カテゴリー: 声明

  • 「「吉田寮自治会」名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    國府 寛司 殿

    吉田寮自治会
    2025年9月5日

    「「吉田寮自治会」名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長國府寛司氏は2025年9月2日、京都大学公式HP上において「「吉田寮自治会」名義の入寮募集について」なる文書1(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、吉田寮自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において國府理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書2において、「吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると吉田寮自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て吉田寮自治会を非難するのは妥当ではない。

     その上、吉田寮自治会は、2019年に現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った3。しかし大学当局はこうした提案をも却下し、一切の話し合いもないまま訴訟を起こし、現棟の老朽化対策については6年半に渡り棚上げにし続けてきた。すなわち寮生の「安全確保」を遅延させてきたのは、大学当局の方である。こうした点を無視した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     吉田寮自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と吉田寮自治会との間で結ばれた確約4に基づいて実施している。確約とは大学当局と吉田寮自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が吉田寮自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって吉田寮自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも吉田寮自治会が根拠なく入寮募集を実施しているかのような表現を用いているが、これは事実に即していない。

     また、吉田寮自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。必要のない訴訟により学生の生活を脅かしてきたのも、また確約にも明記された吉田寮現棟の補修をサボタージュして老朽化を促してきたのも、他ならぬ大学当局である。それにもかかわらず、吉田寮自治会に責任を転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (入寮することを「不法」と述べていることについて)

     2019年以降、吉田寮自治会は2015年竣工の吉田寮新棟(西寮)に限定して入寮募集を実施している。新棟は訴訟の対象にもなっておらず、入寮を「不法」と表現するのは根拠に欠ける。大学当局が強硬措置を正当化する理由としてきた「安全確保」の観点からも、少なくとも新棟への入寮は何ら問題ないはずである。

    (入寮募集の責任について)

     当該文書は、「不法」というワードによって吉田寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、吉田寮自治会は深く憂慮している。吉田寮自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

     大学当局が2019年に提起した吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、2025年8月、当局が現棟の耐震工事を行うという内容で和解が成立し、終結した。大学当局が当事者との対話なく強行的に物事を進めようとすることは、むしろ問題解決を遠ざけるということが、一連の経緯からも明らかである。

     吉田寮自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めることを強く求める。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。


    1.  https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2025-09-02  ↩︎
    2.  https://www.yoshidaryo.org/kakuyaku/  ↩︎
    3. 2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/ ↩︎
    4.  https://www.yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/ ↩︎
  • 京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解

    京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解

    吉田寮自治会は2025年8月25日付で「京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解」を発表しました。


    国立大学法人京都大学による文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の
    和解成立について」に対する吉田寮自治会の見解

    2025年8月25日
    吉田寮自治会

     国立大学法人京都大学を原告、一部の寮生・元寮生を被告とする吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、2025年8月25日、大阪高裁での和解協議の結果、双方の間で和解が成立しました。それを受けて京大当局は同日、公式HP上に文書「吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の和解成立について」を掲載しました[1]

     この文書において京大当局は、「①京大は吉田寮の老朽化を懸念していた、②それでも寮生が言うことを聞かなかった、③だからやむなく大学が寮生の提訴に踏み切った」という、これまで各種の文書で主張してきた論理構成に基づき、今回の和解が大学の「方針の実現に向けた大きな進展である」と述べています。

     しかしながら、こうした記述は、誤解を招く表現を多分に含んでおり、吉田寮自治会として認めがたいものであると考えています。以下にそれぞれの点における問題点について詳述します。

    ①の問題点:これまで現棟の老朽化問題に真摯に向き合ってきたのは、大学側ではなく、むしろ吉田寮側です。吉田寮自治会は、現棟の老朽化問題を重く受け止め、特に2000年代以降現棟の大規模補修を検討し、大学とも協議してきました。2015年2月の団体交渉では、「大学当局は本確約末尾に示す「吉田寮現棟(管理棟・居住棟)の建築的意義」を認め、その意義をできるかぎり損なわない補修の実現に向けて、今後も協議を続けていく」という確約[2]を再締結し、実際に具体的な補修案についての協議へ進んでいました。

