投稿者: 吉田寮自治会

  • 2016年3月4日に京都大学当局に対して出した抗議声明文

    2016年3月4日

    京都大学総長 山極壽一 殿

    学生担当理事・副学長 川添信介 殿

    吉田寮自治会

    抗議声明

    2016年2月29日、学生担当理事・副学長川添信介は吉田寮自治会に対して、吉田寮現棟の老朽化を理由に吉田寮の入寮募集の停止を「要請」する通告「吉田寮の入寮者募集について(通知)」を発出した。また、翌3月1日には、この通告を京都大学公式ホームページに掲載した。それと同時に、各寮の概要を紹介するページから各寮の募集要項をすべて削除し、さらに吉田寮の特記事項として今回の通告の内容を掲載した。この件について、吉田寮自治会は2016年3月2日付で抗議声明を提出した。それに加えて、3月1日には教育推進学生支援部厚生課窓口での抗議活動、3月2日には三浦学生部長との話し合いを行い、大学当局に対して強く抗議の意を示した。

    さて、こうした一連の抗議活動の中で新たに明らかになった事実が3点ある。まず抗議活動の初めに吉田寮自治会は、今回の通告について話し合うため、川添理事に取り次ぐように要求した。それに対し、厚生課及び三浦学生部長は、川添理事から「学生がこの件について面会を求めてきても自分に取り次がないように」という指示を受けていると述べ、吉田寮自治会の要求を拒否した。

    次に、この通告やホームページの改変について、これが一体どういうプロセスで行われたのかを追及した。すると、2月29日に山極総長、数名の理事、総務部長、学生部長が出席する「会議」が開かれたことが明らかになった。三浦学生部長曰く、その「会議」は名前も付いておらず、部局長会議などのように公式なものでもなく、議事録すらとられていない「会議」であった。その「会議」において川添理事から、今回の通告を出すこと、ホームページに通告を掲載すること、各寮の紹介のページを改変すること、川添理事は学生の面会要求を拒否していくことが確認された。そしてその「会議」のあと、三浦学生部長と厚生課に対して上述のとおり指示をしたとの説明であった。

    最後に、川添理事から厚生課に対して、「吉田寮の入寮募集に関する問い合わせに対しては、大学当局が通告を出していることを伝えるように」との指示があったことが明らかになった。

    吉田寮自治会は、新たに明らかになったこれらの事実に対して、強く抗議する。

    まず、川添理事が学生からの面会・話し合いの要求を取り次ぐなと厚生課や学生部長に指示している件についてであるが、これは断じて許すことはできない。吉田寮自治会と副学長が結んできた確約には、何か問題があるときは当事者と話し合い、合意のうえで決定することが明記されている。そうでなくても、大学が民主的な在り方を志向するならば、当事者の意志を無視して一方的な決定を行なわないという原則は守られるべきであり、川添理事は吉田寮自治会との話し合いに応じるべきである。しかし、川添理事はそれと正反対の態度をとり、さらに2月29日の「会議」において、山極総長やほかの理事たちもこの姿勢を容認した。挙句の果て、川添理事は、三浦学生部長や厚生課に対して、当事者の批判から総長や理事たちを守る単なる「壁」になるように指示をしている。これは学生部長や厚生課に対し、学生担当理事自ら「学生対応窓口としての職務を放棄せよ」と命令しているに等しい。総長や理事たちのこのようなやり口は非常に卑劣である。吉田寮自治会は川添理事に対し、三浦学生部長や厚生課への指示を撤回し、吉田寮自治会との団体交渉に応じるよう要求する。

    なお、今回の抗議行動の中で、川添理事の意向として「少人数の代表者との話し合いであれば応じる」ということが伝えられた。しかしこの数十年に渡り、吉田寮自治会と大学当局は、あらゆる当事者が参加できる公開された場での議論(団体交渉)により問題解決をはかってきた(このことは確約にも明記されている)。関心のある当事者を説明・話し合いの場から排除することは、多様な立場性をもつ多数の寮当事者が自らの与り知らぬところで物事を決定されることにつながり、極めて問題である。

    話し合いの形式に関する大学当局の「提案」を話し合いに応じる「条件」として提示すること自体、甚だ不誠実な対応であり確約にも違反する。まして、殊ここに至っては「通知」を一方的に出し且つ同時に話し合いに、到底受け入れがたい条件を課すことで、募集停止問題をいわば「人質」にとって大学当局の提示する条件を呑むように脅迫しているに等しい。

    吉田寮自治会はこのような当局の卑劣な姿勢を厳しく批判し、川添副学長が公開の場で今回の募集停止「要請」について説明し、話し合いに応じることを要求する。

    次に、大学当局の一連の行動が、総長や理事数名による「会議」で決定されたことについてであるが、これは吉田寮自治会と大学当局の関係の問題に留まらず、京都大学当局内の民主的意思決定プロセスとしても大きな問題がある。当局内部のいかなる規定もその位置づけを明記しておらず、またこちらが問いただすまではその存在も公にされておらず、あまつさえ議事録すら存在しないような「会議」は、京都大学当局内の民主的意思決定プロセスの埒外に位置する「私的な談合」の場であると言わざるをえない。吉田寮に直接関わる当事者のみならず、大多数の教職員らをも排除した今回の決定は、「大学当局の独走」ですら最早なく、山極総長・川添理事ら「執行部の独走」にほかならない。

    こうした「会議」によって閉鎖的に決定された吉田寮自治会への通告は、自治会のみならず、京都大学の全構成員を愚弄する行為である。今回の一連の決定について全て撤回すること、ならびに今後このような私的な談合で、吉田寮に関する事項をはじめとして、京都大学に関することがら一般を決定しないよう強く要求する。

    最後に、厚生課に対し入寮希望者からの問い合わせへの対応を指示していたことについてである。これは吉田寮の入寮募集を妨害する行為として断固として抗議する。これについて大学当局は「単に事実を伝えているだけだ」と弁明している。だが、入寮募集についての問い合わせに対して「大学としては吉田寮自治会にこのような要請をしている」と通告するなら、そのことは実質的にどのような効果をもたらすだろうか。こうした対応が入寮希望者を萎縮させ、入寮を断念させてしまうことは十分に想定される事態である。とりわけ経済的な事由によって入寮を切実に希望する者にとっては、このような対応が京都大学への進学・在学そのものをも断念させることにつながるだろう。学生に対する非人道的な対応が指示されているという事実に対して吉田寮自治会は強く抗議の意を表明する。

    大学当局が「今回の通告はあくまで要請である」と弁明しているのは事実である。しかし「要請」をしても大学当局自身が話し合いに応じず主張を一方的に押し付けるならば、それは「命令」であり、また実質的な入寮妨害的対応を行っている以上「要請」は「決定」と同一の効果をもつ。

