2016年3月2日に京都大学当局に対して出した抗議声明文

2016年3月2日

2016年3月2日

京都大学総長 山極壽一 殿

学生担当理事・副学長 川添信介 殿

吉田寮自治会

抗議文

2016年2月29日、学生担当理事・副学長川添信介より「吉田寮の入寮者募集について(通知)」が通告された。同年3月1日には京都大学ホームページ上でこの要請と同じ内容の文章が、総長山極壽一の名義で掲載された1。また、各寮の概要を紹介するページ2では、入寮募集に関する情報がすべて削除され、吉田寮に関する特記項目として今回の要請のことも記載された。我々、吉田寮自治会は大学当局による一方的な募集停止通告、およびホームページ上での掲載、ホームページの改変に強く抗議し、以下のとおり表明する。

1. 吉田寮自治会は今回の大学当局の通告を受け入れることは決してできない

2. 大学当局は、大学公式ホームページ上における通告の掲載をただちに撤回すべきである

3. 大学当局は、今回改変された各寮紹介のページを元に戻し、各寮の要求に従って募集要項を掲載するべきである

4. 大学当局は今回の文書通告を取り下げ、吉田寮自治会との団体交渉をもち、吉田寮現棟の老朽化対策について話し合うべきである

5. 吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施する

以下、理由を説明する。

今回の通告にもあるように、2015年7月28日の通告「吉田寮の入寮者募集について」でも吉田寮自治会に対して入寮募集停止は要請されていた。しかし、その後、7月29日に行われた抗議行動および7月30日に行われた団体交渉において、杉万俊夫副学長(当時)はこの一方的な募集停止通告は不当なものであったと認めている。その内容は150729確約、150730確約において明文化されている。さらに、8月4日に吉田寮自治会は抗議声明文を出し、入寮募集停止要請に対して反論した3。さらに同日、吉田寮自治会は総長山極壽一に対し、団体交渉を開催するよう公開質問状を提出した4。これについて一度は大学当局から回答があったものの、再度提出した公開質問状5については未だに返答がない。今回の通告はこうした一連の動きを全く反映せず、当事者の意見を全く無視した大学当局には憤りを覚える。ましてや、今回の募集停止の通知は春季の入寮選考を一週間後に控えた時に突如通達された。これから寮を切実に必要とする経済的に困窮した学生に対して、あまりに不誠実であり、福利厚生施設を自治自主管理する寮自治会として到底容認出来ない。すぐに通知を撤回し、ホームページ掲載および改悪を取りやめるように要求する。

さて、今回の通告でも大学当局は、入寮募集の停止を要請する根拠として、吉田寮現棟の老朽化を挙げている。今回は具体的に「平成17年度及び平成24年度に実施した耐震診断調査」を根拠としている。これは一般財団法人建築研究協会による耐震調査のことを指していると思われる。確かにその調査報告の中では、吉田寮現棟は耐震性能が不足していると指摘されている。しかし同時に、耐震補強・構造補強を実施すれば、「現状の耐久壁を有効に利用し、」「再利用を考えるものと判断できる」とあり、現棟を補修することが現実的な手段であることも述べられている。 事実2007年には本調査に基づく現棟の補修案が検討されており、住人が住み続けながら、寮舎を部分的・段階的に補修できることが立証されている。

大学当局がこの調査報告に基づいて、吉田寮現棟の安全性を一刻も早く確保したいと考えるなら、やるべきことは入寮募集の停止を要請することなどではない。大学当局が入寮募集という全く関係のない話題を持ち出すことで、議論がより複雑になり、結局老朽化対策が遅れてしまう。それよりも、すぐさま吉田寮自治会との現棟補修に向けた議論を再開することが、老朽化対策の第一歩である。既に吉田寮自治会は大学当局に対して現棟補修を再三要求している。2015年2月12日には、杉万副学長(当時)と17項目の確約を締結したが、その中の項目10、11には、現棟の老朽化対策として現棟補修が有効な手段であると明記されている。現棟を大規模補修することは、既に吉田寮自治会と大学当局とで合意されていることである6。加えて、吉田寮自治会は現棟補修の具体案として、京都市条例「京都市歴史的建造物の保存及び活用に関する条例」を活用することを提案してきた。この案をベースにして、現棟補修に向けた団体交渉を開催するよう重ねて要求する。

最後に、吉田寮自治会は2016年春期入寮選考を予定通り実施することを宣言する。吉田寮の入退寮者選考権は歴史的に吉田寮自治会が担ってきた。そして、これからもそうである。寮生という当事者自らが入寮選考を行うのは、大学の審査にみられる実態に沿わない画一的な基準に基づく選別や排除を避けて、より入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考が出来るためである。また大学当局が入退寮者選考権を持つと、寮を追い出されるなど、大学当局から不当な弾圧を受ける危険性も高い。吉田寮自治会が入退寮者選考権を持つことは、これまでの確約等に記されているように、大学当局との間でも合意されてきたことである。今回のような大学当局による一方的な入寮募集停止の「通告」とHP掲載による既定路線化は、吉田寮自治会のもつ入退寮者選考権を剥奪しようとする行為である。吉田寮自治会はこうした行為を断じて許すことはできない。

1 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/about/events_news/office/kyoiku-suishin-gakusei-shien/kosei/news/2015/160301_1.html (京都大学公式ホームページ)

2 http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/education-campus/campus/habitation/dormitory.html (同上)

3 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/380/(吉田寮公式ホームページ)

4 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/384/ (同上)

5 https://www.yoshidaryo.org/archives/声明/391/(同上)

6なお、2015年には日本建築学会近畿支部、及び建築史学会が、総長山極寿一宛に、吉田寮現棟の保存活用を求める要望書を提出している。