2021年8月26日の吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の開催並びに、その報告集会(対面形式)の中止について

吉田寮に関心を持っていただいている全てのみなさま

【吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟について】

 吉田寮は京都大学の学生寮であり、現在およそ120人の寮生が住んでいます。ご存知の方も多いかもしれませんが、吉田寮で居住し生活する寮生に対して、2017年12月に京大当局は一方的に「在寮期限」を定め、寮生の追い出しや学生寮での活動制限を画策してきました。2019年4月に京大当局は、当時吉田寮に居住していた京都大学の学生およそ100人のうち20名のみを被告とし、住居としている寮の建物から追い出すことを目的とした明渡請求訴訟を提訴しました(2021年3月の追加提訴により、現在の被告は43名となった)。この裁判は、2020年にはコロナ禍による口頭弁論延期を挟みながら現在も続いており、2021年8月26日には第8回目の口頭弁論が京都地裁にて行われます。

 一方、2020年以降は新型コロナウイルス感染症という未曾有の感染症が世界的に流行しており、まだ画期的な治療法などは確立されていません。2021年8月25日現在では、京都府内を含む各地で感染者数は過去最大を更新し続けており、医療資源の逼迫により新型コロナウイルス感染者を含む体調不良者は十分な医療を受けられず、救急医療などの医療資源にアクセスできず、症状が悪化したり亡くなる人も増えています。

 コロナ禍が引き起こした状況として、感染流行阻止のためとは言え、経営活動が縮小され、働き口が無くなって収入が減った人達が増えています。この状況に対して十分な経済保障が為されているとは言えず、貧困層が増えたり、危険を承知で感染の恐れのある労働現場に行かなければいけない人達も大勢います。

 それだけではなく、人と直接会うこと、話すことは控えるべきだとされてきた状況で孤立したり、日々の楽しみを「不要不急」だと言われ自粛している人達も少なくありません。

 なぜ、この状況で、この期に及んでまだ、「寮生を住居から追い出すための裁判」を京都大学当局は続けているのでしょうか?

未曾有の感染症流行下で住居から追い出されるかもしれない、勉学・研究を継続できなくなるかもしれないと不安を抱える学生を意図的に作り出すことについて、その悪質さや危険性を、京都大学は本当に分かっているのでしょうか。

 私達は元より、学生を寮から追い出すことを目的としたこの明渡請求訴訟を批判し、取り下げを要求してきました。現棟の老朽化対策や、現在の吉田寮の在り方について仮に京大当局が希望する変更点があるのなら、その旨をまず寮に居住する当事者である吉田寮自治会と話し合って進展させるように、一貫して要求してきました。

 我々は引き続き、この吉田寮・現棟明渡請求訴訟の取り下げ、吉田寮自治会と話し合うことを京大当局に対して求めます。そして改めて、感染症流行下で寮生の住居を奪うことを目的としたこの危険な裁判が、即刻中止されることを望みます。

裁判所が、口頭弁論の中止や延期をすれば良いのではないかと思われるかもしれません。しかし、2020年3月からの半年間、新型コロナウイルス感染症流行のために口頭弁論が中止となった期間が実際にありましたが、その間も原告・被告間の書面のやり取りによって裁判は進行し続けるということが分かりました。口頭弁論なき裁判の進行とは、吉田寮についのて扱いがよりいっそうの密室で進んでしまうことを意味しています。よって、今の状況おいて必要なのは、ただ口頭弁論の中止や延期だけではなく、裁判自体の取り下げなのです。

【8月26日口頭弁論の報告集会開催について】

 吉田寮は、京都大学学生の福利厚生施設としてだけではなく、広く学内外から人が集い、協力して自治活動を行う地域のコミュニティスペースとしての役割も担ってきました。

 2017年12月の京大当局による寮生追い出しの「在寮期限」通告以降、吉田寮での自治活動を共に担ってきてくれた人達や、新たに関心を持ってくれた人達がたくさん、吉田寮の存続を願って取り組んだり支援をしてきてくれました。

 現在、京大当局に起こされている現棟・食堂明渡請求訴訟は、当事者を原告(京大当局)と被告(寮生・元寮生43名)に限定し、当事者外とされた人達からの関わりを難しくしたり、裁判で行われていることについての情報を遮断してしまう性質のものです。

 私達は、このように吉田寮に関する当事者を「訴訟的当事者」に限定されてしまう状況に抗い、裁判で提出された書面や進行状況に関する情報を広く発信し続けるために、毎回の口頭弁論期日の度に、裁判報告集会を開催して来ました。

 今回の裁判報告集会は、対面にて開催する予定でした。長引く感染症流行の中で、吉田寮への関心が薄れていく現状に抗い、改めて裁判そのものの不当性をアピールする契機とするためにも、吉田寮自治会では開催に向けて独自のガイドライン作成など、慎重に準備を重ねてきました。しかし、新型株の流行、京都府の医療現場の現状などが急速に悪化していることを鑑み、今回の対面集会は中止し、引き続きオンライン集会のみの開催を行うことを決定いたしました。中止の決定に至った経緯、理由などは、下に詳細を記します。