    吉田寮自治会はこのような一方的かつ正当な根拠を欠いた命令に従うつもりはない。3月2日付で発表した抗議声明でも述べたとおり、吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施する。これに対するいかなる妨害行為も許さないし、新入寮生へのいかなる弾圧に対しても抗議していくことを宣言する。

  • 2016年3月2日に京都大学当局に対して出した抗議声明文

    2016年3月2日

    京都大学総長 山極壽一 殿

    学生担当理事・副学長 川添信介 殿

    吉田寮自治会

    抗議文

    2016年2月29日、学生担当理事・副学長川添信介より「吉田寮の入寮者募集について(通知)」が通告された。同年3月1日には京都大学ホームページ上でこの要請と同じ内容の文章が、総長山極壽一の名義で掲載された1。また、各寮の概要を紹介するページ2では、入寮募集に関する情報がすべて削除され、吉田寮に関する特記項目として今回の要請のことも記載された。我々、吉田寮自治会は大学当局による一方的な募集停止通告、およびホームページ上での掲載、ホームページの改変に強く抗議し、以下のとおり表明する。

    1. 吉田寮自治会は今回の大学当局の通告を受け入れることは決してできない

    2. 大学当局は、大学公式ホームページ上における通告の掲載をただちに撤回すべきである

    3. 大学当局は、今回改変された各寮紹介のページを元に戻し、各寮の要求に従って募集要項を掲載するべきである

    4. 大学当局は今回の文書通告を取り下げ、吉田寮自治会との団体交渉をもち、吉田寮現棟の老朽化対策について話し合うべきである

    5. 吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施する

    以下、理由を説明する。

    今回の通告にもあるように、2015年7月28日の通告「吉田寮の入寮者募集について」でも吉田寮自治会に対して入寮募集停止は要請されていた。しかし、その後、7月29日に行われた抗議行動および7月30日に行われた団体交渉において、杉万俊夫副学長(当時)はこの一方的な募集停止通告は不当なものであったと認めている。その内容は150729確約、150730確約において明文化されている。さらに、8月4日に吉田寮自治会は抗議声明文を出し、入寮募集停止要請に対して反論した3。さらに同日、吉田寮自治会は総長山極壽一に対し、団体交渉を開催するよう公開質問状を提出した4。これについて一度は大学当局から回答があったものの、再度提出した公開質問状5については未だに返答がない。今回の通告はこうした一連の動きを全く反映せず、当事者の意見を全く無視した大学当局には憤りを覚える。ましてや、今回の募集停止の通知は春季の入寮選考を一週間後に控えた時に突如通達された。これから寮を切実に必要とする経済的に困窮した学生に対して、あまりに不誠実であり、福利厚生施設を自治自主管理する寮自治会として到底容認出来ない。すぐに通知を撤回し、ホームページ掲載および改悪を取りやめるように要求する。

    さて、今回の通告でも大学当局は、入寮募集の停止を要請する根拠として、吉田寮現棟の老朽化を挙げている。今回は具体的に「平成17年度及び平成24年度に実施した耐震診断調査」を根拠としている。これは一般財団法人建築研究協会による耐震調査のことを指していると思われる。確かにその調査報告の中では、吉田寮現棟は耐震性能が不足していると指摘されている。しかし同時に、耐震補強・構造補強を実施すれば、「現状の耐久壁を有効に利用し、」「再利用を考えるものと判断できる」とあり、現棟を補修することが現実的な手段であることも述べられている。 事実2007年には本調査に基づく現棟の補修案が検討されており、住人が住み続けながら、寮舎を部分的・段階的に補修できることが立証されている。

    大学当局がこの調査報告に基づいて、吉田寮現棟の安全性を一刻も早く確保したいと考えるなら、やるべきことは入寮募集の停止を要請することなどではない。大学当局が入寮募集という全く関係のない話題を持ち出すことで、議論がより複雑になり、結局老朽化対策が遅れてしまう。それよりも、すぐさま吉田寮自治会との現棟補修に向けた議論を再開することが、老朽化対策の第一歩である。既に吉田寮自治会は大学当局に対して現棟補修を再三要求している。2015年2月12日には、杉万副学長(当時)と17項目の確約を締結したが、その中の項目10、11には、現棟の老朽化対策として現棟補修が有効な手段であると明記されている。現棟を大規模補修することは、既に吉田寮自治会と大学当局とで合意されていることである6。加えて、吉田寮自治会は現棟補修の具体案として、京都市条例「京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例」を活用することを提案してきた。この案をベースにして、現棟補修に向けた団体交渉を開催するよう重ねて要求する。

    最後に、吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施することを宣言する。吉田寮の入退寮者選考権は歴史的に吉田寮自治会が担ってきた。そして、これからもそうである。寮生という当事者自らが入寮選考を行うのは、大学の審査にみられる実態に沿わない画一的な基準に基づく選別や排除を避けて、より入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考が出来るためである。また大学当局が入退寮者選考権を持つと、寮を追い出されるなど、大学当局から不当な弾圧を受ける危険性も高い。吉田寮自治会が入退寮者選考権を持つことは、これまでの確約等に記されているように、大学当局との間でも合意されてきたことである。今回のような大学当局による一方的な入寮募集停止の「通告」とHP掲載による既定路線化は、吉田寮自治会のもつ入退寮者選考権を剥奪しようとする行為である。吉田寮自治会はこうした行為を断じて許すことはできない。

    1 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/kyoiku-suishin-gakusei-shien/kosei/news/2015/160301_1.html (京都大学公式ホームページ)

    2 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/education-campus/campus/habitation/dormitory.html (同上)

    3 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/380/(吉田寮公式ホームページ)

    4 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/384/ (同上)

    5 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/391/(同上)

    6なお、2015年には日本建築学会近畿支部、及び建築史学会が、総長山極寿一宛に、吉田寮現棟の保存活用を求める要望書を提出している。

  • 声明文『2016年春期入寮選考にあたって』

    2016年2月21日

    吉田寮自治会

    2016年春期入寮選考にあたって

    2015年7月28日、京都大学当局(理事・副学長会議)より吉田寮自治会に対し、文書『吉田寮の入寮者募集について』が一方的に通知されました。これは、吉田寮の現居住者は現棟から退去すべきとして2015年秋期以降の入寮募集停止を要請するものでした。また翌29日には、吉田寮自治会との何らの話し合いも合意形成もないままに、同通知内容が京都大学公式HP上に掲載されました。吉田寮自治会は、団体交渉や公開質問状などをとおして、大学当局に対しこの通告を撤回するよう、再三にわたって要求してきました。しかし、今日に至るまで通告は撤回されていません。

