「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

2023年2月8日

京都大学
学生担当理事・副学長
平島 崇男 殿

吉田寮自治会
2023年2月5日

「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

 京都大学学生担当理事・副学長平島崇男氏は2023年2月2日、京都大学公式HP上にお
いて「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」[1]なる文書(以下、当該文書)を発出し
た。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、本自治会はこの文書について
撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

(「基本方針」について)

 当該文書において平島理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い、合意のもとに決する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると本自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て本自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。
 その上、本自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建
設的な提案を大学当局に対して行った[2]。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

(入寮募集について)

 本自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と本自治会において結ばれた確約[3]に基づいて実施している。この確約とは大学当局と本自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が本自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって本自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも本自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

 また、本自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、本自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

(訴訟について)

 2019年、大学当局は本寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、本寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、本自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

 さて、現在吉田寮に居住している本自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者[4]は吉田寮現棟への居住を確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で本自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

 また、本自治会は2023年春期入寮募集を行う旨を本寮公式HP[5]上にて発表しているところであり、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない本寮新棟(西寮)(2015年竣工)に限って実施すると公表している。平島理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない本寮新棟への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。新棟の存在を隠蔽し、本自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

(入寮募集の責任について)

 以上を鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、本寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、本自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、本自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

(最後に) 

 本自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた本自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう強く求める。

[1] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2023-02-02-1

[2]2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

[3] https://www.yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/

[4]2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。

[5] https://www.yoshidaryo.org/