寮生の提訴に踏み切ったのである。
 吉田寮自治会は、現棟の老朽化は法的に寮生の立ち退きをすら強制できる程とは考えていない。しかしながら、無論、耐震性の向上は可能な限り速やかに行うべきと考え、早急な老朽化対策とそれに向けた話し合いの再開を求めてきた。大学当局が真に寮生の安全確保を考えるならば、寮生の追い出しに費やされる費用や時間を用いて建物の改修を行うことが最も有効である。それを避けている現執行部は、寮自治のあり方について意見の異なる他者(寮生など)を除外するために、寮生の追い出しに固執して、寮生の安全確保を二の次にしていると考えざるを得ない。

●吉田寮の閉鎖・機能停止は学生のセーフティネットの剥奪である

 また、吉田寮は京都大学の福利厚生施設であり、様々な経済的事情を抱える学生ができる限り衣食住の心配無く学業・研究に集中できるように、安価な寄宿料・生活費が保障された学生寮である。このような役割を果たしている福利厚生施設に対して、入寮募集停止要請を一向に取り下げず門戸を閉ざすよう強要し、また裁判という圧力を使って住居から出て行くよう促す京大当局の姿勢は、「貧乏人は京都大学で学ぶな」と言うにほとんど等しい。

 しかも、現在は新型コロナウイルス感染症が流行しており、感染拡大防止のために外出を控えたり事業規模を縮小し、これまでと同じようには経済活動ができなくなった人がありふれている。所得が減り、住環境の確保や学業継続に影響が出ている学生は、京都大学においても大勢いる。本来、京大当局がすべきことは「安価な寄宿料・生活費が保障された学生寮」である吉田寮のセーフティネットとしての価値を再考することであるはずだ。ここにきて新型コロナウイルス感染症の脅威だけでなく、更に学生達に対して住居から出て行くように圧力をかけたり、入寮を阻害するような行為は、学生の生命と学業・研究活動を蔑ろにする行為であり、言語道断である。

●立ち退きを迫る圧力行為は寮生個々人の心身を脅かしている

 さらに特筆すべきは、京大当局が行っている吉田寮生に対する追い出しの圧力は、そのまま学生の心身の健康を脅かすハラスメント行為だということである。2017年12月以降京大当局は一方的に吉田寮生に対して「寮から出て行くこと」を強要し続けており、当局の意向に反して吉田寮に居住し続けることは「不法占有である」と規定し脅し続けている。このような通知は学生本人だけでなく、学生の保護者や指導教員に対しても為されており、周囲の人間をも使って寮生達が当局の意向を忖度するよう強い続けている。吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟とは、京大当局が一方的に呼ぶ「不法占有」という言葉に、更に司法によるお墨付きを得るために、自分の大学の学生や卒業生と対話をすることよりも提訴することを優先したという京大執行部の尊大さの結晶である。圧倒的に権威と権力を持つ京大当局によって、退去を強要され続けたり被告とされるというハラスメント行為もまた、寮生の安全性を毀損する行為である。

 以上、京大当局によるこの度の吉田寮生・元寮生への追加提訴が如何に理に反しており、寮生の生命の安全確保を蔑ろにしているかについて、述べた。現執行部ならびに次期執行部におかれては、早急に不要不急の提訴を取り下げ、寮生の安全確保に対して真剣に取り組むよう、再考していただくよう要請する。

※1 詳細は、2020年2月20日に発表した「京大当局による吉田寮生・元寮生への脅迫に対する抗議声明」を参照。

※2 一例として2019年5月5日に発表した「吉田寮現棟の明け渡し訴訟に対する声明文」を参照

公開質問状に対する総長選候補者の回答・反応についてのコメント

総長候補者への公開質問状についてはこちら

公開質問状に対する各候補者の回答状況についてはこちら

公開質問状に対する総長選候補者の回答・反応についてのコメント

2020年8月6日
吉田寮自治会

 吉田寮自治会は7月1日、京大総長選の候補者6名に対して学生や寮に関する政策についての考えを問うべく、公開質問状を出しました。今回、本質問状への総長候補者の回答や反応について、寮自治会としてのコメントを発表したく思います。

 既に7月21日の総長選考会議において、湊長博氏を次期総長とする決定が行われています。しかしながら、本質問状で取り上げた事項は何れも特に学生にとって重要な事柄であり、今後の京大運営において必ず議論されなければならない問題であると考えます。今後の対話の糸口、また議論を深める一助として、質問状への回答に対する寮自治会のコメントを述べさせていただきます。ご回答いただいた候補者の方はもちろん、現執行部・次期総長・他のあらゆる教職員の方に、参考にしていただきたく思います。

 なお後述しますように、今回次期総長に選出された湊長博氏は本質問状に対して受け取り自体を拒絶しています。大学構成員の皆さん(ことに総長選考会議の委員や教職員の皆さん)には、学生団体からの質問状に対しその内容を確認すらしない態度が次期総長として果たしてふさわしいものか、今一度考えて頂きたく思います。

1.各候補者からの反応に関して

 吉田寮自治会は、6名の候補者全員に、郵送などで公開質問状を送付させていただきました。そのうち現理事である北野正雄氏、湊長博氏からは「受取拒絶」として返送されてしまいましたことがまず何よりも残念でなりません。寮自治会が送付した公開質問状を開封・確認すらしなかったということであり、厳に抗議します。吉田寮生との話し合いを拒絶し、一切の歩み寄りを拒絶してきた現執行部の姿勢をそのまま踏襲している点で問題があるだけでなく、広く学生が関わる学内の問題について、取り組む意志がないものと解さざるを得ません。また、村中孝史氏からは、一切の返信・反応がありませんでした。

 大嶋正裕氏からは、「有権者である教職員の方々には、既に第一次総長選候補者としての所信を伝えているので、寮自治会からの公開質問状への回答は差し控える。(2020年7月10日付)」旨の返答がありました。吉田寮自治会宛に伝えていただいたことは、湊氏、北野氏、村中氏の3名よりもいささか誠実であるのかもしれませんが、「有権者でない」という点において本学の学生である吉田寮自治会からの質問にお答えいただけなかったことは、残念です。有権者でないからこそ、公開質問状という形で私たちが重視している内容を総長選に際してお伝えしたのであり、その内容に真摯に向き合っていただきたかったです。

 寶馨氏、時任宣博氏からは、期日内に、寮自治会からの質問全てに対してご回答をいただきました。お礼申し上げます。

2.回答内容について

2−1.吉田寮自治会に対する回答内容について

(1)学生への情報公開について および (2)学生との話し合いについて

 寶馨氏は「風通しのよい京都大学」を作るために「自己と他者の自由や多様性を尊重する」ことにつながる「対話」が不可欠であるという立場を示され、「学生との話し合いはもちろんのこと、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行っていく所存です」と述べられました。また2015年以降現在に至るまで停止されている学生など当事者への学生担当理事による「情報公開連絡会」について、「準備が整い次第、できるだけ早く情報公開連絡会を再開したい」とされています。

 現在の執行部による様々な学生の活動の縮小・解体は、学生など当事者との公開の場での話し合いの拒否とともに行われてきました。故に、寶氏が対話を尊重する姿勢を打ち出したのは極めて重要なことと考えます。さらに付け加えれば「対話」の内実が単なる一方的な「説明」と化さないように注意することも大切だと考えます。また情報公開連絡会は大学の意思決定プロセスから制度的に排されている学生など当事者が、自分たちにも関わりある大学内で進行中の政策に、決定以前にアクセスするための重要な回路です。寶氏が表明したように、できるだけ速やかな再開が必要です。

 時任氏は、大学の規模や構成員の多様性の点で全て対面型の情報共有を図ることは困難としつつ、現状として双方向での意見交換の機能が不足している事実を認めています。「本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。」と述べておられますように、本学に在籍する学生全体が平和に安心して学生生活を送るためには、情報を十分に与えられなかったり、不本意な行動を強要されたりといったことが起こらないように気を付けなくてはいけません。争いを未然に防ぐには、早期の情報共有と意思疎通が重要です。その役割を担うものとしての情報公開連絡会が早期に再開されることが望ましいと考えます。また、「学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもある」「対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ」と述べておられますが、確かに事項によってはこうした個別対応が必要になるものもあると思います。対話相手の状況を鑑み、「フレキシブルで多様な窓口を用意する」という方向性は、たとえば日本語以外の言語保障を当局側が責任を持って用意するべきという観点などから大枠では賛成します。一方で、大学で検討され決定される事項とは公共のものであり、「関係者」を狭く限定することなく、公の場での議論に揉まれることも重要と考えます。

(3)学生への経済支援について

 寶氏は「有為の学生が教育を受ける機会を奪われることのないように、可能な限り広く支援をする必要がある」と述べられ、現行の授業料免除制度が親の年収などで画一的に審査されている点についても個別状況に寄り添って支援の判断を行う仕組みづくりをしたいとしました。時任氏も現行制度が「良い意味で再整備されることを期待する」、「フレキシブルな学生支援を常に心がけるべき」と述べられており、また「日本人学生と外国人留学生の公平性や、困窮学生と一般学と生の公平性を念頭に」置く必要があるとされています。これは直近の文科省や京都大学による新型コロナウイルス感染症対策としての学生支援給付金の申請要件の問題が念頭にあると思われます。

 両氏が現行の画一的な奨学金・授業料免除などの制度設計を良しとせず様々な個別事情に即した経済支援を重視していることは重要だと思います。あらゆる人の学ぶ権利を補償する公的機関の一つである大学としては「有為の(能力がある)学生」という観点が先行して安易な成績要件と結びつくことなく、きめ細やかな福利厚生を充実する必要があると考えます。

