京都大学当局による吉田寮現棟の建て替えを前提としたアンケートの実施 および記者説明会における発言の問題点について

京都大学当局による吉田寮現棟の建て替えを前提としたアンケートの実施および記者説明会における発言の問題点について

2026年8月5日

吉田寮自治会

 京大当局は7月28日、吉田寮現棟の建て替えを前提とした学生・教職員向けアンケートを実施することを発表した。また、翌7月29日には、現棟の建て替え方針に関する記者説明会を実施した。

 以下に、このアンケートおよび記者説明会における当局の発言の問題点を述べる。

 京大当局が4月14日に建て替え方針1を発表した際にも、吉田寮自治会は一方的な決定に強く抗議した2が、当局がそれを真摯に受けとめず、対話を再開しないまま建て替えを前提としたアンケートを実施して、建て替え方針の既定路線化を進めることは到底容認できない。

 当局は現棟の建て替えを前提としているが、そもそも現棟をどのように改修するかに関しては、実際に現棟を使用し寮運営を行ってきた当事者に多くの知見があり、現場を知らない大学当局の一部の役職者のみで建て替えと敷地転用を決定するのは不合理である。

 従来、現棟改修をめぐっては、長年にわたり大学当局と寮生など当事者が話し合いを積み重ね、現棟の歴史的価値や建築的価値を踏まえた大規模補修を行う方向で合意していた3。また、日本建築学会近畿支部および建築史学会より出された保存要望書では、学術的な見地から現棟の文化史的・建築学的価値が主張されている4。学内での話し合いの経緯を踏まえず、また学外からも建物の貴重さが指摘され社会的な関心も持たれるなか、現棟の実地調査やそれに基づく検討すら経ずに、建て替えありきの結論を出すことは独断専行の極みである。

 また、記者説明会で当局が言及した現棟の建て替えによる高層化については、「現棟は、その建築物としての歴史的経緯に配慮しつつ建て替える」という当局の方針にさえ整合していないのではないかという疑念を抱かざるをえない。

 吉田寮自治会としても、当局が現棟の耐震工事について全学への意見聴取を行うこと自体は否定しない。実際、現棟の耐震工事については、広く関係する人々が話し合い、内容を決定する必要があるだろう。

 しかしながら、実際に現棟を使用し寮運営を担ってきた吉田寮自治会と現棟の扱いについて対話することを拒みながら「全学の意見を聴取する」というのは、直接的な現場の当事者の意見を数ある意見のうちのひとつとして矮小化しようとするものに他ならず、悪質である。また、これまでの吉田寮自治会との対話で俎上にのった論点を全て無かったことにして、あたかも今議論が始まったかのように白々しくことを進めるのは、議論の進め方として不合理であり、これまでの議論の経過を把握していない人々に対して詐術的である。

 また、当局はアンケートの実施について発表した文章において、一切理由を説明せずに「転載・公表の禁止」を要請し、「本アンケートの趣旨、質問内容および選択肢を、SNS (X、Instagram、 TikTok、LINE等)、ブログ、掲示板などの外部メディアへ転載・公開することは固く禁止いたします」と述べているが、なぜ学外者からの検証を妨げようとするのか理解に苦しむ。記者説明会において、國府寛司学生担当理事が「一部でだまし討ちという意見があるとは承知している。そう言われる気持ちも分からなくはない」と述べた5ことに象徴されるように、当局としても不誠実な振る舞いをしている自覚があるからではないか。

 さらに、アンケートは建て替えを前提としていて、建て替えずに補修するという選択肢を提示しないなど、公平性を欠いているだけでなく、回答回数が1人1回に制限されており、個別の自由記述の意見に対して当局が応答することも約束されていないことから、アンケートを対話の代替と見なすことはできない。また、当局内でアンケートの内容がどのように検討され、実際の方針に反映されるかも全く不透明である。全学に意見を聞くとしても、意見を聞いたというアリバイ作り的かつ一方向的なアンケートで済ませるのではなく、2016年まで開かれていた副学長情報公開連絡会を再開するなどして、公開の場での対話の形式で行うべきである。

 記者説明会で國府寛司学生担当理事が、吉田寮自治会との「ねじれた関係は早急に解消すべきと思う」と述べた6こと自体は評価できるが、もし真にそう思うのであれば、当事者の声を無視した一方的な決定を推し進めるのは即刻やめるべきである。

 また今後、たとえ関係を正常化させようという動機に基づくにせよ、一方的な決定を行うことは断じて容認できないことを付言しておく。対話を抜きにした一方的な決定は、ねじれた関係をより一層ねじれさせる結果に終わるだけである。

 吉田寮自治会はあらためて京大当局に対し、4月14日に発出した「吉田寮現棟建替え・現棟建替えにより創出される敷地の活用方針について」を撤回するとともに、上述の問題を抱えたアンケートによる意見聴取を見直し、一刻も早く対話を再開することを要求する。


  1. 吉田寮現棟建替え・現棟建替えにより創出される敷地の活用方針について(京都大学)
    https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2026-04-14-1 ↩︎
  2. 「吉田寮現棟建替え・現棟建替えにより創出される敷地の活用方針について」に対する抗議声明(吉田寮自治会)
    https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/3995/ ↩︎
  3. 150212確約書
    https://www.yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/  ↩︎
  4. 日本建築学会近畿支部「京都大学吉田寮の保存活用に関する要望書」(2015年5月19日)https://www.aij.or.jp/request-form.html
    建築史学会「京都大学寄宿舎吉田寮の保存活用に関する要望書」(2015年11月25日)https://www.sahj.org/index.php?lang=jp&snd=7&trd=1 ↩︎
  5. 吉田寮の建て替え、和解案に反せず 京大が記者説明会で見解:朝日新聞
    https://digital.asahi.com/articles/ASV7Y4GFGV7YPLBJ001M.html ↩︎
  6. 京大・吉田寮 建て替え・敷地活用 「大学として意思決定」 「現棟」対応で説明会 /京都 – 毎日新聞
    https://mainichi.jp/univ/articles/20260730/ddl/k26/100/228000c ↩︎

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