    2016年春期入寮選考を行うにあたり、吉田寮自治会は大学当局による一方的な募集停止措置要請の文書通告、及びHP上での掲載についてあらためて強く抗議し、以下のとおり表明します。

    1.吉田寮自治会は、今回の大学当局の通告を受け入れることは出来ない。

    2.大学当局は、文書通告の大学公式HP上での掲載を撤回するべきである。

    3.大学当局は、文書通告を取り下げ、吉田寮自治会と吉田寮現棟の老朽化対策について議論し合意形成をはかるための、団体交渉に応じるべきである。

    以下、理由を説明します。

    ■ 募集停止措置は自治会の入退寮選考権に対する侵害である。

    そもそも、吉田寮の入退寮選考権は歴史的に吉田寮自治会が担っています。寮生という当事者自らが入寮選考を行うのは、大学の審査にみられる実態に沿わない画一的な基準に基づく選別や排除を避けて、より入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考が出来るからです。また大学当局が入退寮選考権を持つと、大学当局から不当な圧力を受けた者は寮に住めなくなる可能性が高まります。

    自治会が入寮選考権を持つことは、大学当局との間でも合意されていることです。今回のような大学当局による一方的な入寮募集停止の「通告」とHP掲載による既定路線化は、自治会のもつ入退寮選考権を剥奪しようとする行為であるといえます。

    ■ 文書による一方的通告とHP掲載による既定路線化は、当事者との合意形成プロセスを軽視している。

    これまで吉田寮自治会は京都大学当局と、団体交渉というやり方で問題解決をはかってきました。「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い、合意のうえで決定する」ことは、吉田寮自治会と京都大学当局との「確約(※1)」の第1項目により保証されています。今回の京都大学当局の一方的な通告は、当事者である自治会との合意形成を無視するものであり、決して許容することは出来ません。

    大学当局は「通告は「提案」に過ぎず決定ではない」と主張しています。しかし大学がこのような「通告」をHPに掲載すれば、募集停止「通告」が既定路線化することは明らかです。実際、数多くのメディアで吉田寮の入寮募集停止や廃寮化が決定したというデマが流布されてしまいました。自治会と議論し合意を目指す意思があるならば、まずは直ちに「通告」の公開を取り下げるべきです。

    また、2015年8月17日付の『公開質問状に対する回答(以下、『回答文』)』の中で、大学当局はHP掲載について、「要請を京都大学の学生や教職員に理解してもらうため」と説明しています。しかし、何より実際に寮で生活している当事者との一切の議論や合意形成を欠いたまま、当局の一方的見解や主張を「(寮外の)学生や教職員に理解してもらう」というのは、あまりに当事者の存在を軽視した行為といえます。また、寮自治会と大学当局とのこれまでの議論内容や吉田寮の老朽化対策についてより広く周知する必要があると言うなら、まずは当事者とその方法や内容を確認するべきですし、入寮募集停止要請を伴う必要はないはずです。

    ■ 募集停止は学生の福利厚生の縮小である。

    吉田寮の寮費が低廉なのは吉田寮が京都大学の福利厚生施設であるためです。福利厚生施設としての学生寮は、京都大学で学ぶ学生の経済負担の軽減を主な目的とする施設です。現状、京都大学の学寮に十分なキャパシティはなく、この事実は京都大学当局も認めています。また、京都大学にある全ての留学生寮(「国際交流会館」)は吉田寮に比べ格段に高い寮費になっています。こうした現状があるからこそ、私たちはこれまで入寮募集を続け吉田寮に住み続けてきたのです。そして、経済事情の悪化や授業料の高騰がある中で、今後とも吉田寮が提供する福利厚生を必要とする学生がいなくなることはありません。今回の入寮募集停止通告はこうした事情を顧みない、一方的な福利厚生の縮小でもあります。

    ■ 安全性を考えるならば大学当局は入寮募集停止措置を通告するのではなく、自治会の要求に応え、速やかに補修に向けた議論を行うべきである。

    京都大学当局は入寮募集停止と現棟からの住人退去について、寮生の生命・安全を確保するためであると説明しています。しかし、現棟の老朽化については、長年の吉田寮自治会の補修要求に対して、勝手な都合でこれを怠ってきた京都大学当局にそもそもの原因があると言わざるをえません。私たちは建物を一度に補修するのではなく、耐震強度が低い箇所から、部分的に補修するという提案もしてきました。実際2007年には補修工事(当局の予算の都合により実行されませんでしたが)に向けて寮の3分の1を空けるといった柔軟な対応もしています。これは入寮募集を続けながら実行されたことです。加えて吉田寮自治会は既に2012年9月の段階で「吉田寮の建築的意義を出来うる限り損なわない補修の実現に向けて継続協議する」旨の確約を大学当局と締結し、2013 年1 月には「京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例」を適用して現在の寮の様態を維持しながら耐震強度を上げる補修方法を提案しています。しかし、大学当局は2015年4月以降現棟補修に関する団体交渉に一度も応じてきませんでした(※2)。真に学生の安全を守るのであれば、入寮募集停止措置を講じ現棟からの退去を一方的に通告して議論を長期化させるような混乱を招くのではなく、現棟補修を速やかに実現するための議論を、吉田寮自治会と行うべきです。

    一方で、大学当局は『回答文』の中で、「まず現棟を居住者のいない状態にして、部分解体を含む詳細な調査を行い」と述べています。まず、この段階で既に、募集停止の理由が寮生の安全確保から現棟の調査へとすり替わっています。これでは、募集停止および退去が結論として決まっていて、理由を後づけしたかのようにも見えます。もしそうなら、この通告は現棟の老朽化問題を口実にした寮自治に対する攻撃であり、断じて許すことはできません。また、調査を行うとは言っても、その内容や必要性について何も言及されていません。調査を行うにしても、やはり吉田寮自治会とその内容や必要性を議論し、合意するべきです。それもないのに、単に「調査をする」とだけ言って、現棟からの退去を要求するのはあまりに粗雑であると言わざるをえません。いずれにせよ、現棟補修を進めるために吉田寮自治会と話し合うべきです。

    ■ 入寮募集停止が廃寮化・管理寮(※3)化につながるのは歴史的事実である。

    また京都大学当局は、今回の入寮募集停止は「廃寮化を前提としたものではない」と主張しています。しかし、歴史認識に基づけば入寮募集停止が廃寮化・管理寮化に繋がる行為であるのは明らかです。かつて1980年代に吉田寮が廃寮寸前まで追い込まれた際も、大学当局はまず入寮募集停止措置をとることから廃寮化攻撃を始めました。1970年代以降、全国の数多くの学生寮(例えば東大の旧駒場寮や山形大学学寮など)が廃寮化・管理寮化の憂き目にあってきました。そのほとんどが入寮募集の停止から始まったという事実が有ります。こうした数々の歴史的事実を鑑みれば、今後京都大学当局が自治会の解散や吉田寮現棟の取り壊し・縮小などの形で廃寮化・管理寮化を進めることが強く危惧されます。大学当局が一方的な通告を撤回し、速やかに補修に向けた議論を再開しない限り、その懸念は払拭されません。