【開催形態について】

●オンライン集会(動画形式)

8月26日(木)13時公開(1時間半程度)

形式:Youtube動画(URL: https://youtu.be/uMZI3gzugmA)

なお、上記動画URLは数週間残りますので、その間はいつでも視聴可能です。

●オンライン交流会

8月26日(木)19時から

形式:ZOOM(各自、ZOOMのミーティングルームに参加できる環境をご準備していただきますようお願いします)

途中入退場自由です。

今回の集会も、対面開催は行わずオンライン形式の集会のみを開催します。

感染症流行下において、人と人がどのように繋がるか、コミュニケーションを行うかは、私達の誰しもが直面し悩んでいる課題です。

 直接空間を共有しないオンラインの形式ならどうでしょうか? 確かに、人が集まる場所を特定の地域に限定しないことにより、コロナ禍以前いつも開催場所としていた吉田寮や京都市内から遠隔の地域にいる人達や、外出が困難な人達と、寮内や京都市近郊に住む人達との間には、参加にかかる条件が同じという利点はあります。しかしながら、オンラインによる集会や交流会への参加にかかるハードルは、やはり人ぞれぞれに違います。帯域幅の広いネット環境を用意できる経済力や、落ち着いて参加できる住環境を持っているかどうかによって、参加者が選別されてしまいます。また、オンライン企画の参加者にとっては、人と直接遭わずに住む安心した環境かもしれませんが、その環境を用意するための、機材を作る工場労働者、通信回線を作り工事をする整備士などに感染リスクを外部化しているだけかもしれません。

 対面集会を開催する際には、主催者や参加者に感染リスクが伴います。

吉田寮では、2020年4月より感染症対策の一環として、寮生の手洗い消毒、マスク着用、寮内で感染者が発生した場合の連絡体制やロックダウンに備えた準備を継続してきました。また、公開イベントや寮外からの来寮を停止していました。これらの感染症対策によって、2021年8月現在まで、吉田寮内からの新型コロナウイルス感染者は2021年1月に発生した1名に抑えられましたが、同時に、吉田寮の情報を寮外へ伝える力が弱くなり、関心を持って吉田寮を支えてきてくれていた多くの人達に対して寮に関わりづらくさせてしまう効果もありました。この状況を危惧し、2021年6月から公開イベントの受け入れ再開・寮外生の来寮停止の緩和といった方針を寮自治会として決めましたが、昨今また変異株の隆盛により、感染症のリスクは上がっています。対面集会については、当日まで中止の可能性があると宣伝して来ました。

 8月25日夜の段階で吉田寮内から感染者が出ていないこと、また残念ながら8月26日の裁判が行われることより、吉田寮自治会は対面での裁判集会を開催する予定でした。

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、寮自治会が主催する裁判報告集会について、「吉田寮自治会感染症対策ガイドライン」に基づき、次のいずれかに該当する場合は、原則として中止または延期の判断を行うものとしていました。

・吉田寮生が新型コロナ陽性、もしくは濃厚接触者となった場合

・吉田寮生に発熱などの体調不良者が出た場合

 今回、対面集会の開催中止の決断に至った理由として、京都府を含む日本国内での新型コロナウイルスの感染拡大が、新株も伴って急速に進行していることがあげられます。先日京都府医師会を筆頭に、京都府の新型コロナウイルス感染症重症患者受入医療機関が連名にて声明を発表しました。

新型コロナウイルス感染症拡大による医療のひっ迫について

京大医学部附属病院長 “すでに医療崩壊” 強い危機感示す

 本声明において、京都府が医療崩壊に陥ろうとしている現状が、改めて訴えられています。新型コロナウイルス感染症患者の入院がままならなくなるだけでなく、通常医療が逼迫されているのが現在の京都府の現状です。スーパーやデパートといった、日頃の買い物でさえも控えてほしい、との声明が病院連盟から発されている現状、吉田寮が対面集会を本当に行うべきであるかどうかについて、寮自治会で直前まで検討が行われていました。

 先述の通り、対面での集会にはオンラインの集会では達成し得ない事項が多くあります。しかし、こうした現状を踏まえて総合的に判断した結果、対面集会を中止することにしました。

 対面集会を楽しみにしていただいていた方々には、大変申し訳ありません。そして、当日というタイミングで中止を発表したことについても、大変申し訳ないと考えています。同時に、吉田寮自治会としても対面集会を開催できないことを、大変残念に思います。感染症の流行が落ち着いた折に、改めて対面集会を開催すること、そして、集会に多くの方々が来てくださることを、心から楽しみにしております。

 なお、本日は、この状況下でなお裁判を続ける京大当局への抗議をこめて、京都大学本部構内時計台前で、テントを出し、抗議・情宣活動をいつも通り行います。こちらでは、屋外でオンライン集会の上映会も行います。

2021年8月26日 吉田寮自治会