(4)学生寮について

 寶氏は、吉田寮生への立ち退き訴訟提訴を、『京大における近年の「変化」を象徴する出来事』とし、「学内外の信頼を取り戻すためにも、まずは大学が学生を告訴しているという状態を一刻も早く解消し」「当事者との対話を再開する必要があります」との姿勢を明確にしました。また「これまで様々な形で吉田寮の課題に尽力されてきた学生・教職員の対話の蓄積をふまえて、できるだけ速やかな解決を図りたい」ともされています。現在の吉田寮をめぐる問題の根幹として、(1)・(2)でも述べた当事者との話し合いの拒否とともに、歴代の副学長や教員と寮自治会が丹念な話し合いを重ねる中で積み上げてきた確約(約束)や建物の老朽化対策の議論を、現執行部が白紙化し寧ろ老朽化を放置し解決を遅らせてきた問題があります。その点からも寶氏が表明した姿勢は、吉田寮の今後のあり方について建設的な解決を行うために必要な第一歩だと考えます。なお、言葉尻を捉えるようで恐縮ですが、この度の吉田寮生に対する立ち退き訴訟は民事訴訟であり、大学が学生を「提訴」しているというのが正確な文言です(「告訴」とは刑事訴訟の被告とされることを意味します)。

 時任氏は裁判の当事者ではないとして特に自身の意見は述べられていません。しかし、吉田寮をめぐる状況は、単に現在の吉田寮生と大学執行部の間だけの問題ではなく、広く大学の福利厚生や意思決定のあり方に関する問題です。その点からは、多くの学生・教職員に当事者意識をもってもらいたいのが正直なところです。もちろん、現在進行中の吉田寮生提訴は実際に被害当事者の存在する問題であるため、これまでにノータッチであったり、加害者である執行部側だけなど一方からの話しか聞いていない状態で、無責任に噂に基づいて判断したり、デマを広げることに加担しないよう慎重であるという姿勢は、一定誠実であると思います。

(5)CAP制について

 寶氏は、学生全員一律(の単位上限)とする必要はなく、学生個々人の事情や希望に即して学習や課外活動等に取り組むことが有意義だと述べられ、「よりよく学びたいという意欲を削ぐことのないような検討を全学的な対話を通じて行いたい」とされています。時任氏は、制限なしに登録・履修した場合に履修科目の授業進度についてゆけず進級要件を満たせなくなり、再履修・留年し学習意欲の低下を招くケースもある、と述べ、その上で学部の制度担当教員等との相談により上限変更や緩和の提案をすることは可能だとしました。

 CAP制の問題点に関しては、公開質問状の質問文にて述べた通りですが、更に付言しておくなら、カリキュラムの選択や履修の自己管理それ自体についても、学生自身が考えながら試行と改善を繰り返し調整していくという教育機会の一つであると考えています。「留年」という結果に対して、即座に強いペナルティが課され、学習環境を損なう制度設計にも問題があるのではないでしょうか。

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

 まず、吉田寮自治会からの質問状において本来「法務・コンプライアンス担当副学長」である役職名が「法務コンプライアンス担当理事」と誤記されていたことについて訂正し、お詫び申し上げます。

 ハラスメントの相談・調査主体は、加害者との権力的従属関係や利害関係を出来る限り排して構成される必要があります。この点、総長や他の理事・副学長といった大学内で最も強い権限をもつ人物によるハラスメントについて、法務・コンプライアンス担当副学長をトップにおく学内ハラスメント相談窓口は、その行為を矮小化・隠ぺいしてしまうという問題が想定されます。また時任氏は、「規程上は、担当理事が独立性を担保して問題解決に当たることになっていると思いますので、独立の対応窓口を常設する必要はない」と述べられていますが、ハラスメントとはその場の責任者・担当者こそが最も起こしやすく、またその者達のハラスメント行為を「ハラスメントである」として取り上げることが最も難しいものである、というハラスメント問題の性質をおさえていただきたいと思います。ハラスメントとは行為者の悪意によるものだけでなく、無知や無理解によって不作為的に、またよかれと思って裏目に出るという形によっても起こるものです。ハラスメントが生じる原因は、行為者の悪意だけではなく、二者間に権力関係が存在し対等なコミュニケーションができない関係性というものもあります。よって、学内で起こる全てのハラスメント問題を一つの窓口体制で扱うということが、そもそも構造的に無理があるのです。

 寶氏はこれについて重大な問題として認識するとのことであり、是非学内の様々な立場の人々との話し合いの上で、取り組んでいただきたく思います。

 また時任氏は京大執行部からは独立した監事監査が総長・執行部の業務活動の監査を行っていることを挙げられています。しかしながら、現行の監事は他大学の学長や理事経験者、産業界から選ばれる傾向があり、またそもそも監査の過程で学生や役員・評議員等以外の教職員からの聞き取りを行うことはしておらず、到底学内の相対的な弱者に寄り添った(少なくともこうした視点を反映した)法人業務監査を行っているとは言い難いです。例えば2019年6月に公開された直近の監事監査報告書(http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/foundation/audit_all/audit/documents/h30/h30kanjikansahoukoku.pdf)では、吉田寮をめぐる問題に関し「吉田寮生の安全確保とともに学生寄宿舎の適切な管理方針が示され…(中略)…問題解決に向けて大きな進展が見られた」と評価しています。寮自治会を「責任を取ることのできない入居者団体」、低廉な寮費を「時代錯誤的」と断じる等、現在の寮運営についてこれまで寮生・教職員など現場の当事者が積み重ねてきた議論については何ら参照せずに、一方的な決めつけを行って憚りません。そして大学当局が寮生に対して一方的な退去期限を設定し、保護者や指導教員など私的な人間関係をも利用して立ち退きの圧力を加えていること、当事者である吉田寮生との話し合いを打ち切り、ついには寮生の民事提訴に向けて法的手続きを進めたこと等、寮生との非対称な力関係を利用した大学当局によるハラスメントについては、一言の批判的考察すら行っていません。

(7)留学生への言語保障について

 寶氏、時任氏とも京大の現状について、各部局での部分的な対応は行っているが、全学的には不十分であると考えているとの回答です。時任氏は通訳者の雇用について人件費負担が障害であると指摘していますが、留学生受け入れを政策として強く打ち出している京都大学ではなおのこと、言語面での情報保障については優先課題の一つとしてもいいはずだと思います。また直接学生対応を行っている窓口(厚生課、部局教務など)に優先して配置するという選択肢も考えられるのではないでしょうか。

 また寶氏が述べている「京都大学にいる間に日本語通、日本通になってもらいたい」というのは、ともすれば留学生に対してのみ不均衡に言語習得、文化理解、コミュニケーション上のコストを押し付けてしまうことに繋がってしまうのではないかと懸念しています。京都大学は留学生や教員などの外国人労働者も含めて構成員としているのですから、留学生だけでなく構成員全体で、情報共有やコミュニケーションにおける言語の壁を乗り越えるための努力を行うことが望ましいと考えます。そのために必要な制度設計も含めて執行部には取り組んでいただきたく思います。

(8)今後の抱負について

 寶氏は「世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出して、地球社会の調和ある共存と持続的平和の確立に貢献していく」とし、「現場主義」や「対話と合意形成の重視」などを掲げています。時任氏は、「国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきた」として、教職員や学生が活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えたい、としています。

 様々な立場の多くの人々が活動する京都大学において、こうした理念を実現していくには、トップダウンの決定を行うのではなく、各現場の当事者の意志が尊重され、公的な議論の場が開かれ合意形成が図られることが不可欠であると思います。

2−2.他団体への回答内容について

 「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」の公開質問状「質問2:吉田寮裁判」への回答(https://president-election.hatenablog.com/entry/2020/07/11/131441)に対して、事実誤認が含まれていましたので、指摘させていただきます。

 大嶋正裕氏からの回答では、「学生以外の者が現棟に居住し続けており、寮生が誰なのかを確認できず、新棟や民間アパートへの移転による合意がどこまで取れているのかが不明であったため、司法の手続きをとったと聞いています」と述べられています。これはいったい誰からの伝聞なのでしょうか。「学生以外の者が現棟に居住し続けており、寮生が誰なのか確認できない」という伝聞情報について事実をお伝えしますと、吉田寮(現棟・新棟共に)に居住する者は全て吉田寮自治会による入寮選考を経て決定しています。吉田寮の入寮資格は「京都大学に学籍のある全ての者及びその者と切実な同居の必要性のある者」として公表してあります。確かに、この入寮資格の記載における「その者(京都大学に学籍のある者)と切実な同居の必要性のある者」が必ずしも京都大学に学籍があるとは限りませんが、これは学生の介助者や“家族”(※)など「切実な同居の必要性」を要件としており、元は京都大学の留学生寮における募集要項をもとに1990年代より吉田寮においても導入したものです。寮とは住居ですから、生活の実際的な切実性によって柔軟な運用が為されることが望ましいと考えています。こうした事実にも関わらず、あたかも寮の居住実態が不正常であるかのようなミスリードのために不正確な情報が流布されている状況は、いささか「不正常」であるのではないかと思います。

(※)「家族」と言うときに、異性間の婚姻関係をもとにしたものが想定されることが多いが、こうした特定の関係性のみを優遇する差別的側面を取り除いて、「切実な同居の必要性がある者」としている。

 また、「新棟や民間アパートへの移転による合意がどこまで取れているのかが不明」とありますが、新棟や民間アパートへの移転について、大学当局から寮自治会に対して提案が為された上で合意形成が為された事実は一度もありません。2017年12月大学当局による突然の「退去通告」発表に併せて、吉田寮に居住する寮生に対して、その保護者や指導教員などを通じて「大学の決定に反して寮に住み続けることは不法行為となる」といった圧力が掛けられました。その状況下で、やむを得ず大学が斡旋する民間アパートへの移転を選択した寮生がいたことは事実ですが、これは大学当局による「脅して言うことを聞かせる」ハラスメント行為によるのが実際の所です。

