2026年3月25日
吉田寮自治会
私たち吉田寮自治会は、113年の歴史をもつ吉田寮現棟から、2026年3月31日をもって一時的に退去します。しかし、これは吉田寮がなくなることを意味するわけでは決してありません。4月以降も、吉田寮自治会は新棟と食堂を拠点に吉田寮の自治・自主管理を続けるとともに、入寮募集も継続して行っていきます。
この度の一時退去は、2025年8月25日に大阪高等裁判所で締結された吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の和解に基づくものです。和解においては、被告の寮生が2025年度末で現棟から一時退去して代替宿舎に住むこと、大学当局が5年以内に現棟の耐震工事を完了させるよう努めること、および工事後にも在学している被告の寮生が再入居できることが決まりました。
和解に至るまでの裁判所における協議では、具体的な耐震工事の内容には踏み込まず、訴外で決定することとされました。このため、和解成立直後に私たちは大学当局に対し、速やかな耐震工事内容の検討と、寮自治会との交渉の再開を求めました1。
しかし、和解が成立して以降も大学当局は対話の再開を拒否し続けています。現棟耐震工事の内容についても全く話し合えておらず、工事計画策定の進捗状況も明らかにされていません。
元々、私たち吉田寮自治会と大学当局は、ともに学生の学ぶ権利を保障するという共通の目標に向けて、現棟の老朽化対策も含むさまざまな問題について対話を重ねてきました。しかし、2017年に突如、当局に一方的に対話を打ち切られ、裁判を起こされました。私たちは大学当局と認識や立場の相違があっても、対話により歩み寄ることができると信じて、話し合いの再開を求め続けてきましたが、裁判中は「裁判中であるから」という理由で対話を拒否されてきました。裁判が和解によって終わった今、当局には対話を拒否し続ける理由も無いはずであり、速やかに対話を再開するべきです。
私たち吉田寮自治会は、2006年に行われた現棟の耐震調査を踏まえて、今後も継続的に使用するためには補修が必要であるという結論に至り、大学当局と交渉を行った結果、2015年に当局と補修工事を行うことで合意しました。しかし2017年に突如その方針が当局により撤回され、退去を求めた訴訟が起こされました。今後も安心して利用できる寮をつくるために補修工事を行うことで合意したにもかかわらず、当局は裁判を起こすことでさらに老朽化を進ませました。2015年に交渉が打ち切られず、合意が履行されていれば、裁判に膨大な時間やお金を費やすこともなく、耐震性の向上はとっくに果たされていたはずです。
建物は利用する人がいて初めて建物としての価値を持ちます。吉田寮で113年にわたり居住してきた中で蓄積された知見をもつ私たちと話し合いを行うことによって、大学当局は工事をより早く、よりスムーズに実施することができ、未来の利用者にとってより使いやすい建物のあり方を構想することができるはずです。これからの吉田寮の運営についても同様です。しかしながら、現状は当局が吉田寮に関することについて対話という手段を避け、当事者を無視したやり方を強行し、結果として問題解決から遠ざかるという、両者が損をする形になっています。その最たる例が6年半に及んだ不毛な裁判でした。
吉田寮現棟のような木造建築物は鉄筋コンクリートの建造物とは異なり、適切に管理することで使用可能年数が大幅に伸びることが知られています。吉田寮現棟は、現存する日本最古の学生寮であり、歴史的・建築的な価値を有します。また長年にわたり自治寮として使用される中、より良い場のあり方を目指して試行錯誤する寮生らの営みや知見が積み重ねられてきたという歴史があり、その中には空間の使い方の慣習として、建物と結びつく形で継承されてきたものも少なくありません。今回耐震工事が行われるにあたって、私たちはこうした歴史的価値を尊重した補修工事をすることを強く求めます。
無論、耐震工事後の現棟の運営や福利厚生に関しても、当局が一方的に決定するべきではなく、当事者である寮自治会との協議が必要です。当局は2019年以降、吉田寮の自治のあり方を「責任ある自治とは言えない」と非難していますが、私たちは、どのような理念の下、それを実現するためのどのような自治運営を行ってきたかを応答し、根拠のない印象操作により一方的に運営のあり方を決めるのではなく、当事者間の協議により合意を目指すべきだと訴えてきました2。
当事者との対話を通じた意志決定は、時間がかかるものではありますが、その分短期的な利益に流されることなく、長期的に見てより良い結果を導くことができます。これまでにも、大学当局と吉田寮自治会との対話の中で、吉田寮新棟の建設が決まったり、食堂の耐震補修が実現されてきました。結果としてより多くの学生の福利厚生が保障されたり、文化的空間としての吉田寮、ひいては京都大学全体の価値を高めてきたともいえます。
以上の観点から私たちは、大学当局に対し、一刻も早く対話を再開して現棟耐震工事計画についての協議を始めること、およびそれに基づいて速やかに現棟の建築的・歴史的価値を尊重した補修を行うことを求めます。
- 2025年8月25日付 吉田寮自治会「吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の「和解」について」
(https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/3777/) ↩︎ - 2019年2月20日付 吉田寮自治会「吉田寮の未来のための私達の提案」
(https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/) ↩︎