    ②の問題点:しかし2015年、それまで積み上げられてきた現棟老朽化対策に向けた団体交渉が、大学当局によって一方的に打ち切られました。その後も、吉田寮自治会は現棟補修のための対話の再開を繰り返し求めてきました。2018年7月の少人数交渉では寮自治会から従来提示してきた補修案に加え一部建て替え・増棟も含む具体的な改修案を複数提示し、川添信介・学生担当理事(当時)は「検討する」と述べました。しかしその後6年間、大学は一切の応答をしていません

    ③の問題点:訴訟が提起される約2ヶ月前、2019年2月20日に吉田寮自治会は「吉田寮の未来のための私たちの提案」[3]を発出し、現棟からの条件付き退去を提案し、話し合いの再開を求めました。その提案を大学の基本方針に完全には従っていないという理由だけで却下し、一切の話し合いを拒んでおきながら、このように他になすすべなく提訴に至ったかのように記述するのは不当です。

     和解成立の場では、大阪高裁の担当の裁判官からも「これからはお互いに相手の言い分にも耳を傾けて一つ一つ解決していってほしい」旨の発言がありました。実際に和解が成立した今、私たち吉田寮自治会は京大当局に対し、自身が過去に設定したストーリーに固執するのではなく、目の前の寮生に真摯に向き合って、現棟補修や今後の吉田寮のあり方についての対話再開のテーブルにつくことを、改めて求めます[4]


    [1] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2025-08-25

    [2]  「120212確約」(https://www.yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/)

    [3] https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

    [4] これらの吉田寮自治会の立場は、私たちが8月25日に発表した声明「吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の「和解」について」(https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/3777/)に詳述しています。

  • 吉田寮裁判終結を受けてのオンライン署名開始のお知らせ

    2025年8月25日より、Change.orgによるオンライン署名活動「吉田寮の自治と歴史的建築を未来へ! 和解した今こそ対話の再開を!」を開始しました。

    本日、ついに吉田寮生と京都大学の6年半に及ぶ裁判が和解によって終わりました。
    しかし、未解決の問題が山積みです。
    (詳しくはこちらの声明をご覧ください)
    吉田寮自治会は和解を契機として新たに署名を開始し、これからの吉田寮のために活動を続けていきます。
    そのために、皆さまの声が必要です。
    是非とも署名・拡散へのご協力をお願いいたします。

    ★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
    署名はこちらから(Change.org署名ページ)

    https://www.change.org/SaveYoshidaryo

    ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆

    吉田寮の自治と歴史的建築を未来へ! 和解した今こそ対話の再開を!

     みなさんこんにちは!

     私たちは京都大学吉田寮に暮らす寮生です。2025年8月25日、吉田寮生と京都大学との6年半に及ぶ裁判が、和解によって終わりました。 

     このたび、裁判の争点となっていた部分に関しては結論に至ったものの、依然として多くの問題が未解決のまま残されており、今後も解決に向けて取り組んでいく必要があります。

     吉田寮は、学生が低廉な家賃で住むことのできる福利厚生施設であり、様々な人が交流できる文化スペースでもあります。そして、その土壌となってきた100年以上の歴史的価値のある吉田寮現棟をこれからの未来へつなげていくために、私たちは京都大学執行部に以下のことを求めます。

    1. 歴代の確約とこのたびの和解の趣旨に基づいて、吉田寮自治会など当事者との話し合いを速やかに再開すること
    2. 吉田寮現棟の耐震工事については、確約にのっとり建築的・歴史的価値を尊重する補修を速やかに実施すること

    2025年8月25日 吉田寮自治会

    吉田寮の現在

     吉田寮は1913年から続く、現存する日本最古の学生自治寮であり、現在では現棟(1913年建造)と新棟(2015年建造)、そして共有スペースとしての食堂(1886年建造、2015年大規模補修完了)におよそ120人の寮生が暮らしています。

     安価な家賃で住むことができ、人と人とのつながりを創発する吉田寮は、112年の歴史を経た現在、年齢、ジェンダーなど性のあり方、国籍も様々な人びとが共に暮らしており、京都大学全体の福利厚生の場として機能しています。