 続いて、大嶋氏の回答には「私としては、学生が、自分の命を盾に、吉田寮に立てこもるような状況は、できるだけ速やかに解消すべきと考えます」といった記述が見られます。この表現の仕方についても、いささかミスリードであるように感じられるため言及させていただきます。吉田寮現棟の補修は、寮自治会が少なくとも2012年以降大学当局へ要求し続けてきており、2014年には当時の赤松明彦副学長と「京都市条例を適用した補修案」を寮自治会と大学当局で協力して行っていく方向で合意が為されておりました。こういった合意形成過程を無かった物であるかのように、補修への協力を怠り続け、そのための話し合いを拒み続けて来たのが現大学執行部です。旧制高校時代の建築物である吉田寮現棟の建築的価値に、生活しながら間近で接して来た吉田寮生としては、その歴史的価値が安易に手放されてしまう事態を懸念しています。また、何よりこの建物・空間において、自治寮として運営してきた吉田寮の意義を、後輩に残していきたいと考えています。そのために、大学当局との話し合いについて、寮自治会は一切拒絶することなく対話の門戸を開き続けていることを付言しておきます。

総長選候補者に対する公開質問状への回答状況 ー質問別回答一覧ー

一部候補者から公開質問状への回答・反応があったため、回答があったものから順次公開しています。(公開質問状の回答期限は7月13日です)

〈大学運営における学生の関わり方について〉

(1)学生への情報公開について

(前提) 従来京都大学では毎月、副学長が公開の場で大学内の会議の議論について報告する「情報公開連絡会」が開かれてきました。これは、1997年に京大に副学長制が導入されたことを発端に、大学の中央集権化や学生に関する意思決定の不透明化への懸念に対し、実施されてきた制度です。当時の井村裕夫総長は、学生との話し合いを通じて情報公開の必要性を認め、1998年に宮崎昭学生部長(当時)が「情報公開の場として、学生部長が参加する連絡会を公開の場で開く(確認事項) 」ことを約束しました。以後も同様に、1998年の三好郁郎副学長(当時)と吉田寮自治会との確約書から、2015年の杉万副学長(当時)と吉田寮自治会の確約書などに至るまで、副学長が参加する連絡会を開き、情報の公開に努めることが約束されてきました。
 こうした確約にも基づいて、2016年2月まで毎月、情報公開連絡会は開かれ続けてきました。これによって学生は、大学内で行われている議論や決定プロセスなどにアクセスすることができ、学内の運営プロセスに一定の透明性が担保されていました。

 しかし、現任の学生担当理事が就任後に突然、連絡会を廃止とする意向を示し、学生の反対にもかかわらず、2016年3月より「諸般の事情につき中止」という不正常な状態が4年以上続いています。

(質問1) 大学の決定プロセスの透明化について、またそれらを保障していくために、どのような方策が必要であるとお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に下記の文書が郵送で届きました。

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京都大学吉田寮自治会 様

 昨日、7月9日(木)に、貴自治会より公開質問状を受け取りました。 
 しかしながら、現在、総長選考期間中であり、有権者である教職員の方々には、既に第一次総長候補者としての所信をお伝えしておりますので、今回の貴自治会からの公開質問に関しては、回答を差し控えさせていただきます。

令和2年7月10日

京都大学工学研究科 教授 大嶋正裕

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)。

寶馨氏(総合生存学館)

 私は、所信にも述べたように、「自由の学風」を学内の隅々まで行き届かせて、風通しのよい京都大学を実現したいと考えています。そのためには「対話」が不可欠です。対話のない場所で優れた教育・研究・医療は生まれません。対話を通して様々な立場の方々と理解し合うことは、自己と他者の自由や多様性を尊重し、「自由の学風」をより強くすることにつながるでしょう。皆さんとともに京都大学の未来を創造していきたいと思います。準備が整い次第、できるだけ早く情報公開連絡会を再開したいと考えます。

時任宣博氏(化学研究所)

この質問は、大学当局と学生間の問題としてのものと受け止めて回答致します。

「大学の決定プロセスの透明化」という視点は大事だと思いますが、京都大学の規模と構成員の多様性を考慮すると、全て対面型で情報共有を図ることは困難ですので、文書や電子媒体での情報公開という形になるものが多く、双方向での意見交換という面では機能が不足していることは事実です。

大学執行部が学生との対話の機会を狭めているとのご指摘ですが、現在の状況を生み出した背景も含めてその要因をしっかりと検討した上で、本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもあるかと思いますので、対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ機能しないように思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(2)学生との話し合いについて

(前提) 従来京都大学では、学生寮の運営や学生生活に関して、学生など当事者向けの説明会、対話などが行われてきました。ところが現執行部体制になってより、学生など当事者への説明や話し合いなどなく、トップダウンで決定されることが増えました。結果、実状に沿わない方針が策定され、問題の根本的解決が遠退いたり、学内構成員の自主性・主体性が大きく損なわれてきました。立て看板規制やNFの日程短縮など、関わりのある当事者への説明会、話し合いによる合意形成などがなく進められたがために、学生からの反発の声も起こりましたが、一切黙殺されてきたことは記憶に新しいと思います。

吉田寮自治会は長年、関係者・当事者間の話し合いを通じて意思決定を行ってきました。その経験から、大学においても各当事者・団体間で話し合いを行うことで、より実情に即した運営ができ、何らかのトラブルが起こった場合にもより直接的に解決することが可能になると考えています。

(質問2) これからの学生との話し合いについて、どうお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

 質問1への回答と同様に、「対話」の重要性を強く認識しています。学生との話し合いはもちろんのこと、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行っていく所存です。

時任宣博氏(化学研究所)

 この質問の前提に書かれている問題点への対応は、質問1への回答である程度述べましたので、ここでは吉田寮関係の話し合いの現状について回答致します。 
 質問4でも学生寮について質問が挙がっていますが、本来は問題点を解決する手段として当事者間での話し合いの場を持つということは重要と思います。但し、双方が解決に向けて努力する状況にならないと、相互不信を招くだけの場になってしまいます。従来の慣行や経緯があることは理解していますが、大学そのものの位置づけや運営体制も時代に合わせて変化せざるを得ない状況にありますので、当事者がそれぞれの現状を理解し、意見交換できる仕組みを作る必要があるように感じます。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

〈学生の福利厚生について〉

(3)学生への経済支援について

(前提) 京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。中には学費や生活費を自ら負担している学生もいます。また実家の経済状況が一定以上の水準にあっても、実家との関係性から仕送りを受けられず困窮している学生もおり、この場合現行の奨学金・授業料免除制度では支援対象外となってしまっています。

(質問3) こうした学生らが万全の状態で学術研究活動に打ち込めるために、京都大学として為すことができる学生支援について、どうお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

 現時点の本学の財政状況では、支援対象となる学生に一定の厚生的条件が課されていることはやむを得ませんが、その条件が、有為の学生が教育を受ける機会を奪われることのないように、可能な限り広く支援をする必要があると考えます。ご指摘の事例についても、できるだけ丁寧に個別の状況に寄り添って支援の判断ができるような仕組みづくりを検討することによって解決をはかりたいと思います。

時任宣博氏(化学研究所)

 学生の修学支援に関しては、今まさに国(政府)の施策も変革されようとしている時期ですが、現行の奨学金や授業料免除制度が良い意味で再整備されることを期待します。また、今回の新型コロナウィルス感染拡大への対応で本学が実施した緊急的な事態に即した学生への支援策に見られるようなフレキシブルな学生支援は常に心がけるべきだと思います。経済的に困窮している学生の支援は大変重要な視点ですが、支援対象学生の支援申請要件の設定に当たっては、日本人学生と外国人留学生の公平性や困窮学生と一般の学生との公平性も念頭に置いて制度設計に当たる必要があると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(4)学生寮について

(前提) 現京都大学執行部は、本学の学生である吉田寮生の一部を被告とし、訴訟を起こしています。吉田寮自治会としては、一刻も早く訴訟を取り下げ、吉田寮に関わる諸問題を、話し合いによって解決したいと考えています。

(質問4) 吉田寮生に対する訴訟について、吉田寮生との話し合いの再開について、どうお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

同じご質問を「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」からいただいています。それに対する回答を以下に示します。
「吉田寮裁判は、不幸なことに、京都大学における近年の「変化」を象徴する出来事となってしまいました。本裁判によって、告訴の対象とされた方々はもちろん、多くの学生とその家族・関係者、教職員が不安な気持ちを抱かれたことと思います。学内外の信頼を取り戻すためにも、まずは大学が学生を告訴しているという状態を一刻も早く解消し、あらためて当事者との対話を再開する必要があります。そして、これまで様々な形で吉田寮の課題に尽力されてきた学生・教職員の対話の蓄積をふまえて、できるだけ速やかな解決を図りたいと考えています。」

時任宣博氏(化学研究所)

吉田寮生に対する訴訟の問題については、京大の現執行部が訴訟を起こし裁判に至っているという現状を踏まえますと、裁判の当事者ではないものとして軽々に意見を述べることは控えたいと思います。裁判の場を通じて、双方の考え方の違いが明確化される部分もあるかと思いますので、その進捗状況を受けて状況が変化する可能性はあると思いますが。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