    ■ 吉田寮に関する議論は、あらゆる当事者が参加できる、公開の場で行われるべきである。

    吉田寮自治会が今回の通告及び吉田寮の老朽化対策に関して団体交渉をもつことを要求したのに対して、『回答文』では以下のように回答されました。

    「大学当局としては、今後、吉田寮自治会と対話を進めていく必要があると考えており、話し合いをより実りあるものとするために、学生側・大学側双方5人程度の代表者による具体的かつ建設的な話し合いができる円卓会議を設置し、十分な議論をしていくことを提案します。」

    吉田寮の運営や老朽化対策に関して寮自治会と大学当局は、公開され、全ての当事者が参加できる話し合いの場(団体交渉)で問題解決をはかってきました。これは、実際に吉田寮で活動している当事者こそが、寮運営に関する第一義的な自己決定権をもつという自治原則の上で、強い権力をもつ京大当局がこれを侵して当事者との合意なく物事を決定しないようにするためです。また吉田寮の当事者は多様な立場性をもつ多数の人々によって構成されており、開かれた話し合いの場でなければそれら全ての関心有る人が議論に参加できません。人数制限によって議論に参加したい当事者を排除することは、健全な話し合いの方法とは言えません。

    また例えば吉田寮西寮(新棟)の増築や寮食堂の補修は、団体交渉での議論と合意形成により実現したものです。これは、団体交渉において「具体的かつ建設的な話し合い」が成されたことの証拠です。実際2015年3月9日まで、寮自治会と学生担当副学長を責任主体とする大学当局とは、団体交渉の場で現棟の老朽化対策について議論を進めてきていました。寮自治会は、早期に団体交渉を行うことこそが、老朽化対策を着実に進める手段であると考えています。

    ※1 確約とは、団体交渉で締結する文面化された約束です。吉田寮自治会が2015年2月12日に締結した確約は、吉田寮公式ホームページ( yoshidaryo.org/2015/02/12/150212確約書/ )に掲載しています。

    ※2 2015年11月には川添信介が新学生担当理事に就任しました。これに伴い、2016年1月、吉田寮自治会と大学当局(第三小委員会)との間で確約の引継に向けた予備折衝が行われました。吉田寮自治会としては、速やかに確約の引き継ぎを完了したうえで、老朽化対策の議論を再開させたいと考えています。

    ※3 管理寮とは、大学当局が運営・管理する寮です。多くの管理寮では、共有スペースの廃止や高額な寮費設定、寮への厳しい立ち入り制限等が行われています。

  • 2015年10月21日に発出した声明文

    2015年10月21日

    吉田寮自治会

    声明文

    杉万俊夫学生担当理事・副学長が9月30日付で辞任した。2015年10月現在では、北野正雄教育担当理事がその「代理」を務めるとしている。10月15日に行われた副学長による情報公開連絡会では、11月1日付で川添信介文学部長が学生担当理事・副学長に就任する予定であることが報告された。

    これを受けて、吉田寮自治会は以下のとおり声明する。

    1、吉田寮自治会は、早急な確約引き継ぎ団体交渉の開催を要求する。

    現在吉田寮自治会と大学当局は、17項目からなる「確約書」に合意している。現在の確約は2015年2月12日に大学当局側の責任ある交渉主体の、杉万前副学長と締結されたものである。したがって杉万前副学長の辞任を受けて、これらの確約は早急に、大学当局側の新たな責任者に引き継がれなければいけない。確約書の項目17には以下のとおり明記されている。

    項目17 引継ぎについて

    吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ。

    また現在、吉田寮現棟の老朽化対策は喫緊の課題であり、速やかに寮自治会など当事者と大学当局との間で現棟補修に向けた議論を再開する必要がある。こうした話し合いを行うためには「吉田寮の運営については一方的に決定せず、寮自治会と話し合い合意の上決定する」等の、話し合いの前提となる確約を引き継ぐことが必要不可欠である。その観点からも、確約の引き継ぎが無闇に遅延されてはならない。

    以上より、大学当局は可及的速やかに、確約を引き継ぎ吉田寮自治会と再締結するため団体交渉の日程調整を行うべきである。

    2、吉田寮自治会は、次期副学長と杉万前副学長や前理事補が同席する形で、公の場で引き継ぎ事項の確認を寮自治会と行うことを要求する。

    確約やその他の合意内容、継続協議中の議論内容を引き継ぐに際しては、議論の経過も含めて把握している前任者が、責任をもって後任者へ網羅的な引き継ぎを行わねばならない。しかし北野理事は前述の情報公開連絡会で、自身は暫定的な代理に過ぎず十分な引き継ぎが出来ているとは言えないと述べた。それならば、前任の杉万副学長やその職務を補佐していた当時の理事補が、確約項目17に則り、引き継ぎの責任を果たす必要がある。

    3、北野理事並びに大学当局は、寮自治会と杉万前副学長が締結した確約に反する行動を取ってはならない。

    本来であれば、北野理事は前任の杉万副学長から十分な引き継ぎを受け、自治会と確約の再締結を行うべきである。しかし北野理事は、暫定的な代理に過ぎないことや自身の多忙さを理由に、10月の間に確約引き継ぎ団体交渉をもつことは想定していないと述べた。それならば、北野理事並びに大学当局は、2015年2月12日に杉万前副学長が締結した確約に反する行動を、決して取ってはならない。暫定的代理であっても、学生担当理事として学生など当事者に対して真摯に対応する責任は失われない。

  • 2015年8月17日付京都大学当局の回答に対する声明文及び公開質問状

    この声明文及び公開質問状は2015年8月17日付けの京都大学当局の回答に対するものです。2015年8月17日付の京都大学当局の回答はこちら(京大HPより)

    2015年9月10日

    吉田寮自治会

    2015年7月28日、京都大学当局は吉田寮自治会に対して通知「吉田寮の入寮者募集について」を出し、秋季以降の入寮募集停止要請を一方的に通告した。これについて吉田寮自治会が8月4日付けで山極総長に宛てた公開質問状に対し、8月17日に杉万理事・副学長文責の回答(以下「回答文」)が吉田寮自治会に送付され、また京大HP上で公開された。