     また、「開かれた場」として、寮内や大学といった垣根を越えた交流があり、特に吉田寮食堂は、日常の歓談から芸術表現や学生・市民の学びまで、寮内外の人びとが多様な活動を行うユニークなコミュニティスペースとして活用されてきました。

     こうした吉田寮の重要な意義は、「自治」によって成り立っています。

    「自分たちのことを自分たちで責任をもって決める」

    吉田寮は自治寮であり、寮生を中心とした寮に関わる人びとが、自主管理・運営を行ってきました。それゆえに、場にかかわる人びとのニーズやアイディアが反映された自由で柔軟な運営が可能となってきたのです。

     そして吉田寮のあり方について京大執行部と寮自治会とで意見が異なる場合も、そのつど公開の場での話し合い(団体交渉)を行い約束(確約)を交わすことで、合意形成を図ってきました。例えば、2015年には食堂で活動する様々な人びとに開かれたかたちで行われた団体交渉によって確約が結ばれ、食堂の大規模補修と新棟の建設が実現されました。

     築100年を越える現棟の老朽化についても、寮自治会から改修案を出し、解決に向けた話し合いを重ねてきました。

     こうした歩みの中で築かれてきた「自治」は、大学との確約に基づいて成り立ってきたものであり、吉田寮が本来の姿として担ってきた正当な権利であり責務にほかなりません。

     しかし京大執行部は2015年10月以降、寮自治会との話し合いを拒み、2017年12月には突如、新入寮生の募集停止と既寮生の全員退去を一方的に通告しました。これらは、それまで吉田寮と大学とが結んできた数多くの合意を全く無視したものでした。また、通告の理由は現棟の老朽化であったにもかかわらず、新棟や耐震補修を終えた食堂からの立ち退きも迫るなど、矛盾に溢れていました。

     さらに京大執行部は、現棟と食堂の明け渡しを求めて吉田寮生を提訴するという強硬手段を取ります。2019年2月に幕を開けたこの裁判は6年半にもわたり、2025年8月に大阪高等裁判所における和解に双方が合意することをもって終結しました。

    この和解では主に、

    1. 京都大学は速やかに吉田寮現棟の耐震工事を行い、その間被告寮生は一時的に現棟から退去すること
    2. 吉田寮食堂の使用(イベント開催など)は禁止されないこと

    が確認されました。

     一方、現棟の耐震工事の内容や、耐震工事後の現棟を含む吉田寮の今後のあり方などについては、裁判所で取り決められる性質のものではなく、今後の大きな課題です。

    私たちが目指すこと①:対話の再開

     寮自治会は一貫して、裁判を取り下げ当事者との話し合いを再開することを、京大執行部に求めてきました。執行部は「寮生との対話は建設的でない」と言って強引に法的措置を進めてきましたが、実際にはこの6年半は、ただ不毛な裁判に時間やお金や労力が費やされ、肝心の、現棟の老朽化対策をはじめとする具体的な課題は放置され続けました。

     この6年半という歳月は「当事者を無視した強硬措置は、何ら問題解決に繋がらない」ことを如実に物語っています。

     裁判は和解という形で終結しましたが、吉田寮の今後をどうするかは、これから決めていかなくてはなりません。

     今こそ京都大学執行部は、話し合いを通じた問題解決という、寮生たちや歴代の執行部が丁寧に積み重ねてきたあり方に立ち返り、吉田寮自治会との話し合いを再開すべきです。

    私たちが目指すこと②:建築的・歴史的価値を尊重した速やかな現棟の耐震工事

     和解においては吉田寮現棟の耐震工事の具体的な内容が定められていません。

     1913年建造の吉田寮現棟は建築的にも非常に貴重な歴史的建造物であり、日本建築学会近畿支部や建築史学会から保全活用を求める要望書が京都大学に提出されています。

     これまでの確約においても、建築的意義を尊重した補修に向けて話し合いを続けることが約束されており、2019年に京都大学が発出した文章でも「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮する」と明記されています。

     しかし和解で約束された「耐震工事」には、補修だけでなく建て替え工事の可能性も含まれています。私たちが強く要求しなければ歴史的経緯や空間的・構造的な特長が無視され、現状とは大きく異なる構造の建物になってしまいかねません。