〈学生生活について〉

(5)CAP制について

(前提) 京都大学では、1年間または1学期間に履修できる単位数あるいはコマ数を制限するCAP制を、2004年に法学部学部生に対して導入し、現在に至るまで順次導入範囲を拡げて来ています。CAP制の根拠は、文部科学省省令「大学設置基準」第二十一条の「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、」といった文言にあると推察されますが、この時間数を算定した根拠については示されていません。学生にはそれぞれに興味関心の領域、得意・不得意分野、学習・研究のスタイルといった個性があり、画一的な時間数においてその教育効果を測ることは不可能です。大学現場における教育・研究の実態に疎い文科省が算定根拠を示すことは不可能であるのかもしれませんが、一方、学生の教育・研究を現に行って来た大学現場では、このような根拠の無い数字に振り回されることなく、学生の多様な現実を踏まえ判断をすることが可能であるはずです。根拠の無い学修時間数に固執することは学問に対する冒涜であり、学生や教員に対する制限を加えることで、本学における教育・研究活動が大幅に阻害されてゆきます。

(質問5) 京都大学における今後のCAP制の運用について、どのようにお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

CAP制度の現状について、多くの学生諸氏から問題点の指摘があることは承知しています。現在の上限を30単位とする制度が定められた根拠について精査し、学生のみなさんの、よりよく学びたいという意欲を削ぐことのないような検討を全学的な対話を通じて行いたいと考えます。
学生全員一律、とする必要はないと考えます。2回生で長期の海外渡航を考えている場合は、1回生でより多く単位を揃えておきたいでしょう。1回生の時に病気や怪我など健康面の理由で履修が十分できなかった人は、2回生の時に取り返したいでしょう。
一方、30単位を標準の上限とする、ということで良いと考えるのであれば、その標準にしたがってさらなる単位取得に奔走せず、趣味や課外活動に時間を使うことも有益だと思います。
多感な学生時代でもあり、読書や芸術やスポーツに取り組むのも有意義です。また、学生だからこそできるチャレンジも大いにやってみてください。

時任宣博氏(化学研究所)

現在導入されているCAP制をどのようにとらえるか、という点で、学生にしても教員にしても立場が異なってくると思います。CAP制の根拠がこの質問の前提に書かれている一単位の学習要件のみかという点では、少し違った意見もあるように聞いております。本学の学生に、多様なカリキュラムの中から進級、卒業に必要な単位の中から自主的・自発的に履修計画を立てさせることは、大学学部教育として理想的なシステムであると思いますが、履修コマ数制限なしに登録と実際の履修を進めた場合に、履修科目の授業進度についてゆけず却って進級要件等を満たせなくなる学生も多くいます。その結果、再履修や留年という状況に陥って学習意欲の低下を招くというケースもあります。CAP制の履修科目数上限等に問題がある場合は、当該学部の制度担当教員等と相談して上限の変更や緩和の提案をすることは可能だと思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

(前提) 現在の京都大学のハラスメント相談窓口は、法務コンプライアンス担当理事がトップに据えられており、理事、副学長、総長らのハラスメントについては、客観的・公平に判断することが難しい構造になっています。

(質問6) このような制度的欠陥を補うために、たとえば執行部や学内諸部局の利害とは独立したハラスメント対応窓口の設置の可能性などについて、どうお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

ご指摘の点については、十分に検討する意義のある問題点だという認識を持ちました。今後の検討課題とさせてください。
なお、総長の解任に関する規程はすでに定められています。
「国立大学法人京都大学総長解任規程」(平成27年1月29日総長選考会議決定)

時任宣博氏(化学研究所)

理事、副学長、総長らのハラスメントについて、現行の法務コンプライアンス担当理事が所掌するハラスメント相談窓口では、客観性、公平性の点で問題があるとの指摘ですが、規程上は、担当理事が独立性を担保して問題解決に当たることになっていると思いますので、独立の対応窓口を常設する必要はないと考えます。また、総長の業務執行状況については、総長選考会議が毎年1月に執行状況を確認し、総長の業務が適切に遂行されているかどうかを確認すること、さらに就任後3年を経過した際に監事監査に基づく総長からのヒアリングを行うことになっています。監事監査においても、京大全体の監査事項の中には総長並びに執行部の業務活動の監査が含まれていると思います。監事は、京大執行部からは独立した存在だと認識しておりますので、公平性は担保されていると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

(7)留学生への言語保障について

(前提) 現在、京都大学にはおよそ2,700人以上の留学生が在籍し、これは京都大学の学生全体のおよそ12%を占めます。留学生の中には日本語を第一言語としない者、日本語の使用が得意でない者も多く存在しますが、現在の京都大学による情報の発信や窓口での対応は、日本語の使用が得意である者を前提としており、日本語を第一言語とする者と日本語を第一言語としない者の間で明確に格差が生じています。

(質問7) 今後、こういった格差を是正するための具体的な方策について、例えば通訳を専門とする職員の雇用・拡充、通訳機会の保障などについて、どうお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

これからの京都大学は、留学生に限らず多様な背景をもつ構成員が「よく学び、よく働き、よく楽しむ」ことのできる環境を整えていかなければならないと考えます。コミュニケーションの障壁によって学生教職員のあいだに情報格差が生まれる事態を避ける努力は「対話」をすすめるうえでも、非常に重要な要素だと考えます。各部局でも事務文書の英語版の作成、メール送信時の英語の追記などかなり努力はなされてきています。少しずつ国際化の波は起こっているのですが、まだ不十分です。ご提案の方法も含めて、具体的な方策を検討したいと思います。
なお、日本語を第一外国語としない人でも、第二あるいは第三の外国語に日本語を位置付けていただき、京都大学にいる間に「日本語通」、「日本通」になってもらうことは、ご本人のためにも良いことだと思います。

時任宣博氏(化学研究所)

 前提で指摘された、京都大学による情報の発信や窓口での対応が外国人留学生等(教員でも同様の不利益を感じている方がおられると思います)に不利ではないかという点ですが、我が国の社会活動のほとんどが日本語という独自の言語で成り立ってきていることに起因して、どうしても外国人の方が不利に感じる機会が多いことは確かです。本学においても、大学の国際化、教育の国際化を目標の一つに掲げており、外国人留学生の受入システム、受入後の相談窓口、英語による教育カリキュラムの充実など、種々の施策を講じています。そして、各部局等の協力も得て、多くの相談窓口、担当委員会も設置されています。しかしながら、全学的な統一した運営体制が未整備であり、色々な国際教育・交流関係の部署間での情報共有が不十分であることは事実です。今後の職員採用にあたり、言語能力等でより高度な知識と能力をもつ職員の採用は積極的に進めるべきだと思いますが、通訳という専門職を配置するとなると全学的な規模ではかなりの人件費負担が生じる点が実現に向けての障害になると思います。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

〈京都大学の今後のあり方について〉

(8)今後の抱負について

(質問8) 京都大学の今後の理想像、目指すべき方向性について、どのようにお考えですか?

===総長候補者からの回答===

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に回答を差し控える旨の文書が郵送で届きました。(文面は質問(1)への回答を参照)

北野正雄氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

寶馨氏(総合生存学館)

このご質問につては、京都大学教職員組合から同様の問いをいただいていますので、それを以下に複写してお答えします。
「世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出して、地球社会の調和ある共存と持続的平和の確立に貢献していくことであると考えます。」
所信の詳細にも京都大学の今後の目指すべき方向性について述べていますので参照してください。
(詳細はこちら:http://www.gsais.kyoto-u.ac.jp/staff/takara/upcoming/)

時任宣博氏(化学研究所)

総長選挙の所信表明書にも書かせて頂いたものと同様の内容を下記に再掲致します。

京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。

湊長博氏(現理事)

回答拒否(郵送した公開質問状が「受取拒絶」として返送されました)

村中孝史氏(法学研究科)

回答なし(7月13日現在)

総長選候補者に対する公開質問状への回答状況 ー候補者別回答一覧ー

一部候補者から公開質問状への回答・反応があったため、回答があったものから順次公開しています。(公開質問状の回答期限は7月13日です)

大嶋正裕氏(工学研究科)

7月13日、吉田寮自治会宛に下記の文書が郵送で届きました。

====

京都大学吉田寮自治会 様

 昨日、7月9日(木)に、貴自治会より公開質問状を受け取りました。 
 しかしながら、現在、総長選考期間中であり、有権者である教職員の方々には、既に第一次総長候補者としての所信をお伝えしておりますので、今回の貴自治会からの公開質問に関しては、回答を差し控えさせていただきます。

令和2年7月10日

京都大学工学研究科 教授 大嶋正裕

北野正雄氏(現理事)

公開質問状が受領拒否されました(郵送した公開質問状が、「受取拒絶」として返送されました)。

寶馨氏(総合生存学館)

〈大学運営における学生の関わり方について〉

(1)学生への情報公開について

(前提) 従来京都大学では毎月、副学長が公開の場で大学内の会議の議論について報告する「情報公開連絡会」が開かれてきました。これは、1997年に京大に副学長制が導入されたことを発端に、大学の中央集権化や学生に関する意思決定の不透明化への懸念に対し、実施されてきた制度です。当時の井村裕夫総長は、学生との話し合いを通じて情報公開の必要性を認め、1998年に宮崎昭学生部長(当時)が「情報公開の場として、学生部長が参加する連絡会を公開の場で開く(確認事項) 」ことを約束しました。以後も同様に、1998年の三好郁郎副学長(当時)と吉田寮自治会との確約書から、2015年の杉万副学長(当時)と吉田寮自治会の確約書などに至るまで、副学長が参加する連絡会を開き、情報の公開に努めることが約束されてきました。
 こうした確約にも基づいて、2016年2月まで毎月、情報公開連絡会は開かれ続けてきました。これによって学生は、大学内で行われている議論や決定プロセスなどにアクセスすることができ、学内の運営プロセスに一定の透明性が担保されていました。
 しかし、現任の学生担当理事が就任後に突然、連絡会を廃止とする意向を示し、学生の反対にもかかわらず、2016年3月より「諸般の事情につき中止」という不正常な状態が4年以上続いています。