    これに対して、吉田寮自治会は以下の通り声明する。

    1、現棟の調査のために入寮募集を停止することは不要であり、福利厚生の点からも不適切である。よって、吉田寮自治会は2015年秋季も入寮募集を通常通り行う。

    回答文では「現棟を居住者のいない状態にして、部分解体を含む詳細な調査を行」う必要があるとし、そのためにも入寮募集の停止を要請したと主張している。寮自治会としても現棟補修に向けて必要な追加調査は行うべきだと考えるが、同時に調査や工事は極力、吉田寮の福利厚生機能(経済的に困窮している人でも低廉な費用で居住空間が提供されること)を損なうべきでないとも考える。この点で、大学当局が、具体的な調査の必要性や内容について一切の議論がないままに、福利厚生を著しく損なう方法(寮生の退去や入寮募集の停止)を前提としているのは問題がある。まずは寮自治会と大学当局の間で現棟補修に向けた追加調査の必要性や内容について、具体的に議論し、出来る限り福利厚生を減退しない方法を検討すべきである。

    また仮に寮生が居住しながらの調査が不可能であっても、入寮募集を停止する必要はない。実際2006年の現棟補修工事(未実施)の際には、部屋割りを工夫することで募集停止を行わずに現棟の約3分の1を開放した。入寮募集を継続しながら調査や工事のために寮の一部を開放できることは、既に実証されているのである。寮自治会としては、今回の現棟調査・工事に関しても必要に応じこうした調整を行うことも想定している。

    公開質問状にも示したように、吉田寮は京都大学の福利厚生施設であり、その機能を減退することは出来る限り避けなければいけない。寮生の安全を考えるのであれば、入寮募集の停止を伴わずに、速やかに吉田寮現棟の補修を実現することによって建物の安全性を高めることが適切である。また、現段階で調査や工事のために入寮募集を停止する蓋然性はない。よって、吉田寮自治会としては2015年秋季も通常通り、入寮募集を行う。

    2、一方的文書通知と京大HPへの掲載は当事者との合意形成を軽んじる不適切な行為であり、撤回するべきである。

    大学当局は回答文で、通知は(決定ではなく)要請であるため、確約には反しないとしている。しかし、7月28日の通知は大学当局と寮自治会の協議の中で提案されたものではなく、今後の協議を前提としたものでもなかった。文言上では「要請」だとしても、大学当局としての結論を一方的に突きつけるものであったことには相違ない。また強い発言力をもつ大学当局が当事者を無視して大学のHP上で当局の見解や主張を一方的に発表することは、当事者と合意されていない当局の主張を既定路線化(実際には決定していないことがあたかも決定事項のように取られること)することにつながりかねない。実際に数多くのメディアで吉田寮の入寮募集停止や廃寮化が決定したといったデマが流布された。

    こうした点から通告やHP掲載は当事者との合意形成を重んじる方法とは言えず、不適切である。

    尚、回答文ではHP掲載について、「要請を京都大学の学生や教職員に理解してもらうため」と説明している。しかし、何より実際に寮で生活している当事者との一切の議論や合意形成を欠いたまま、当局の一方的見解や主張を「(寮外の)学生や教職員に理解してもらう」というのは、あまりに当事者の存在を軽視しており問題である。また、寮自治会と大学当局とのこれまでの議論内容や吉田寮の老朽化対策についてより広く周知する必要があると言うならば、まずは当事者とその方法や内容を確認するべきであるし、入寮募集停止要請を伴う必要はない筈である。

    以上の観点から、寮自治会としては改めて通告とHP掲載に強く抗議し、これらの撤回を求める。

    3、吉田寮に関する議論は、あらゆる当事者が参加できる、公開の場で行われるべきである。

    吉田寮自治会が今回の通告及び吉田寮の老朽化対策に関して団体交渉をもつことを要求したのに対して、回答文には以下のようにある。

    「大学当局としては、今後、吉田寮自治会と対話を進めていく必要があると考えており、話し合いをより実りあるものとするために、学生側・大学側双方5人程度の代表者による具体的かつ建設的な話し合いができる円卓会議を設置し、十分な議論をしていくことを提案します。」

    吉田寮の運営や老朽化対策に関して寮自治会と大学当局は、公開され、全ての当事者が参加できる話し合いの場(団体交渉)で問題解決を図ってきた。これは、実際に吉田寮で活動している当事者こそが、寮運営に関する第一義的な自己決定権をもつという自治原則の上で、強い権力をもつ京大当局がこれを侵して当事者との合意なく物事を決定しないようにするためである。また吉田寮の当事者は多様な立場性をもつ多数の人々によって構成されており、開かれた話し合いの場でなければそれら全ての関心有る人が議論に参加できない。人数制限によって議論に参加したい当事者を排除することは、健全な話し合いの方法とは言い難い。

    また例えば吉田寮西寮(新棟)の増築や寮食堂の補修は、団体交渉での議論と合意形成により実現したのであり、団交において「具体的かつ建設的な話し合い」が成されたのである。実際2015年3月9日まで、寮自治会と学生担当副学長を責任主体とする大学当局とは、団体交渉の場で現棟の老朽化対策について議論を進めてきた。

    寮自治会は、早期に団体交渉を行うことこそが、老朽化対策を着実に進める手段であると考える。勿論、団体交渉を前提にその準備段階として、双方の意見を確認し整理する場(予備折衝)を設けることはこれまでも行われてきたし、今回も可能である。

    声明文に関連する公開質問状

    山極壽一 総長

    杉万俊夫 学生担当理事・副学長 殿

    声明文の「3」に述べたような団体交渉の経緯や意義は、大学当局とも既に幾度も共有されてきた。2015年2月に再締結された確約においても「吉田寮の要求に応じて団体交渉を開くこと」が約束されている。その上で今回大学当局から「円卓会議」なる提案があったが、あまりに提案の内容や意図が不明瞭であり、従来継続してきた団体交渉とは異なる議論方法を提案する理由も分からず、検討に付すことが出来ない。

    したがって以下の5点について、大学当局に質問する。

    1 「円卓会議」とはどのような性質をもった会議体であり、どのような議題について何をすることを想定しているのか。また、団体交渉とはどのような関係にあるのか。

    2 「円卓会議」は「双方5人程度の代表者による」話し合いを行うとあり、先に述べたように当事者の議論への参加を著しく制限する問題がある。自治会としては自由に参加できる公開の議論の場を開くべきだと考えるが、当局としてはどのように考えているのか。

    3 大学当局側の「5人程度の代表者」とは具体的にどの役職を指すのか。

    4 従来寮自治会と大学当局が確約団交体制に則り具体的な議論を行なってきたのに対して、敢えて異なる議論方法を提案する理由は何か。

    5 自治会としては、議論や合意形成は全当事者が参加できる公開の場で行うべきだと考える。大学当局は団体交渉や団体交渉に向けた予備折衝(双方の主張を整理する場)に応じるつもりがあるのか。