     耐震工事にともなう福利厚生の縮小を最小限にとどめるためにも、建て替え工事ではなく、工事期間が短期間で済む補修こそが最適な解決策です。

     工事後の現棟を福利厚生、建築・歴史的価値、様々な側面からより望ましいものにするために、耐震工事のプロセスを京大執行部の一存ではなく、きちんと私たちと話し合って合意の上で決めることを求めます。

    これからの吉田寮へ

     「安心して学問に励む」「多様なバックグラウンドをもつ人びとが交流する」、こうした吉田寮の重要な意義と性質は、話し合いを根幹とする自治によって培われてきたものです。

     競争が激化し、社会の各所で管理強化が進む一方、システムの綻びに起因する問題が様々な次元で噴出する現代において、対話と自治の可能性に注目が集まっています。

     吉田寮の意義は、単に歴史的な建築物があることや長く続いてきたことには決して留まりません。対話により多様な意見、アイディアが日々生まれ交わされる自治寮である吉田寮は、これからの世界を構想する一つの実験の場でもあるのです。

     私たちはこの吉田寮の可能性を未来につなげるために、和解成立を好機として、京都大学執行部が速やかに話し合いを再開することを求めます。

     まずはぜひ、この署名に賛同してください。そして皆さんの近くの人びとへ、この署名と私たちの存在を伝えてください。

     そしてぜひ吉田寮についてもっと知ってください。皆さん自身がどう感じるか、京都大学に何を思うか、吉田寮の今後についてどう考えるのか。私たちは皆さんと一緒に話し合い仲間になるのを楽しみにしています。

     ぜひ遊びに来てください。吉田寮で会いましょう!
     最新の情報は吉田寮公式HP(https://www.yoshidaryo.org/)にてご確認ください!

  • 吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の「和解」について

    2025/10/21追記: 
    本声明文につきましては、発出の翌日(2025年8月26日)に、湊長博総長および國府寛司学生担当理事・副学長を宛先として、厚生課の窓口にて申し入れを行いました。なお、吉田寮自治会はその後も厚生課窓口を通じ、継続して話し合いの再開を要求しております。


    吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の「和解」について

    2025年8月25日
    吉田寮自治会

     2025年8月25日、吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟において、国立大学法人京都大学(原告)と吉田寮生(被告)との間で「和解」が成立しました。

     吉田寮自治会は京大執行部に対して、歴代の確約と本和解の趣旨に基づいて、吉田寮自治会が現棟を含む全ての建物を引き続き自主管理・自治運営することを認めること、吉田寮自治会など当事者との話し合いを速やかに再開すること、および吉田寮現棟耐震工事については建築的・歴史的価値を尊重する耐震改修を速やかに実施するとともに、その検討状況についても速やかに公開すること、を強く求めます。

    1、和解の内容と、私たちが和解を選択した理由

     国立大学法人京都大学(以下京大当局)との間で結ばれた和解の大まかな内容は以下の通りです。

    1、京大当局が速やかに吉田寮現棟の耐震工事を行い、遅くとも5年以内に工事を完了することに努める。そのために被告寮生が2026年3月31日を期限として現棟から一時的に退去する。現寮生の被告は、おおむね現在と同条件で耐震工事後の吉田寮現棟に再入居できる。

    2、2015年に大規模補修が完了している吉田寮食堂は、現棟耐震工事の対象に含めない。また明け渡しに伴って居住を目的とした占有はしない。ただし、イベント開催など居住以外の使用は禁止されない。

     和解では、吉田寮現棟(以下現棟)の耐震工事の内容や今後の吉田寮の運営については何ら新たなことは定められておらず、継続的な協議が必要です。また被告の中でも入寮時期や学籍区分による差別化が行われたことなど、十分とは言えない部分もあります。そのような不確実性を残す中での現棟の明け渡しは苦渋の選択ではありますが、私たちは以下に述べる観点から「和解」を決断しました。