(質問1) 大学の決定プロセスの透明化について、またそれらを保障していくために、どのような方策が必要であるとお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 私は、所信にも述べたように、「自由の学風」を学内の隅々まで行き届かせて、風通しのよい京都大学を実現したいと考えています。そのためには「対話」が不可欠です。対話のない場所で優れた教育・研究・医療は生まれません。対話を通して様々な立場の方々と理解し合うことは、自己と他者の自由や多様性を尊重し、「自由の学風」をより強くすることにつながるでしょう。皆さんとともに京都大学の未来を創造していきたいと思います。準備が整い次第、できるだけ早く情報公開連絡会を再開したいと考えます。

(2)学生との話し合いについて

(前提) 従来京都大学では、学生寮の運営や学生生活に関して、学生など当事者向けの説明会、対話などが行われてきました。ところが現執行部体制になってより、学生など当事者への説明や話し合いなどなく、トップダウンで決定されることが増えました。結果、実状に沿わない方針が策定され、問題の根本的解決が遠退いたり、学内構成員の自主性・主体性が大きく損なわれてきました。立て看板規制やNFの日程短縮など、関わりのある当事者への説明会、話し合いによる合意形成などがなく進められたがために、学生からの反発の声も起こりましたが、一切黙殺されてきたことは記憶に新しいと思います。

 吉田寮自治会は長年、関係者・当事者間の話し合いを通じて意思決定を行ってきました。その経験から、大学においても各当事者・団体間で話し合いを行うことで、より実情に即した運営ができ、何らかのトラブルが起こった場合にもより直接的に解決することが可能になると考えています。

(質問2) これからの学生との話し合いについて、どうお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 質問1への回答と同様に、「対話」の重要性を強く認識しています。学生との話し合いはもちろんのこと、学内の教職員、学外の市民との対話や合意形成を積極的に行っていく所存です。

〈学生の福利厚生について〉

(3)学生への経済支援について

(前提) 京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。中には学費や生活費を自ら負担している学生もいます。また実家の経済状況が一定以上の水準にあっても、実家との関係性から仕送りを受けられず困窮している学生もおり、この場合現行の奨学金・授業料免除制度では支援対象外となってしまっています。

(質問3) こうした学生らが万全の状態で学術研究活動に打ち込めるために、京都大学として為すことができる学生支援について、どうお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 現時点の本学の財政状況では、支援対象となる学生に一定の厚生的条件が課されていることはやむを得ませんが、その条件が、有為の学生が教育を受ける機会を奪われることのないように、可能な限り広く支援をする必要があると考えます。ご指摘の事例についても、できるだけ丁寧に個別の状況に寄り添って支援の判断ができるような仕組みづくりを検討することによって解決をはかりたいと思います。

(4)学生寮について

(前提) 現京都大学執行部は、本学の学生である吉田寮生の一部を被告とし、訴訟を起こしています。吉田寮自治会としては、一刻も早く訴訟を取り下げ、吉田寮に関わる諸問題を、話し合いによって解決したいと考えています。

(質問4) 吉田寮生に対する訴訟について、吉田寮生との話し合いの再開について、どうお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 同じご質問を「自由の学風にふさわしい京大総長を求める会」からいただいています。それに対する回答を以下に示します。
「吉田寮裁判は、不幸なことに、京都大学における近年の「変化」を象徴する出来事となってしまいました。本裁判によって、告訴の対象とされた方々はもちろん、多くの学生とその家族・関係者、教職員が不安な気持ちを抱かれたことと思います。学内外の信頼を取り戻すためにも、まずは大学が学生を告訴しているという状態を一刻も早く解消し、あらためて当事者との対話を再開する必要があります。そして、これまで様々な形で吉田寮の課題に尽力されてきた学生・教職員の対話の蓄積をふまえて、できるだけ速やかな解決を図りたいと考えています。」

〈学生生活について〉

(5)CAP制について

(前提) 京都大学では、1年間または1学期間に履修できる単位数あるいはコマ数を制限するCAP制を、2004年に法学部学部生に対して導入し、現在に至るまで順次導入範囲を拡げて来ています。CAP制の根拠は、文部科学省省令「大学設置基準」第二十一条の「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、」といった文言にあると推察されますが、この時間数を算定した根拠については示されていません。学生にはそれぞれに興味関心の領域、得意・不得意分野、学習・研究のスタイルといった個性があり、画一的な時間数においてその教育効果を測ることは不可能です。大学現場における教育・研究の実態に疎い文科省が算定根拠を示すことは不可能であるのかもしれませんが、一方、学生の教育・研究を現に行って来た大学現場では、このような根拠の無い数字に振り回されることなく、学生の多様な現実を踏まえ判断をすることが可能であるはずです。根拠の無い学修時間数に固執することは学問に対する冒涜であり、学生や教員に対する制限を加えることで、本学における教育・研究活動が大幅に阻害されてゆきます。

(質問5) 京都大学における今後のCAP制の運用について、どのようにお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 CAP制度の現状について、多くの学生諸氏から問題点の指摘があることは承知しています。現在の上限を30単位とする制度が定められた根拠について精査し、学生のみなさんの、よりよく学びたいという意欲を削ぐことのないような検討を全学的な対話を通じて行いたいと考えます。
学生全員一律、とする必要はないと考えます。2回生で長期の海外渡航を考えている場合は、1回生でより多く単位を揃えておきたいでしょう。1回生の時に病気や怪我など健康面の理由で履修が十分できなかった人は、2回生の時に取り返したいでしょう。
 一方、30単位を標準の上限とする、ということで良いと考えるのであれば、その標準にしたがってさらなる単位取得に奔走せず、趣味や課外活動に時間を使うことも有益だと思います。
 多感な学生時代でもあり、読書や芸術やスポーツに取り組むのも有意義です。また、学生だからこそできるチャレンジも大いにやってみてください。

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

(前提) 現在の京都大学のハラスメント相談窓口は、法務コンプライアンス担当理事がトップに据えられており、理事、副学長、総長らのハラスメントについては、客観的・公平に判断することが難しい構造になっています。

(質問6) このような制度的欠陥を補うために、たとえば執行部や学内諸部局の利害とは独立したハラスメント対応窓口の設置の可能性などについて、どうお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 ご指摘の点については、十分に検討する意義のある問題点だという認識を持ちました。今後の検討課題とさせてください。
なお、総長の解任に関する規程はすでに定められています。
「国立大学法人京都大学総長解任規程」(平成27年1月29日総長選考会議決定)

(7)留学生への言語保障について

(前提) 現在、京都大学にはおよそ2,700人以上の留学生が在籍し、これは京都大学の学生全体のおよそ12%を占めます。留学生の中には日本語を第一言語としない者、日本語の使用が得意でない者も多く存在しますが、現在の京都大学による情報の発信や窓口での対応は、日本語の使用が得意である者を前提としており、日本語を第一言語とする者と日本語を第一言語としない者の間で明確に格差が生じています。

(質問7) 今後、こういった格差を是正するための具体的な方策について、例えば通訳を専門とする職員の雇用・拡充、通訳機会の保障などについて、どうお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 これからの京都大学は、留学生に限らず多様な背景をもつ構成員が「よく学び、よく働き、よく楽しむ」ことのできる環境を整えていかなければならないと考えます。コミュニケーションの障壁によって学生教職員のあいだに情報格差が生まれる事態を避ける努力は「対話」をすすめるうえでも、非常に重要な要素だと考えます。各部局でも事務文書の英語版の作成、メール送信時の英語の追記などかなり努力はなされてきています。少しずつ国際化の波は起こっているのですが、まだ不十分です。ご提案の方法も含めて、具体的な方策を検討したいと思います。
 なお、日本語を第一外国語としない人でも、第二あるいは第三の外国語に日本語を位置付けていただき、京都大学にいる間に「日本語通」、「日本通」になってもらうことは、ご本人のためにも良いことだと思います。

〈京都大学の今後のあり方について〉

(8)今後の抱負について

(質問8) 京都大学の今後の理想像、目指すべき方向性について、どのようにお考えですか?