  • 2015年8月4日に吉田寮自治会が京都大学当局に対して出した抗議声明文

    吉田寮自治会

    2015年7月28日、京都大学当局(理事・副学長会議)より吉田寮自治会に対し、文書「吉田寮の入寮者募集について」が、一方的に通知されました。これは、吉田寮の現居住者は現棟から退去すべきとして2015年秋季以降の入寮募集停止を要請するものでした。また翌日29日には、吉田寮自治会との何らの話し合いも合意形成もないままに、同通知内容が京都大学公式HP上に掲載されました。

    吉田寮自治会は大学当局による一方的な募集停止措置要請の文書通告、及びHP上での掲載に強く抗議し、以下のとおり表明します。

    1,吉田寮自治会は、今回の大学当局の通告を受け入れることは決して出来ない。

    2,大学当局は、文書通告の大学公式HP上での掲載を即時に撤回するべきである。

    3,大学当局は、文書通告を取り下げ、吉田寮自治会と吉田寮現棟の老朽化対策について議論し合意形成をはかるための、団体交渉に応じるべきである。

    なお、吉田寮自治会は、2015年秋季の入寮募集を通常通り行う予定である。

    以下、理由を説明します。

    ◯ 募集停止措置は自治会の入退寮選考権を侵害する行為である。

    そもそも、吉田寮の入退寮選考権は歴史的に吉田寮自治会が担っています。寮生という当事者自らが入寮選考を行うのは、大学の審査にみられる実態に沿わない画一的な基準に基づく選別や排除を避けて、より入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考が出来るからです。また大学当局が入退寮選考権を持つと、大学当局から不当な圧力を受けた者は寮に住めなくなる可能性が高まります。

    自治会が入寮選考権を持つことは、大学当局との間でも合意されていることです。今回のような大学当局による一方的な入寮募集停止の「通告」とHP掲載による既定路線化は、自治会のもつ入退寮選考権を剥奪しようとする行為であるといえます。

     文書による一方的通告とHP掲載による既定路線化は、当事者との合意形成プロセスを軽視している。

    元来吉田寮自治会は京都大学当局と、団体交渉というやり方で問題解決をはかってきました。「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い合意のもとに決する」ことは、吉田寮自治会と京都大学当局との「確約(※1)」の第1項目により保証されています。今回の京都大学当局の一方的な通告は、当事者である自治会との合意形成を無視するものであり、決して許容することは出来ません。

    大学当局は「通告は「提案」に過ぎず決定ではない」と主張しています。しかし大学がこのような「通告」をHPに掲載すれば、募集停止「通告」が既定路線化することは明らかです。自治会と議論し合意を目指す意思があるならば、まずは直ちに「通告」の公開を取り下げるべきです。

     募集停止は学生の福利厚生の縮小である。

    吉田寮の寮費が低廉なのは吉田寮が京都大学の福利厚生施設であるためです。福利厚生施設としての学生寮は、京都大学で学ぶ学生の経済負担の軽減を主な目的とする施設です。現状、京都大学の学寮に十分なキャパシティはなく、この事実は京都大学当局も認めています。また、京都大学にある全ての留学生寮(「国際交流会館」)は吉田寮に比べ格段に高い寮費になっています。こうした現状があるからこそ、私たちはこれまで入寮募集を続け吉田寮に住み続けてきたのです。そして、経済事情の悪化や授業料の高騰がある中で、今後とも吉田寮が提供する福利厚生を必要とする学生がいなくなることはありません。今回の入寮募集停止通告はこうした事情を顧みない、一方的な福利厚生の縮小でもあります。

     安全性を考えるならば大学当局は入寮募集停止措置を通告するのではなく、自治会の要求に応え、速やかに補修に向けた議論を行うべきである。

    京都大学当局は入寮募集停止と現棟からの住人退去について、寮生の生命・安全を確保するためであると説明しています。しかし、自治会が長年現棟の老朽化対策を訴えてきたにも関わらず補修がなされていないのは、京都大学当局の都合によるものです。私たちは建物を一度に補修するのではなく、耐震強度が低い箇所から、部分的に補修するという提案もしてきました。実際2007年には補修工事(当局の予算の都合により実行されませんでしたが)に向けて寮の3分の1を空けるといった柔軟な対応もしています。これは入寮募集を続けながら実行されたことです。

    加えて吉田寮自治会は既に2012年9月の段階で「吉田寮の建築的意義を出来うる限り損なわない補修の実現に向けて継続協議する」旨の確約を大学当局と締結し、2013年1月には「京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例」を適用して現在の寮の様態を維持しながら耐震強度を上げる補修方法を提案しています。しかし、大学当局は2015年4月以降現棟補修に関する団体交渉に一度も応じていません。

    真に学生の安全を守るのであれば、入寮募集停止措置を講じ現棟からの退去を一方的に通告して議論を長期化させるような混乱を招くのではなく、現棟補修を速やかに実現するための議論を、吉田寮自治会と行うべきです。

     入寮募集停止が廃寮化・管理寮(※2)化につながるのは歴史的事実である。

    また京都大学当局は、今回の入寮募集停止は「廃寮化を前提としたものではない」と主張しています。しかし、歴史認識に基づけば入寮募集停止が廃寮化・管理寮化に繋がる行為であるのは明らかです。かつて1980年代に吉田寮が廃寮寸前まで追い込まれた際も、大学当局はまず入寮募集停止措置をとることから廃寮化攻撃を始めました。1970年代以降、全国の数多くの学生寮(例えば東大の旧駒場寮や山形大学学寮など)が廃寮化・管理寮化の憂き目にあってきました。そのほとんどが入寮募集の停止から始まったという事実が有ります。こうした数々の歴史的事実を鑑みれば、今後京都大学当局が自治会の解散や吉田寮現棟の取り壊し・縮小などの形で廃寮化・管理寮化を進めることが強く危惧されます。大学当局が一方的な通告を撤回し、速やかに補修に向けた議論を再開しない限り、その懸念は払拭されません。

    ※1 確約とは、団体交渉で締結する文面化された約束である。吉田寮自治会が2015年2月12日に締結した確約は、吉田寮公式ホームページ(https://sites.google.com/site/yoshidadormitory/)に掲載している。