     私たちは、吉田寮の意義は主に以下2点にあると考えます1

    A、経済的困難をはじめ、あらゆる切実な事情を持つ学生のための福利厚生施設

    B、豊かな自治が行われ多様な人々が集い交わる場

     「A」については、万人が持つ「教育を受ける権利」を保障するものであり、京都大学においても決して軽視してはならないものです。

     また「B」については、京都大学が基本理念2に掲げる「地域や社会に対して開かれた大学」という趣旨に明らかに通じるものです。

     私たちは、「A」の観点から、かねてより現棟の耐震補修を求めてきました3が、京大当局が拒否する状態が続いてきました。そのような状況にあって、この和解のなかで京大当局が速やかに現棟の老朽化対策を実行することが確認できたため、福利厚生施設である現棟の一刻も早い老朽化対策と全面的な利用の再開を実現するべく、和解に至りました。現棟には120もの居室がありますが、現在は京大当局が起こした裁判によりその大半に居住できません4。物価高騰・学費の高騰などにより低廉な費用で暮らすことができる学生寮を切実に必要とする人はこれまでにも増して多くなっており、実際吉田寮への入寮希望者も年々増加しています。そうしたなか、裁判を早期に終結させ、現棟の耐震性を向上させ、京都大学の福利厚生施設としての機能の回復をはかる必要があると考えました

     また、「B」を体現しつづける上で、吉田寮食堂(以下食堂)の果たしてきた役割は重要です。食堂では、学生・寮生に限らず国内外の様々な人々・団体が文化活動を営んできました。2015年に大規模補修が完了している食堂は、耐震性には何ら問題ありません。にもかかわらず明け渡し請求の対象とされてきたことは極めて遺憾です。和解協議では、現棟の耐震工事に際して食堂は工事の対象とせず存置すること、イベント等の食堂使用を継続できることが確認されたことから、和解を受け入れるに至りました。私たちは今後も食堂を中心に、多様な人々が交錯する開かれた場を、寮生や京大生のみならず、寮に関わりを持つ全ての人とともに自主管理し続けます。

     そして何より私たちは、吉田寮の在り方について、裁判所の判決という一方的な決定に委ねるべきではないと考えました。私たちはこれまでも「当事者間の対話による合意形成を志向する」という考えから、京大当局に対し訴訟の取り下げと話し合いの再開、そしてこれまで団体交渉で結んできた確約を尊重することを要求してきました。

     その上で、和解は判決に比べれば、私たちが決定に関わり、その結果に責任を持つことができると考えたため、和解を選択しました。

    2、和解の意味-対話の再開に向けた第一歩

     吉田寮は自治寮です。吉田寮現棟および新棟に住む全寮生が構成する吉田寮自治会が、自主管理・自治運営を担っています。吉田寮にまつわる全ての重大な事柄について、京大当局と対等に話し合って合意形成するために、京大当局との団体交渉の場で確約書5を結ぶという方法を続けてきました。それは京大当局も認めてきたことでした6

     実際に、2012年には京大当局と寮自治会および食堂を使用する当事者たちによる団体交渉によって確約7が結ばれ、食堂の大規模補修と新棟の建設が実現しました。

     しかし、2017年12月19日に京大当局は、現棟の老朽化を理由に、現棟・食堂・新棟の全ての建物からの全寮生の退去を突如一方的に通告し、話し合いによる問題解決を拒否して、2019年に寮生を被告とする明け渡し請求訴訟を起こしました。これは上記の確約を一方的に破棄し、従来の建設的な議論の回路を閉ざすものであり、以降6年半におよぶ不毛な裁判が幕を開けました。私たちは、根本的かつ迅速な安全確保のためには、現棟の老朽化対策に向けた話し合いを再開することこそが必要だと訴え、訴訟の取り下げを求めてきましたが、残念ながら京大当局が法的措置という方針を改めることはありませんでした。

     しかしながら、今回実際に、和解協議を通じた双方の意見のすり合わせと譲歩により一定の合意が成立し、現棟耐震工事が実現することとなりました。京大当局はこれまで「寮生との話し合いは建設的でない」と対話を拒否し、法的措置を押し進めてきましたが、結果を見れば、膨大な時間と予算を費やしながら、肝心の現棟の老朽化対策を遅延させる愚行であったと言わざるを得ません8現場の当事者を無視した政策は不当であるばかりか、かえって問題を複雑化させ解決を遠ざけるということが6年半をかけて証明されたのです。