【寶馨氏の回答】
 このご質問につては、京都大学教職員組合から同様の問いをいただいていますので、それを以下に複写してお答えします。
「世界規模で進む分断や対立を直視し、自由と自治の精神の下に、豊かな学知を生み出し、優れた人財を育て世に送り出して、地球社会の調和ある共存と持続的平和の確立に貢献していくことであると考えます。」
所信の詳細にも京都大学の今後の目指すべき方向性について述べていますので参照してください。
(詳細はこちら:http://www.gsais.kyoto-u.ac.jp/staff/takara/upcoming/)

時任宣博氏(化学研究所)

〈大学運営における学生の関わり方について〉

(1)学生への情報公開について

(前提) 従来京都大学では毎月、副学長が公開の場で大学内の会議の議論について報告する「情報公開連絡会」が開かれてきました。これは、1997年に京大に副学長制が導入されたことを発端に、大学の中央集権化や学生に関する意思決定の不透明化への懸念に対し、実施されてきた制度です。当時の井村裕夫総長は、学生との話し合いを通じて情報公開の必要性を認め、1998年に宮崎昭学生部長(当時)が「情報公開の場として、学生部長が参加する連絡会を公開の場で開く(確認事項) 」ことを約束しました。以後も同様に、1998年の三好郁郎副学長(当時)と吉田寮自治会との確約書から、2015年の杉万副学長(当時)と吉田寮自治会の確約書などに至るまで、副学長が参加する連絡会を開き、情報の公開に努めることが約束されてきました。
 こうした確約にも基づいて、2016年2月まで毎月、情報公開連絡会は開かれ続けてきました。これによって学生は、大学内で行われている議論や決定プロセスなどにアクセスすることができ、学内の運営プロセスに一定の透明性が担保されていました。

しかし、現任の学生担当理事が就任後に突然、連絡会を廃止とする意向を示し、学生の反対にもかかわらず、2016年3月より「諸般の事情につき中止」という不正常な状態が4年以上続いています。

(質問1) 大学の決定プロセスの透明化について、またそれらを保障していくために、どのような方策が必要であるとお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 この質問は、大学当局と学生間の問題としてのものと受け止めて回答致します。
「大学の決定プロセスの透明化」という視点は大事だと思いますが、京都大学の規模と構成員の多様性を考慮すると、全て対面型で情報共有を図ることは困難ですので、文書や電子媒体での情報公開という形になるものが多く、双方向での意見交換という面では機能が不足していることは事実です。
 大学執行部が学生との対話の機会を狭めているとのご指摘ですが、現在の状況を生み出した背景も含めてその要因をしっかりと検討した上で、本学所属の学生全体に平和な雰囲気での情報公開連絡ができる環境や仕組みを再構築できれば良いと思います。学生に関する事項にも色々な内容、規模のものがある上に、対象を限定するものなどもあるかと思いますので、対話のシステムを構築するにしても、フレキシブルで多様な窓口を用意しなければ機能しないように思います。

(2)学生との話し合いについて

(前提) 従来京都大学では、学生寮の運営や学生生活に関して、学生など当事者向けの説明会、対話などが行われてきました。ところが現執行部体制になってより、学生など当事者への説明や話し合いなどなく、トップダウンで決定されることが増えました。結果、実状に沿わない方針が策定され、問題の根本的解決が遠退いたり、学内構成員の自主性・主体性が大きく損なわれてきました。立て看板規制やNFの日程短縮など、関わりのある当事者への説明会、話し合いによる合意形成などがなく進められたがために、学生からの反発の声も起こりましたが、一切黙殺されてきたことは記憶に新しいと思います。

吉田寮自治会は長年、関係者・当事者間の話し合いを通じて意思決定を行ってきました。その経験から、大学においても各当事者・団体間で話し合いを行うことで、より実情に即した運営ができ、何らかのトラブルが起こった場合にもより直接的に解決することが可能になると考えています。

(質問2) これからの学生との話し合いについて、どうお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 この質問の前提に書かれている問題点への対応は、質問1への回答である程度述べましたので、ここでは吉田寮関係の話し合いの現状について回答致します。
 質問4でも学生寮について質問が挙がっていますが、本来は問題点を解決する手段として当事者間での話し合いの場を持つということは重要と思います。但し、双方が解決に向けて努力する状況にならないと、相互不信を招くだけの場になってしまいます。従来の慣行や経緯があることは理解していますが、大学そのものの位置づけや運営体制も時代に合わせて変化せざるを得ない状況にありますので、当事者がそれぞれの現状を理解し、意見交換できる仕組みを作る必要があるように感じます。

〈学生の福利厚生について〉

(3)学生への経済支援について

(前提) 京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。中には学費や生活費を自ら負担している学生もいます。また実家の経済状況が一定以上の水準にあっても、実家との関係性から仕送りを受けられず困窮している学生もおり、この場合現行の奨学金・授業料免除制度では支援対象外となってしまっています。

(質問3) こうした学生らが万全の状態で学術研究活動に打ち込めるために、京都大学として為すことができる学生支援について、どうお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 学生の修学支援に関しては、今まさに国(政府)の施策も変革されようとしている時期ですが、現行の奨学金や授業料免除制度が良い意味で再整備されることを期待します。また、今回の新型コロナウィルス感染拡大への対応で本学が実施した緊急的な事態に即した学生への支援策に見られるようなフレキシブルな学生支援は常に心がけるべきだと思います。経済的に困窮している学生の支援は大変重要な視点ですが、支援対象学生の支援申請要件の設定に当たっては、日本人学生と外国人留学生の公平性や困窮学生と一般の学生との公平性も念頭に置いて制度設計に当たる必要があると思います。

(4)学生寮について

(前提) 現京都大学執行部は、本学の学生である吉田寮生の一部を被告とし、訴訟を起こしています。吉田寮自治会としては、一刻も早く訴訟を取り下げ、吉田寮に関わる諸問題を、話し合いによって解決したいと考えています。

(質問4) 吉田寮生に対する訴訟について、吉田寮生との話し合いの再開について、どうお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 吉田寮生に対する訴訟の問題については、京大の現執行部が訴訟を起こし裁判に至っているという現状を踏まえますと、裁判の当事者ではないものとして軽々に意見を述べることは控えたいと思います。裁判の場を通じて、双方の考え方の違いが明確化される部分もあるかと思いますので、その進捗状況を受けて状況が変化する可能性はあると思いますが。

〈学生生活について〉

(5)CAP制について

(前提) 京都大学では、1年間または1学期間に履修できる単位数あるいはコマ数を制限するCAP制を、2004年に法学部学部生に対して導入し、現在に至るまで順次導入範囲を拡げて来ています。CAP制の根拠は、文部科学省省令「大学設置基準」第二十一条の「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、」といった文言にあると推察されますが、この時間数を算定した根拠については示されていません。学生にはそれぞれに興味関心の領域、得意・不得意分野、学習・研究のスタイルといった個性があり、画一的な時間数においてその教育効果を測ることは不可能です。大学現場における教育・研究の実態に疎い文科省が算定根拠を示すことは不可能であるのかもしれませんが、一方、学生の教育・研究を現に行って来た大学現場では、このような根拠の無い数字に振り回されることなく、学生の多様な現実を踏まえ判断をすることが可能であるはずです。根拠の無い学修時間数に固執することは学問に対する冒涜であり、学生や教員に対する制限を加えることで、本学における教育・研究活動が大幅に阻害されてゆきます。

(質問5) 京都大学における今後のCAP制の運用について、どのようにお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 現在導入されているCAP制をどのようにとらえるか、という点で、学生にしても教員にしても立場が異なってくると思います。CAP制の根拠がこの質問の前提に書かれている一単位の学習要件のみかという点では、少し違った意見もあるように聞いております。本学の学生に、多様なカリキュラムの中から進級、卒業に必要な単位の中から自主的・自発的に履修計画を立てさせることは、大学学部教育として理想的なシステムであると思いますが、履修コマ数制限なしに登録と実際の履修を進めた場合に、履修科目の授業進度についてゆけず却って進級要件等を満たせなくなる学生も多くいます。その結果、再履修や留年という状況に陥って学習意欲の低下を招くというケースもあります。CAP制の履修科目数上限等に問題がある場合は、当該学部の制度担当教員等と相談して上限の変更や緩和の提案をすることは可能だと思います。

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

(前提) 現在の京都大学のハラスメント相談窓口は、法務コンプライアンス担当理事がトップに据えられており、理事、副学長、総長らのハラスメントについては、客観的・公平に判断することが難しい構造になっています。

(質問6) このような制度的欠陥を補うために、たとえば執行部や学内諸部局の利害とは独立したハラスメント対応窓口の設置の可能性などについて、どうお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 理事、副学長、総長らのハラスメントについて、現行の法務コンプライアンス担当理事が所掌するハラスメント相談窓口では、客観性、公平性の点で問題があるとの指摘ですが、規程上は、担当理事が独立性を担保して問題解決に当たることになっていると思いますので、独立の対応窓口を常設する必要はないと考えます。また、総長の業務執行状況については、総長選考会議が毎年1月に執行状況を確認し、総長の業務が適切に遂行されているかどうかを確認すること、さらに就任後3年を経過した際に監事監査に基づく総長からのヒアリングを行うことになっています。監事監査においても、京大全体の監査事項の中には総長並びに執行部の業務活動の監査が含まれていると思います。監事は、京大執行部からは独立した存在だと認識しておりますので、公平性は担保されていると思います。

(7)留学生への言語保障について

(前提) 現在、京都大学にはおよそ2,700人以上の留学生が在籍し、これは京都大学の学生全体のおよそ12%を占めます。留学生の中には日本語を第一言語としない者、日本語の使用が得意でない者も多く存在しますが、現在の京都大学による情報の発信や窓口での対応は、日本語の使用が得意である者を前提としており、日本語を第一言語とする者と日本語を第一言語としない者の間で明確に格差が生じています。

(質問7) 今後、こういった格差を是正するための具体的な方策について、例えば通訳を専門とする職員の雇用・拡充、通訳機会の保障などについて、どうお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 前提で指摘された、京都大学による情報の発信や窓口での対応が外国人留学生等(教員でも同様の不利益を感じている方がおられると思います)に不利ではないかという点ですが、我が国の社会活動のほとんどが日本語という独自の言語で成り立ってきていることに起因して、どうしても外国人の方が不利に感じる機会が多いことは確かです。本学においても、大学の国際化、教育の国際化を目標の一つに掲げており、外国人留学生の受入システム、受入後の相談窓口、英語による教育カリキュラムの充実など、種々の施策を講じています。そして、各部局等の協力も得て、多くの相談窓口、担当委員会も設置されています。しかしながら、全学的な統一した運営体制が未整備であり、色々な国際教育・交流関係の部署間での情報共有が不十分であることは事実です。今後の職員採用にあたり、言語能力等でより高度な知識と能力をもつ職員の採用は積極的に進めるべきだと思いますが、通訳という専門職を配置するとなると全学的な規模ではかなりの人件費負担が生じる点が実現に向けての障害になると思います。

〈京都大学の今後のあり方について〉

(8)今後の抱負について

(質問8) 京都大学の今後の理想像、目指すべき方向性について、どのようにお考えですか?

