2022年8月5日:現棟の老朽化対策に向けた話し合いの再開と 現棟の継続的補修を求める要求書

2022年8月5日

現棟の老朽化対策に向けた話し合いの再開と現棟の継続的補修を求める要求書

京都大学総長 湊 長博 殿
戦略調整、企画、学生、環境安全保健担当理事・副学長・プロボスト 村中 孝史 殿
男女共同参画、国際、渉外(基金・同窓会)担当理事・副学長 稲垣 恭子 殿
研究倫理、研究公正、研究規範担当理事・副学長 北村 隆行 殿
総務、労務、人事、危機管理担当理事 串田 俊巳 殿
国際渉外、海外同窓会担当理事 久能 祐子 殿
オープンイノベーション担当理事 澤田 拓子 殿
研究、評価担当理事・副学長 時任 宣博 殿
広報、地域貢献・社会発信担当理事 野崎 治子 殿
教育、情報、図書館担当理事・副学長 平島 崇男 殿
財務、施設、入試、産官学連携担当理事・副学長 村上 章 殿

2022年8月5日

吉田寮自治会

 私たち吉田寮自治会は、これまで吉田寮現棟の老朽化対策を希求し、大学当局に対して具体的な現棟改修案を提出して、改修方法について協議することを求めてきました。2015年に杉万俊夫学生担当理事(当時)は、担当理事として寮自治会の現棟補修案に賛同し、両者は具体的な補修方法の議論を進める段階に至っていました。しかしその後京都大学役員会は、寮自治会との話し合いを一方的に打ち切り、寮自治会の現棟補修案に対して約7年間にわたり「検討中」という以外一切のレスポンスを行わなくなりました。この状況は現在も続いており、当局は2019年2月の文書「吉田寮の今後のあり方について」で、現棟について「将来、安全確保に加えて収容定員の増加や設備の充実等を図りうる措置を講じた上で、学生寄宿舎として供用する」と述べたのみで、現棟改修に向けた具体的な代案は一切提示されていません。

 私たちは一貫して、現棟老朽化対策のための協議の再開を求めていますが、同時に抜本的な老朽化対策が行われるまでの間、現棟の適切な維持管理を行うことも必要不可欠だと考えています。従来、現棟の継続的な小中規模の補修・メンテナンスは、吉田寮自治会と大学当局との協議に基づいて、基本的には大学の経済的負担により行われてきました。これは吉田寮が京都大学の福利厚生施設であるためです。大学の負う補修義務は確約書においても明記されています。

 ところが2018年秋以降、京都大学はほぼ全ての現棟の小中規模の補修を拒否するようになりました。2021年には教育推進学生支援部厚生課窓口を通じて、”現棟については建物の躯体整備を含め補修を行わない”という内容の見解が示され、寮自治会として即時抗議の意思を表明しています。直近では2022年7月16日にも、現棟の居住棟の屋根の損傷を修繕するよう改めて要望しましたが、「修繕は行わない」との回答を受けました。

 吉田寮現棟は京都大学の重要な福利厚生施設であり、また歴史的建築的にも大きな価値をもつ建物でもあります。日本建築学会近畿支部・建築史学会の現棟保存活用要望書をはじめ、現棟の改修方法や今後のあり方には学内外の多くの人々も関心を寄せています。

 大学が現棟の修繕やメンテナンスを行わず、また抜本的老朽化対策を先延ばしにし続けることは、寮生の生活環境を脅かすのと同時に、現棟の老朽化を進行させ、将来的な補修存続を困難にすることを意味します。本来であればとうに実行できていてもおかしくない、寮自治会の現棟改修案を無視し、自らはなんら具体的な改修計画を示さず、その上継続的な補修義務すらを放棄して、結果現棟の存続可能性が失われるようなことになれば、これは京都大学として重大な責任問題ではないでしょうか。またこれは、大学当局自身が2012年から2015年の確約において現棟の建築的価値を認め、前述の「吉田寮の今後のありかたについて」でも「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮する」と明言したこととも明らかに矛盾するのではないでしょうか。

 私たちは、京都大学当局が、吉田寮自治会からの現棟補修の要望を頑なに拒否していることに抗議し、以下2点を改めて要求します。8月12日までに文書で回答してください。

  1. 現棟・寮食堂明け渡し請求訴訟を取り下げ、現棟老朽化対策に向けた吉田寮自治会との協議を再開すること。
  2. 抜本的な老朽化対策を行うまでの間、吉田寮自治会と協力して、継続的に適切な現棟の修繕を実施すること。

 なお大学当局がこれらを拒否し続ける以上、私たち吉田寮自治会は、吉田寮に居住している立場として、また吉田寮の運営と維持管理に責任をもつ立場として、現棟の生活環境を維持し、また歴史的建築的価値を有する現棟の将来的な補修存続の可能性を絶たないために、できうる限りで、独自に現棟の修繕・応急処置(自力補修)を行わざるを得ないと考えています。

 現在別紙「吉田寮現棟の補修に関する京大役員会への要求書提出と現棟屋根の自力補修計画について」のとおり、現棟居住棟の屋根の修繕を業者に依頼することを予定しています。繰り返しますが本来であれば大学の経済的負担により行われるべき修繕であり、寮自治会としてもこのように規模の大きい補修を寮自治会の負担において行わざるを得ないことは遺憾でなりません。しかし、吉田寮と吉田寮現棟の未来が役員会により全く不透明な状態に置かれている中、みすみす現棟の老朽化を看過することはできません。

 大学当局が現在の方針を見直し、現棟老朽化対策や継続的補修について前向きな対応を行うことを切に願います。なお自力補修に関してなにがしかの意見がある場合は、相当する合理的な理由と代替措置を提示することを求めます。