     今回の和解は、京大当局による法的措置のように当事者の意志や権利を無視して強引に事を進めようとするのではなく、当事者との対話により建設的な議論を進めていく民主的プロセスに立ち返る第一歩であると捉えています。「安全確保」という論点がなくなった今、京大当局が対話を強硬に拒む根拠はもはやないはずです。今こそ京大当局は2015年以降の「団体交渉を拒否する」という方針を見直し、現棟耐震工事や今後の寮運営の在り方について、寮自治会との話し合いのテーブルに着くべきです。

     京大当局が寮自治会との対話を再開することは、京都大学を含むこの社会の未来に大いに資することだと考えます。京都大学はその基本理念において「地球社会の調和ある共存に貢献する」という社会的使命を持つ教育研究機関として、「学問の自由な発展」を掲げ、対話と自治の重要性を打ち出しています。学問の自由は大学の自治に根ざし、大学の自治は、闊達な対話に立脚するものであるはずです。
     そして、吉田寮は京都大学の自治空間のひとつであり、寮生を中心とした当事者が主体的に試行錯誤をしながら、対話による運営を続けてきました。京大当局と吉田寮とは、決して対立するものではなく、むしろ同じ方向を向いて、対話によってともにより良い未来を築くことが可能な関係にあるのです。

    3、現棟耐震工事について

     さて、和解では、現棟の耐震工事の内容を具体的に定めておらず、訴外で決めることとされています。

     残念ながら2015年以降、京大当局は開かれた場での話し合いを拒否しています。しかし現棟の耐震工事を行う上で、より良い福利厚生のあり方を模索するのであれば、今まで現棟での寮運営を担い、今後も担っていく寮自治会と話し合うことが不可欠です。

     私たちは、迅速な耐震工事により福利厚生機能の縮減を最低限に抑えるために、現棟の全面的な建て替えではなく、大規模補修・改修を京大当局に提案してきました。2018年7月には具体的な改修案を提示しています9

     また京大当局自身も、これまで現棟の補修・改修の意義を認めてきました。2012年には、速やかに耐震性を回復する方法として補修の有効性を認め、現棟の建築的意義を尊重した補修に向けて継続協議していくという確約10を交わし、2015年までは具体的な補修案についての話し合いが行われていました。また、2019年以降現在に至るまで京大当局が公表している文書「吉田寮の今後のあり方について」11でも、今後現棟を学生寄宿舎として再整備すること、それにあたり「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮する」ことが表明されています。

     和解では耐震工事について、補修工事ではなく建て替え工事になる可能性も排除されていません。しかしながら私たちは、京大当局が表明している通りに「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮する」べきだと考えており、耐震工事後の現棟がより望ましいものになるよう大学当局と協議していきたいと思っています。

     もちろん、京大当局にも耐震工事のビジョンがあるならば、双方が落としどころを探るべきです。私たちは常に、京大当局との話し合いのなかで、より良い福利厚生のあり方をともに模索したいと考えています。しかし実際に現棟を運営・使用する当事者との話し合いを一切拒否し、京大執行部というごく一部の人間の独断で現棟の建て替えや敷地の転用を決めたり、現棟の運営形態を一方的に変更するようなことは、断じてあってはなりません。現棟は日本建築学会近畿支部や建築史学会から保存要望書が出される12など社会的注目が高いことを考えても、耐震工事の内容は公に議論されるべきです。実際に和解においても、京大当局が工事計画をHPに公開するということが約束されました。

    4、京都大学当局への要求

     以上を踏まえ、私たちは京大当局に対し、以下を要求します。

    ①従来の確約13に基づき、吉田寮自治会が現棟を含む全ての建物を引き続き自主管理・自治運営することを認めること。

    ②従来の確約14に基づき、現棟の建築的・歴史的価値を尊重した速やかな耐震改修を行うこと。

    ③現棟の耐震工事の内容や吉田寮の今後のあり方について、寮自治会との協議を速やかに再開すること。現棟耐震工事については京大当局内での検討状況について速やかに公開すること。 