【時任宣博氏の回答】
 総長選挙の所信表明書にも書かせて頂いたものと同様の内容を下記に再掲致します。

 京都大学は、国内外に誇る総合研究大学として発展しており、その先進性、独創性は、世界的に卓越した知の創造と行動力豊かな有為な人材の輩出につながっています。そして、自由の学風に基づく京都大学独特の雰囲気が、学生、教職員を問わず構成員各自の日々の活動の源になっていると思います。しかし、国立大学法人化後に直面した大学改革、機能強化等の各種政府施策への対応は、ともすれば大学を構成する各部局、教職員、学生の活動を委縮させる状況を生み出し、本学が理想とする大学運営に少なからず負の影響を与えてきたと言わざるを得ません。私は、教職員、学生の皆さんが、本学の一員であることに誇りと自信をもって、その独創性に富んだ活力を最大限発揮できる研究教育環境を整えるべきだと考えています。その結果、多様な学術分野を包含する京都大学が、各部局の特色に配慮しつつ多分野共同体としての教育研究活動を国内外にアピールすることで、世界に冠たる総合大学としてさらに大きく飛躍することができると考えています。

湊長博氏(現理事)

公開質問状が受領拒否されました(郵送した公開質問状が、「受取拒絶」として返送されました)。

村中孝史氏(法学研究科)

(7月13日現在)回答なし

公開質問状(吉田寮自治会より京大総長選候補者へ)

【質問状への回答状況について】
2020.7.13 一部候補者から公開質問状への回答・反応があったため、回答があったものから順次公開しています。(公開質問状の回答期限は7月13日です)
候補者別回答一覧はこちら
質問別回答一覧はこちら

【誤植の訂正】
2020.7.13 公開質問状に以下2点の誤植があったため、訂正します。なお、本ページ及び問状への回答状況のページに掲載する文面は、公開時のままです。
・「(1)学生への情報公開について」「(前提)」一段落目  
   ☓「確認事項」→◯「確認事項8」
・「(6)ハラスメント相談窓口の改善について」「(前提)」一段落目 
   ☓「法務コンプライアンス担当理事」→◯「法務コンプライアンス担当副学長」
以上です。大変失礼いたしました。


 

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公開質問状(吉田寮自治会より京大総長選候補者へ)

吉田寮自治会

京都大学の福利厚生施設である吉田寮は、寮生全員で構成する吉田寮自治会が自治・自主管理による運営を行ってきました。長年、様々な立場の京都大学の学生が関わり、それぞれの学生の立場にとって必要なことを寮内で共有し話し合って意思決定を重ねて来た経験を踏まえ、今回の京都大学総長選に際して候補者各位のお考えを質問させていただきたいと思います。

ご多用の所恐縮ではありますが、候補者各位におかれては質問へのご回答にご協力いただくようお願い申し上げます。質問の内容、前提となるこれまでの経緯についての詳しい説明が必要であれば、誠意をもって応対しますので吉田寮自治会〈yoshidaryo.jichikai@gmail.com / 070-3870-3599 / 京都市左京区吉田近衛町69番地 京都大学吉田寮〉までご連絡ください。

ご回答は、2020年7月13日までに、吉田寮自治会まで郵送ないしメールにてお送りください。

なお、この質問状へのご回答は、京都大学学内外への情報共有を目的として、公開させていただくことをご承知ください。

― 質問 ―

〈大学運営における学生の関わり方について〉

(1)学生への情報公開について

(前提) 従来京都大学では毎月、副学長が公開の場で大学内の会議の議論について報告する「情報公開連絡会」が開かれてきました。これは、1997年に京大に副学長制が導入されたことを発端に、大学の中央集権化や学生に関する意思決定の不透明化への懸念に対し、実施されてきた制度です。当時の井村裕夫総長は、学生との話し合いを通じて情報公開の必要性を認め、1998年に宮崎昭学生部長(当時)が「情報公開の場として、学生部長が参加する連絡会を公開の場で開く(確認事項) 」ことを約束しました。以後も同様に、1998年の三好郁郎副学長(当時)と吉田寮自治会との確約書から、2015年の杉万副学長(当時)と吉田寮自治会の確約書などに至るまで、副学長が参加する連絡会を開き、情報の公開に努めることが約束されてきました。
 こうした確約にも基づいて、2016年2月まで毎月、情報公開連絡会は開かれ続けてきました。これによって学生は、大学内で行われている議論や決定プロセスなどにアクセスすることができ、学内の運営プロセスに一定の透明性が担保されていました。

しかし、現任の学生担当理事が就任後に突然、連絡会を廃止とする意向を示し、学生の反対にもかかわらず、2016年3月より「諸般の事情につき中止」という不正常な状態が4年以上続いています。

(質問1) 大学の決定プロセスの透明化について、またそれらを保障していくために、どのような方策が必要であるとお考えですか?

(2)学生との話し合いについて

(前提) 従来京都大学では、学生寮の運営や学生生活に関して、学生など当事者向けの説明会、対話などが行われてきました。ところが現執行部体制になってより、学生など当事者への説明や話し合いなどなく、トップダウンで決定されることが増えました。結果、実状に沿わない方針が策定され、問題の根本的解決が遠退いたり、学内構成員の自主性・主体性が大きく損なわれてきました。立て看板規制やNFの日程短縮など、関わりのある当事者への説明会、話し合いによる合意形成などがなく進められたがために、学生からの反発の声も起こりましたが、一切黙殺されてきたことは記憶に新しいと思います。

吉田寮自治会は長年、関係者・当事者間の話し合いを通じて意思決定を行ってきました。その経験から、大学においても各当事者・団体間で話し合いを行うことで、より実情に即した運営ができ、何らかのトラブルが起こった場合にもより直接的に解決することが可能になると考えています。

(質問2) これからの学生との話し合いについて、どうお考えですか?

〈学生の福利厚生について〉

(3)学生への経済支援について

(前提) 京都大学に通う学生の中には、様々な経済的困窮を抱えた人がいます。中には学費や生活費を自ら負担している学生もいます。また実家の経済状況が一定以上の水準にあっても、実家との関係性から仕送りを受けられず困窮している学生もおり、この場合現行の奨学金・授業料免除制度では支援対象外となってしまっています。

(質問3) こうした学生らが万全の状態で学術研究活動に打ち込めるために、京都大学として為すことができる学生支援について、どうお考えですか?

(4)学生寮について

(前提) 現京都大学執行部は、本学の学生である吉田寮生の一部を被告とし、訴訟を起こしています。吉田寮自治会としては、一刻も早く訴訟を取り下げ、吉田寮に関わる諸問題を、話し合いによって解決したいと考えています。

(質問4) 吉田寮生に対する訴訟について、吉田寮生との話し合いの再開について、どうお考えですか?

〈学生生活について〉

(5)CAP制について

(前提) 京都大学では、1年間または1学期間に履修できる単位数あるいはコマ数を制限するCAP制を、2004年に法学部学部生に対して導入し、現在に至るまで順次導入範囲を拡げて来ています。CAP制の根拠は、文部科学省省令「大学設置基準」第二十一条の「一単位の授業科目を四十五時間の学修を必要とする内容をもつて構成することを標準とし、」といった文言にあると推察されますが、この時間数を算定した根拠については示されていません。学生にはそれぞれに興味関心の領域、得意・不得意分野、学習・研究のスタイルといった個性があり、画一的な時間数においてその教育効果を測ることは不可能です。大学現場における教育・研究の実態に疎い文科省が算定根拠を示すことは不可能であるのかもしれませんが、一方、学生の教育・研究を現に行って来た大学現場では、このような根拠の無い数字に振り回されることなく、学生の多様な現実を踏まえ判断をすることが可能であるはずです。根拠の無い学修時間数に固執することは学問に対する冒涜であり、学生や教員に対する制限を加えることで、本学における教育・研究活動が大幅に阻害されてゆきます。

(質問5) 京都大学における今後のCAP制の運用について、どのようにお考えですか?

(6)ハラスメント相談窓口の改善について

(前提) 現在の京都大学のハラスメント相談窓口は、法務コンプライアンス担当理事がトップに据えられており、理事、副学長、総長らのハラスメントについては、客観的・公平に判断することが難しい構造になっています。

(質問6) このような制度的欠陥を補うために、たとえば執行部や学内諸部局の利害とは独立したハラスメント対応窓口の設置の可能性などについて、どうお考えですか?

(7)留学生への言語保障について

(前提) 現在、京都大学にはおよそ2,700人以上の留学生が在籍し、これは京都大学の学生全体のおよそ12%を占めます。留学生の中には日本語を第一言語としない者、日本語の使用が得意でない者も多く存在しますが、現在の京都大学による情報の発信や窓口での対応は、日本語の使用が得意である者を前提としており、日本語を第一言語とする者と日本語を第一言語としない者の間で明確に格差が生じています。

(質問7) 今後、こういった格差を是正するための具体的な方策について、例えば通訳を専門とする職員の雇用・拡充、通訳機会の保障などについて、どうお考えですか?

〈京都大学の今後のあり方について〉

(8)今後の抱負について

(質問8) 京都大学の今後の理想像、目指すべき方向性について、どのようにお考えですか?