    ※2 管理寮とは、大学当局が運営・管理する寮である。多くの管理寮では、共有スペースの廃止や高額な寮費設定、厳しい寮への立ち入り制限等が行われている。

  • 2015年8月4日に提出した京都大学総長山極壽一への公開質問状

    2015年8月4日

    京都大学総長 山極壽一殿

    吉田寮自治会

    公開質問状

    2015年7月28 日、杉万俊夫理事・副学長名義の通告文『吉田寮の入寮者募集について』を受け取った。翌29日には、京都大学ホームページ上に山極壽一総長名義でこの件に関する声明が掲載された。我々吉田寮自治会は、この通告及び声明はこれまで吉田寮自治会と大学当局とが合意してきた様々な事項に反すると考えている。

    まず、吉田寮の入寮選考権は吉田寮自治会が有していることを確認しておきたい。このことは吉田寮自治会と大学当局とが結んだ確約に示されている。今回の通告はこの入寮選考権に一方的に干渉するものであり、不当である。大学当局が「これは提案にすぎない」と主張しても、既に巷には「吉田寮にはもう入寮できない」「吉田寮の廃寮化が決定した」という風説が流布している。この現状を鑑みれば、今回の通告及び声明は実質的に吉田寮の入寮選考権を侵害しているといえる。したがって、今回の通告及び声明を速やかに撤回するべきである。

    次に、入寮募集停止は寮生の生命・財産を守るための処置として不適切である。吉田寮は福利厚生施設であり、吉田寮自治会はその役割を果たすために入寮選考を続けてきた。今回の通告及び声明はその経緯を無視したものである。本当に老朽化問題を解決したいのなら、自治会との団体交渉を速やかに再開し、大規模補修に向けた議論を再開すべきである。

    以上の観点から、吉田寮自治会から山極総長に以下5点の質問をする。2015年8月14日までに回答されたい。

    1. 吉田寮自治会と大学当局は2015年2月12日に17項目の確約を締結した。当然、大学当局はこの確約の意義・内容を理解しているはずである。しかし、今回の通告及び声明はこの確約の項目1、項目2、項目3に明らかに反している。これについてどのように考えているか。

    2. 今回の通告をホームページに掲載したことにより、吉田寮の廃寮化が決定したという風説が流布している。このことにより、大学当局は吉田寮自治会の入寮選考権を実質的に侵害している。このような事態が起こることは容易に想像できたはずである。なぜ今回の通告をホームページに掲載したのか。また、このような事態に対して、ホームページ掲載を撤回するなど、さらなる対応をするつもりはあるか。

    3. 今回の通告及び声明について、「山極総長は吉田寮自治会と話し合うつもりはある」と杉万副学長から言質を得ている。これまで吉田寮自治会と大学当局は団体交渉を開いて、様々な問題について議論してきた。団体交渉は、あらゆる当事者が参加できる公開の話し合いの場である。当然、今回の件も団体交渉の場で話し合うべきである。山極総長はいつまでに本件についての団体交渉を開くのか。

    4. これまで吉田寮自治会と大学当局は現棟補修の意義を認めてきたはずである。このことは確約末尾の「吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義」にも明示されている。これに基づいて、吉田寮自治会は現棟の老朽化対策として京都市条例「京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例」を適用することを主張している。この案については杉万副学長も賛意を示している。吉田寮自治会と大学当局がこれまで行ってきた大規模補修に向けた取り組みについて、山極総長はどのように考えているのか。

    5. 現棟の老朽化対策を進めるためには、吉田寮自治会と大学当局とで団体交渉を行い、補修に向けた議論をする必要がある。しかし、3月9日以降団体交渉は開かれていない。この現状は確約項目9、項目11に明らかに反している。大学当局は吉田寮自治会との団体交渉をいつまでに開くのか。

  • 150730 確約書

    以下の内容は、2015年7月30日に150729確約に基づき実施された団体交渉において学生担当理事副学長・杉万俊夫と結んだ確約である。

    「吉田寮の入寮者募集について」はあくまで理事・副学長会議としての提案にすぎず、決定ではない。提案は撤回することが可能である。今後文書の撤回に向けた吉田寮自治会との団体交渉を行う。

    2015年7月30日 杉万俊夫

  • 150729 確約書

    以下の内容は、2015年7月29日に京都大学当局によって出された通告文に対する抗議行動の中で学生担当理事副学長・杉万俊夫と結んだ確約である。

    私は学生担当理事・副学長として、以下の内容に合意する。

    1、7月28日に大学当局から吉田寮自治会に出された文書「吉田寮の入寮者募集について」(以下「文書」)を翌29日に京都大学ホームページ上で公開したことは、大学当局が当事者である吉田寮自治会との一切の合意なく決定した入寮募集停止を、一方的に公表・既定路線化するものであり、吉田寮自治会との確約に違反することを認める。したがって文書は撤回し、ホームページ等で撤回の旨を周知するべきであることを認める。

    2、7月30日に設定する理事副学長会議で、文書を撤回しホームページ等で撤回の旨を周知するよう尽力する。その時間帯と場所は決まり次第速やかに吉田寮自治会に連絡する。7月30日に団体交渉を開き、会議の結論について吉田寮自治会に説明する。また会議の議事録を全て吉田寮自治会に対し公開する。

    3、吉田寮自治会の要求に応じて、本件に関し山極総長を含む団体交渉を設定する。

    杉万俊夫

  • 150212確約書

    以下の内容は、2015年2月12日に行われた団体交渉の中で学生担当理事副学長・杉万俊夫と結んだ確約である。

    確約書

    項目1

    大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が団体交渉を希望した場合は、それに応じる。

    項目2

    大学当局は、吉田寮の新寮・新規寮の建設と吉田寮現棟の老朽化対策について、吉田寮自治会と誠意をもって合意を形成する努力を行う。

    項目3 吉田寮の入退寮者の決定について

    大学当局は、現行の寄宿舎規程が現状に即しておらず、寄宿舎規程を変更してこなかった責任が当局にあることを認める。また、入退寮者の決定については、吉田寮現棟・吉田寮新棟ともに現行の方式を維持する。

    項目4 情報公開・当事者との話し合いについて

    大学当局は、過去に学生など当事者に情報を出さず話し合いを行わなかったことにより、学生など当事者が不利益を被ったことを認め、今後積極的に情報公開を行い当事者との話し合いの場を設けることで再発防止に努める。

    4-1 公開する情報について

    学生などに関わることについては、可能な限り早く学生など当事者に周知する。

    大学組織やキャンパスの改組・再編については、学生など当事者の要求に沿って副学長が役員会・教育研究評議会・経営評議会・部局長会議・各種委員会をはじめとする各種会議の内容も含めて知りうる情報について決定以前に情報を公開する。新寮・新規寮の建設及び現在の寮に関しては、何らかの案が出た時点で公開する。

    4-2 情報公開の手段について

    副学長が参加し、情報公開を行う連絡会を公開の場で開く。また、この連絡会に限らず、さまざまな場・手段を用いて情報の公開に努める。情報公開において、意図的に情報を隠すようなことはしない。