    1. 2019年2月20日:吉田寮の未来のための私たちの提案 | 京大吉田寮公式サイト ↩︎
    2. 基本理念 | 京都大学 ↩︎
    3. 180713少人数交渉について | 京大吉田寮公式サイト(補足資料1)、
      現棟の老朽化対策に向けた話し合いの再開と現棟の継続的補修を求める要求書| 京大吉田寮公式サイト ↩︎
    4. 明け渡し請求訴訟の提起に先立って、2019年1月~3月に京大当局の申し立てにより、現棟・食堂に対し「占有移転禁止の仮処分」が執行されました。これにより吉田寮現棟に法的に居住権をもつ人が固定され、それ以降に入寮した寮生が現棟の居住権を法的に主張することができなくなってしまいました。 ↩︎
    5. 確約集 | 京大吉田寮公式サイト ↩︎
    6. 150212確約書 | 京大吉田寮公式サイト(項目1:「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が団体交渉を希望した場合は、それに応じる。」) ↩︎
    7. 120918確約書 | 京大吉田寮公式サイト (項目4~項目9) ↩︎
    8. 例えば京大当局による提訴の2か月前、吉田寮自治会は京大当局に対し、食堂の利用継続や現棟の継続的な維持管理を条件に現棟での居住を取りやめる妥協案を提示し、条件のすり合わせのための話し合いを求めました(2019年2月20日:表明並びに要求 | 京大吉田寮公式サイト)が、京大当局は一切の話し合いを拒んで提訴に踏み切りました(吉田寮現棟に係る明渡請求訴訟の提起について | 京都大学)。当時の京大当局に少しでも歩み寄りの姿勢があれば、現在の状況は6年半前には実現していたでしょう。 ↩︎
    9. 180713少人数交渉について | 京大吉田寮公式サイト(補足資料1) ↩︎
    10. 120918確約書 | 京大吉田寮公式サイト(項目2、項目3) ↩︎
    11. 吉田寮の今後のあり方について | 京都大学 ↩︎
    12. 日本建築学会近畿支部「京都大学吉田寮の保存活用に関する要望書」(2015年5月29日)
      建築史学会「京都大学学生寄宿舎吉田寮の保存活用に関する要望書」(2015年11月25日) ↩︎
    13. 960516確認書 | 京大吉田寮公式サイト(項目1)、
      150212確約書 | 京大吉田寮公式サイト(項目1、項目6、項目12) ↩︎
    14. 120918確約書 | 京大吉田寮公式サイト(項目3) ↩︎
  • 「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    國府 寛司 殿

    吉田寮自治会
    2025年2月15日

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長國府寛司氏は2025年2月12日、京都大学公式HP上において「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について(※1)」なる文書(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、吉田寮自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において國府理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると吉田寮自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て吉田寮自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。

     その上、吉田寮自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った(※2)。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     吉田寮自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と吉田寮自治会において結ばれた確約に基づいて実施している。この確約とは大学当局と吉田寮自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が吉田寮自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって吉田寮自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも吉田寮自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

     また、吉田寮自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、吉田寮自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (訴訟について)

     2019年、大学当局は吉田寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、吉田寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、吉田寮自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

     さて、現在吉田寮に居住している吉田寮自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者(※3)は吉田寮現棟への居住を裁判所により確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で寮自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

     また、吉田寮自治会は2025年春期入寮募集を行う旨を公式HP(※4)上にて発表しているが、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない吉田寮西寮(2015年竣工)に限って実施すると公表している。國府理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない吉田寮西寮への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。西寮の存在を隠蔽し、吉田寮自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

    (入寮募集の責任について)

     以上に鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、吉田寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、吉田寮自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、吉田寮自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

      吉田寮自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。


    (※1)https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2025-02-12-4

    (※2) 2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

    (※3)2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。

    (※4)https://www.yoshidaryo.org/

  • 吉田寮の裁判の取り下げと話し合いの再開を求める全国学寮による要請書

    京都大学総長 湊 長博 殿

    京都大学学生担当理事 國府 寛司 殿

    吉田寮の裁判の取り下げと話し合いの再開を求める全国学寮による要請書

    2024年12月10日
    吉田寮自治会

    連名学寮:吉田寮自治会、熊野寮自治会、東北大学日就寮、一橋大学中和寮自治会、信州大学思誠寮、高知大学南溟寮、花陵会有志一同

    賛同:渓水寮生有志一同

    【要望】

    京都大学執行部は、吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟を撤回し、対話での解決を図ること。