吉田寮自治会

住所:京都市左京区吉田近衛町69番地 京都大学吉田寮

電話番号:070-3870-3599

メールアドレス:yoshidaryo.jichikai@gmail.com

2020年6月29日:吉田寮の感染症対策に関する大学当局との交渉についての報告

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吉田寮の感染症対策に関する大学当局との交渉についての報告

2020年6月29日

吉田寮自治会

 吉田寮自治会は4月1日、「吉田寮における新型コロナウイルス対策と京都大学への協力要請」を発表し、大学当局に対し新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策の協力を求めた。本件に関するその後の大学当局の対応と交渉状況の概要について、ここに報告する。

1、衛生用品(マスク、消毒液など)の支給について

 4月14日時点の大学当局の回答は「現時点では衛生用品の備蓄がなく支給できない」とのことだったため、入手でき次第他の学内団体と同様に支給を行うよう求めた。しかし29日現在に至るまで、大学当局から本件についての連絡はなく衛生用品の支給も行われていない。

2、寮生名簿の受領について

 大学当局は感染症対策の一環として寮生名簿を受領することに前向きな姿勢を示した。これを受けて寮自治会は、これまで大学当局が、寮生が吉田寮を退去せざるを得なくなるよう保護者や指導教官への通知などの圧力行為を行ってきたことを鑑み、名簿の提出に先立って「提供した寮生情報を感染症対策以外の目的に使用しないこと」を書面で確約するよう求めた。具体的には、今回提供された寮生の情報について「①新型コロナウイルス対策以外の目的での利用をしないこと ②情報を取り扱う部署を明らかにし、それ以外に提供しないこと ③理事が交代する際には以上のことを引き継ぐこと」を大学法人として約束するという確約文面案を提示した。

 しかし、大学当局(役員会)は、寮自治会の案は受け入れないとして却下し、また疫学上の根拠もなく、寮生の部屋割りに関する情報を含む名簿でなければ受領しない、とした。このため本件については合意に至れていない状態である。

3、寮自治会との協議について

 寮自治会は、感染症対策について迅速な意思疎通が必要であるという考えから、川添学生担当理事ら決定権をもつ責任者との直接の話し合いを再三求めてきた。しかし大学当局はこれを拒否し、厚生課窓口を介したやり取りでしか協議をしないという姿勢を取り続けている。

2020.6.25 : Request for equal treatment of local and international students when providing future financial support for students affected by COVID-19

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Request for equal treatment of local and international students when providing future financial support for students affected by COVID-19

Dear Professor Yamagiwa, President of Kyoto University

Dear Professor Kawazoe, Vice-President for Student Affairs and Library Services

On May 19, the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) announced a plan that the ministry offers a financial support for the university students who suffered economically due to COVID-19. The plan got criticized soon after the announcement for treating Japanese and international students differently. Japanese students are required to submit only financial papers, whilst international student must also meet strict academic requirements to apply for the support. Facing the criticism, MEXT left the matter up to universities to decide whether they would enforce the additional requirements on international students or not.

On June 2, Kyoto University announced that they would not impose the academic requirements on international students. According to the Asahi Shinbun, President Yamagiwa explained the decision saying that the COVID-19 financial support is different from scholarships for academic achievement as it is for all students facing financial problems. We agree with Kyoto University President Yamagiwa’s view that students should not be discriminated against based on their nationality or academic achievements. However, there are still other hurdles for international students in the application process that Kyoto University has not removed.

  1. Despite Kyoto University waiving the requirement, international students were still urged in the application form to give information as to whether they met the academic requirements set by the MEXT. Furthermore, a technical glitch prevented the application form from being downloaded in English and there was no English-speaking officer at the scholarship bureau to assist. As the application period was only one week, students withoutJapanese proficiency were effectively excluded from the application process.
  2. Students who do not belong to regular programs such as research students or guest students, known by the university as“unofficial students”, were excluded from the scheme. All students are at risk of financial hardship as a result of COVID-19, so it is not justifiable to treat students differently based on their official/unofficial status. Considering the fact that the majority of “unofficial students” at Kyoto University are international students, the exclusion represents discrimination against international students.

Kyoto University has announced that it will also use its own budget to offer more financial supports for students in addition to the financial support from MEXT. In order to prevent discriminatory treatment against international students, Yoshida Ryo Residents Committee, as a student group at Kyoto University, requests our university to fulfill the four points below.

We ask that when providing future financial support Kyoto University:

  • not exclude “unofficial” students from the application process.
  • not discriminate against students based on their nationality or academic achievements.
  • improve multilingual services so that students who do not speak Japanese can also apply.
  • extend the application period long enough so that international students have a chance to become aware of the scheme and apply.

June 27, 2020

Yoshida Ryo Residents Committee

2020年6月25日:新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策としての経済支援に関する要求書

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京都大学総長 山極寿一 殿
京都大学学生担当理事・副学長 川添信介 殿

新型コロナウイルス(COVID-19)感染症対策としての経済支援に関する要求書

 5月19日より文科省が実施した、<「学びの継続」のための『学生支援緊急給付金』>(以下「給付金」)は、留学生に限って成績や出席率の要件を課しました。これは明らかな外国人差別に他なりません。
 これに対して京都大学は6月2日、京大においては留学生についても成績にかかわらず申請可能とすると発表しました。『朝日新聞』の報道によれば、山極寿一・京大総長は「(給付金は)生活困窮者への支援だ。成績を重んじる奨学金とは目的が違う」「留学生も、経済事情が逼迫している人に支給するのが本筋」と述べて、給付金の留学生要件を批判したとのことです(参考:6月14日付『朝日新聞』「京大総長、学生給付金を批判『留学生差別、おかしい』」)。

 給付金が生活困窮者への支援策であり、国籍や成績により差別されるべきでないという点はそのとおりです。しかし実際の京大の給付金運用においては、以下に述べる2点から、山極総長のこうした主張が反映されていたとは言い難いと考えます。

① 留学生(非日本語話者)への対応が不十分であったこと。
 京都大学は上記のように、留学生も成績・出席率にかかわらず申請可能とすると発表しました。しかし実際には、京大ウェブサイトからダウンロードできる提出書類様式は、変わらず留学生に対して成績・出席率の条件を満たしているか申告するよう求めていました。成績に関する情報を審査に用いる可能性も否定されていません。
 また英語版ページでは様式がダウンロードできない、奨学掛窓口では日本語での対応しかされない、などの問題も多発しました。わずか一週間あまりという申請期間において、事実上高度な日本語読解能力が要件となっていたと言わざるを得ません。

② 学部・院の正課に属さない、研究生、聴講生、科目等履修生などの学生(大学当局が「『非正規』生」として呼称している学生)が給付対象から除外されたこと。
 京都大学は近年、「正規」生と「非正規」生との福利厚生面での差別化をより強める姿勢を取っています(※1)が、「非正規」生であれ、学部生・院生と同様に、授業料や入学金(それも学部生・院生と異なり決して免除されることがない)の負担に苦しみ、新型コロナウイルス感染症による影響で経済的に逼迫し、大学での学びの継続が困難になっています。こうした人に対して福利厚生の門戸を閉ざすのは学籍種別による差別であり、困窮した学生の切り捨てに他なりません。現大学執行部は「費用負担の違い」を差別化の根拠としています(※2)が、大学とは営利企業と異なり万人の学ぶ権利を保証すべき公的機関です。大学で学ぶために必要な福利厚生は困窮する人があまねくアクセスできるべきであり、支払う金額により待遇を変えることは、経済力による差別でもあり不当です。
 加えて「非正規」生の差別とは、実質的な留学生に対する差別でもあります。なぜなら留学生は、日本人学生に比べ、研究生など学部生・院生以外の学籍で在学する機会が圧倒的に多いからです(※3)。
 以上の理由から、山極総長の言うように「留学生を差別しない」「生活困窮学生への支援」としての給付金事業において、学部生・院生以外の学生を排除してはならないと考えます。
 
 京都大学は5月20日に、感染症による困窮への支援策として学生に一人12万円の給付を行うことを発表しています。吉田寮自治会は、今回の文科省による給付金の問題点を踏まえ、京都大学の一学生自治団体として以下要求します。

 
(要求)

今後新型コロナウイルス感染症対策として京都大学が独自に実施する経済支援について、

  1. 全学生を給付対象とし、学部生・院生以外の学生を対象から排除しないこと。
  2. 国籍や学籍種別、学業成績による差別的要件を設けないこと。
  3. 非日本語話者への対応を充実すること。
  4. 十分に余裕をもった申請期間を設けること。

※1 授業料免除が学部・院の正課に属する学生のみを対象としていること等が代表的である。直近では、大学当局が吉田寮生に対して立ち退きを一方的に通告した際に、退去期限や代替宿舎の斡旋について、いわゆる「正規」「非正規」の別や在学年数により露骨な差別化がはかられた。

※2 2019年1月17日の記者会見で、吉田寮が「非正規」生を含む困窮した学生のセーフティネットとなってきたという指摘に対し、川添信介・学生担当理事は「京都大学の福利厚生施設として、『非正規』学生を受けいれるようにすることは現時点では考えていない」「支払ってもらえるコストによって受けるサービスは違って当然だと理解している」と答弁した(出典:2019年2月16日付け『京大新聞』)。

※3 2019年時点で、京大の総学生数の12%である留学生が、学部生・院生以外の学生総数の58%を占める。留学生全体の約2割が学部生・院生以外の学籍である(出典:「京都大学への留学案内 2020-2021」

2020年6月25日
吉田寮自治会

 なお、これらの要求を実現するためには、吉田寮自治会だけではなく学内外の様々な主体から声が上がることが重要である。ぜひ、あなたがたの声を京都大学に届けてほしい。

〈京都大学における関係各所の連絡先〉
●代表
 〒606-8501 京都市左京区吉田本町
  075-753-7531

●教育推進・学生支援部 学生課 奨学掛
 075-753-2536
 075-753-2532
 075-753-2535
 075-753-2495

●教育推進・学生支援部 厚生課
 840kousei@mail2.adm.kyoto-u.ac.jp