    4-3 当事者との話し合いについて

    学生などに関わることについては学生など当事者と話し合うことなく一方的な決定を行わない。学生など当事者からの要求があれば、団体交渉などを行う。なお、話し合い・団体交渉は公開の場で行い、一方的な条件をつけない。

    学生などに関わることについては、学生課は学生など当事者の要求に対し責任ある交渉窓口として誠実な対応を行う。また、学生課は学生など当事者が学内の各部局と交渉に当たる際、学生らの求めに応じて適切な仲介を行う。副学長は厚生補導担当の責任者としてこれらのことが行われるよう努力する。

    項目5 西寮撤去について

    西寮撤去の責任は学務部(旧名称学生部)を含む大学当局にあることを認める。1989年に設置したプレハブは、西寮代替スペースとしては不十分であることを認め、今後も寮機能の回復、維持、発展に努める。

    項目6 吉田寮の新寮、新規寮について

    6-1 吉田寮の新寮・新規寮について

    大学当局は現在存在する学生寮だけでは学生の福利厚生を十分守ることが出来ないことを認め、学生の福利厚生の回復、維持、発展のため、吉田寮の新寮や、新規寮の建設に向けて努力する。また吉田寮を含む様々な寮の新寮・新規寮の内容に関しては既存の寮自治会などと協議を行う。

    6-2 吉田寮の補修について

    大学当局は吉田寮現棟にとって老朽化対策が早急に必要であることを認め、老朽化対策のための処置が完了するまでには、食堂をはじめとする共有スペースも含め、吉田寮の補修を継続して行う。また、処置完了後も、必要に応じて補修を行う。

    6-3 他寮への影響について

    吉田寮の補修・建て替え・新棟建設を理由に、他寮の寮費、負担区分の値上げや、管理強化を行わない。

    項目7 1996年の火災による焼失について

    1996年の火災による焼失部分の代替となる機能を回復する必要性があることを認め、今後とも協議する。

    項目8 焼け跡について

    吉田寮食堂の西側広場である「焼け跡」を何らかの形で利用しようとする場合には、吉田寮自治会がこれまで「焼け跡」の管理に携わってきた経緯を踏まえ、吉田寮自治会と相談し、その意向を十分に尊重する。

    項目9

    吉田寮新棟の建設及び吉田寮現棟の老朽化対策を,第二期重点事業実施計画の予算期限である2016年3月までに、早急に決定し、工事を着工するよう協議していく。

    項目10

    吉田寮現棟の耐震強度を十分なものとし,寮生の生命・財産を速やかに守るために,吉田寮現棟を補修することが有効な手段であることを認める。

    項目11

    大学当局は本確約末尾に示す「吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義」を認め,その意義をできるかぎり損なわない補修の実現に向けて,今後も協議を続けていく。

    項目12

    吉田寮新棟の運営は吉田寮自治会が行う。また、大学当局は継続中の協議事項について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が吉田寮新棟に関して団体交渉を希望した場合は、それに応じる。

    項目13 吉田寮食堂の存廃について

    吉田寮食堂には現存地において現在の姿を最大限残した形での耐震補修を行う。補修方法の詳細については今後も継続して協議を行う。

    項目14 吉田寮新棟の構造について

    吉田寮新棟の構造については、基本居住部分は木造2棟、そこに小規模な鉄筋コンクリート造の棟を組み合わせる混構造とする。また、吉田寮新棟には地下スペースを設ける。内部構造や地下スペースの使用方法など吉田寮新棟の構造の詳細については、防災等に配慮しつつ、今後も継続して協議を行う。

    項目15 寮生の経済負担について

    大学当局は、一般に学生寮は学生の福利厚生を守るために必要であることを認め、理想としてそこに居住する住人の経済負担はなるべく低廉であるべきだと認める。

    吉田寮新棟の経済負担については協議中であり一方的な決定はしない。また吉田寮新棟の水光熱費の負担区分については、吉田寮自治会との合意に至るまで吉田寮現棟の現在の負担区分を適用する。

    項目16 吉田寮新棟の寮内労働者について

    吉田寮新棟における事務員の雇用・配置・業務内容等については、吉田寮自治会との合意に至るまで一方的な決定を行わず、継続議題として吉田寮自治会とこれからも協議していく。

    項目17 引継ぎについて

    吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ。

    注記

    副学長:厚生補導担当副学長

    吉田寮現棟:2015年2月現在存在する建物。

    吉田寮新棟:1996年の火災により生じた焼け跡で2015年2月現在建設中である、寮生が生活するための建物。旧名称A棟。

    新寮:既存の寮の建物の拡張施設。

    新規寮:京都大学の新しい寮。

    吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義

    第一に、吉田寮現棟は周辺環境とともに、建築として優れた価値を有する。吉田寮現棟には優良な木材が使われており、居室は全て南向きに配置されている。また、三棟ある居住棟それぞれの間には豊かな樹木群が生い茂る広い庭がある。そのため、日当たり・風通しが大変優れており、寮生の快適な生活を可能にしている。また、吉田寮現棟の庭には多種多様な生命がいきいきと根づいており、その庭は吉田寮生のみならず、広くその庭を訪れる人にとって憩いの場としても機能している。

    第二に、建築史から見た価値が吉田寮現棟には存在する。吉田寮現棟は明治・大正期に洋風建築が普及していくなかで建てられた和洋折衷の建築物である。この時代に建てられた西洋の建築意匠・技術によって建てられた学生寮や寄宿舎は多いが、それらのほとんどは建て替えられてしまった。したがって、吉田寮現棟は明治・大正の建築意匠・技術を今に伝える希少な建築物となっている。このように歴史を体現して今に伝える建築物は、過去の事実を知り、未来の新しい考えを生み出す拠り所として貴重なものである。なお、こうした価値はある建物単体としてではなく、吉田寮現棟と隣接する吉田寮食堂棟などと不可分の建築群として、はじめて形成されるものである。

    第三に、一世紀にわたり動態保存され続けてきたことによる価値を吉田寮は有している。このことは、自分たちの生活・活動の場をより良くしようとしてきた人びとの不断の試行錯誤の結果であり、またそうした結果を引き継ぎ、今後も絶え間ない努力を可能にする場として、吉田寮現棟が存在することを意味する。この価値は、たとえば吉田寮現棟の一部をモニュメントなどとして残すのではなく、使い続けることによってこそ受け継がれていくものである。この価値もまた、第二に挙げた価値と同様に、吉田寮現棟のみならず、それに隣接する吉田寮食堂などからなる建築群によって、体現されていると言える。

    2015年2月12日 副学長 杉万 俊夫

    2015年2月12日 吉田寮自治会(印)