2015年8月17日付京都大学当局の回答に対する声明文及び公開質問状

2015年9月10日

この声明文及び公開質問状は2015年8月17日付けの京都大学当局の回答に対するものです。2015年8月17日付の京都大学当局の回答はこちら(京大HPより)

2015年9月10日

吉田寮自治会

2015年7月28日、京都大学当局は吉田寮自治会に対して通知「吉田寮の入寮者募集について」を出し、秋季以降の入寮募集停止要請を一方的に通告した。これについて吉田寮自治会が8月4日付けで山極総長に宛てた公開質問状に対し、8月17日に杉万理事・副学長文責の回答(以下「回答文」)が吉田寮自治会に送付され、また京大HP上で公開された。

これに対して、吉田寮自治会は以下の通り声明する。

1、現棟の調査のために入寮募集を停止することは不要であり、福利厚生の点からも不適切である。よって、吉田寮自治会は2015年秋季も入寮募集を通常通り行う。

回答文では「現棟を居住者のいない状態にして、部分解体を含む詳細な調査を行」う必要があるとし、そのためにも入寮募集の停止を要請したと主張している。寮自治会としても現棟補修に向けて必要な追加調査は行うべきだと考えるが、同時に調査や工事は極力、吉田寮の福利厚生機能(経済的に困窮している人でも低廉な費用で居住空間が提供されること)を損なうべきでないとも考える。この点で、大学当局が、具体的な調査の必要性や内容について一切の議論がないままに、福利厚生を著しく損なう方法(寮生の退去や入寮募集の停止)を前提としているのは問題がある。まずは寮自治会と大学当局の間で現棟補修に向けた追加調査の必要性や内容について、具体的に議論し、出来る限り福利厚生を減退しない方法を検討すべきである。

また仮に寮生が居住しながらの調査が不可能であっても、入寮募集を停止する必要はない。実際2006年の現棟補修工事(未実施)の際には、部屋割りを工夫することで募集停止を行わずに現棟の約3分の1を開放した。入寮募集を継続しながら調査や工事のために寮の一部を開放できることは、既に実証されているのである。寮自治会としては、今回の現棟調査・工事に関しても必要に応じこうした調整を行うことも想定している。

公開質問状にも示したように、吉田寮は京都大学の福利厚生施設であり、その機能を減退することは出来る限り避けなければいけない。寮生の安全を考えるのであれば、入寮募集の停止を伴わずに、速やかに吉田寮現棟の補修を実現することによって建物の安全性を高めることが適切である。また、現段階で調査や工事のために入寮募集を停止する蓋然性はない。よって、吉田寮自治会としては2015年秋季も通常通り、入寮募集を行う。

2、一方的文書通知と京大HPへの掲載は当事者との合意形成を軽んじる不適切な行為であり、撤回するべきである。

大学当局は回答文で、通知は(決定ではなく)要請であるため、確約には反しないとしている。しかし、7月28日の通知は大学当局と寮自治会の協議の中で提案されたものではなく、今後の協議を前提としたものでもなかった。文言上では「要請」だとしても、大学当局としての結論を一方的に突きつけるものであったことには相違ない。また強い発言力をもつ大学当局が当事者を無視して大学のHP上で当局の見解や主張を一方的に発表することは、当事者と合意されていない当局の主張を既定路線化(実際には決定していないことがあたかも決定事項のように取られること)することにつながりかねない。実際に数多くのメディアで吉田寮の入寮募集停止や廃寮化が決定したといったデマが流布された。

こうした点から通告やHP掲載は当事者との合意形成を重んじる方法とは言えず、不適切である。

尚、回答文ではHP掲載について、「要請を京都大学の学生や教職員に理解してもらうため」と説明している。しかし、何より実際に寮で生活している当事者との一切の議論や合意形成を欠いたまま、当局の一方的見解や主張を「(寮外の)学生や教職員に理解してもらう」というのは、あまりに当事者の存在を軽視しており問題である。また、寮自治会と大学当局とのこれまでの議論内容や吉田寮の老朽化対策についてより広く周知する必要があると言うならば、まずは当事者とその方法や内容を確認するべきであるし、入寮募集停止要請を伴う必要はない筈である。

以上の観点から、寮自治会としては改めて通告とHP掲載に強く抗議し、これらの撤回を求める。

3、吉田寮に関する議論は、あらゆる当事者が参加できる、公開の場で行われるべきである。

吉田寮自治会が今回の通告及び吉田寮の老朽化対策に関して団体交渉をもつことを要求したのに対して、回答文には以下のようにある。

「大学当局としては、今後、吉田寮自治会と対話を進めていく必要があると考えており、話し合いをより実りあるものとするために、学生側・大学側双方5人程度の代表者による具体的かつ建設的な話し合いができる円卓会議を設置し、十分な議論をしていくことを提案します。」

吉田寮の運営や老朽化対策に関して寮自治会と大学当局は、公開され、全ての当事者が参加できる話し合いの場(団体交渉)で問題解決を図ってきた。これは、実際に吉田寮で活動している当事者こそが、寮運営に関する第一義的な自己決定権をもつという自治原則の上で、強い権力をもつ京大当局がこれを侵して当事者との合意なく物事を決定しないようにするためである。また吉田寮の当事者は多様な立場性をもつ多数の人々によって構成されており、開かれた話し合いの場でなければそれら全ての関心有る人が議論に参加できない。人数制限によって議論に参加したい当事者を排除することは、健全な話し合いの方法とは言い難い。

また例えば吉田寮西寮(新棟)の増築や寮食堂の補修は、団体交渉での議論と合意形成により実現したのであり、団交において「具体的かつ建設的な話し合い」が成されたのである。実際2015年3月9日まで、寮自治会と学生担当副学長を責任主体とする大学当局とは、団体交渉の場で現棟の老朽化対策について議論を進めてきた。

寮自治会は、早期に団体交渉を行うことこそが、老朽化対策を着実に進める手段であると考える。勿論、団体交渉を前提にその準備段階として、双方の意見を確認し整理する場(予備折衝)を設けることはこれまでも行われてきたし、今回も可能である。

声明文に関連する公開質問状

山極壽一 総長

杉万俊夫 学生担当理事・副学長 殿

声明文の「3」に述べたような団体交渉の経緯や意義は、大学当局とも既に幾度も共有されてきた。2015年2月に再締結された確約においても「吉田寮の要求に応じて団体交渉を開くこと」が約束されている。その上で今回大学当局から「円卓会議」なる提案があったが、あまりに提案の内容や意図が不明瞭であり、従来継続してきた団体交渉とは異なる議論方法を提案する理由も分からず、検討に付すことが出来ない。

したがって以下の5点について、大学当局に質問する。

1 「円卓会議」とはどのような性質をもった会議体であり、どのような議題について何をすることを想定しているのか。また、団体交渉とはどのような関係にあるのか。

2 「円卓会議」は「双方5人程度の代表者による」話し合いを行うとあり、先に述べたように当事者の議論への参加を著しく制限する問題がある。自治会としては自由に参加できる公開の議論の場を開くべきだと考えるが、当局としてはどのように考えているのか。

3 大学当局側の「5人程度の代表者」とは具体的にどの役職を指すのか。

4 従来寮自治会と大学当局が確約団交体制に則り具体的な議論を行なってきたのに対して、敢えて異なる議論方法を提案する理由は何か。

5 自治会としては、議論や合意形成は全当事者が参加できる公開の場で行うべきだと考える。大学当局は団体交渉や団体交渉に向けた予備折衝(双方の主張を整理する場)に応じるつもりがあるのか。