    【趣旨文】 

       吉田寮は、1913年に開舎し、多くの学生に福利厚生と学びの機会を提供してきた学生寮です。また、寮生全員が構成する吉田寮自治会が入寮選考をはじめとする寮運営を行う自治寮でもあります。 従来、寮のあり方は吉田寮自治会と大学執行部とが話し合って決定されてきました。ところが現在京都大学執行部は、吉田寮に住む寮生・元寮生45名を被告として、「吉田寮現棟[1]・食堂[2]明渡訴訟」を起こしています。

     本訴訟には数多くの問題があります。「老朽化」を名目とした裁判にもかかわらず、原告の大学執行部が明け渡しを求める「食堂」は、2015年に全面的耐震補強工事を終えたばかりです。また、同じく2015年に竣工した、安全性に問題ないはずの「新棟」は、本訴訟の対象ではないものの、大学執行部による立ち退き命令の範疇に含まれています。これらに鑑みると、本裁判において、「老朽化」は建前に過ぎず、大学執行部の本音は、低廉な寄宿料の学生寮、そして自治空間の閉鎖だといえます。

     そもそも吉田寮自治会は、「現棟」の補修を求めて、数十年にわたって大学執行部と話し合いを続けてきました。その結果、2015年には、大学執行部は現棟の耐震補修に向けて話し合うことに合意し、書面で約束しました。しかし、こうした取り決めは、副学長が替わるや反故にされました。2015年に就任した川添信介元副学長は交渉を打ち切り、学生からの対話再開要求を拒みました。そして、大学執行部は、潤沢な資金と社会的権威を背景に、2019年4月に吉田寮生に対して吉田寮現棟・食堂明渡訴訟を起こしました。寮生は、公正とはほど遠い[3]裁判に時間と体力を奪われることとなり、学生の学業と生活は大いに阻害されました。

     2024年2月16日の第一審判決では、吉田寮自治会の主張の大部分が認められる結果となりましたが、大学当局は依然として対話の拒否を続けており、2月29日に吉田寮に対して控訴しました。京都大学が「対話を根幹とする自由の学風」を標榜する以上、大学当局は判決の結果を重く見て、寮生の暮らしを破壊する訴訟を直ちに取り下げるべきです。

     吉田寮は、金銭的支援を受けられないなどの、さまざまな悪条件を課せられた学生たちにとって、学ぶ権利を保障する受け皿として長年機能してきました。のみならず、学生たちが対話を通じて学びを得る場としても貴重な役割を果たしてきており、そのことは第一審判決でも認められました。そして、こうした福利厚生施設を必要とする現在および未来の学生のためにも、吉田寮は残される必要があります。

     また京大執行部の上記のような政策は、吉田寮だけの問題ではありません。実際、日本では、学生自治寮の廃寮化や管理強化が同時多発的に起こっており、東北大学有朋寮、金沢大学泉学寮などが相次いで廃寮化されてきました。その中で、吉田寮の存廃は多くの人々の注目を惹いています。吉田寮が万一廃寮化することとなれば、学内外に大きな影響が及び、全国の学生寮への管理強化・福利厚生縮減に繋がることは必定です。様々な大学・寮において福利厚生の縮小や、現場の当事者の意思・意向を無視したトップダウンの決定を加速させないためにも、自治寮、学生寮に対する弾圧を見過ごすことはできません。

      以上の理由から、京都大学執行部に対し、吉田寮への訴訟を取り下げ、対話を再開することを求めます。


    [1] 現棟・・・1913年完工。吉田寮は、「現棟」「食堂」「新棟」の三つから成る。

    [2] 食堂・・・1889年建造、1913年より現在の地に移築。2015年に耐震補強工事が完了した広大な多目的ホール。

    [3] 一般に、司法機関に紛争の解決を任せることは当然の権利とされています。しかし、当事者となる二者の間に多大な権力差が存在する場合、権力を有する立場にある者が司法に問題解決を委託することは時に暴力的な、不当な行いになり得ます。権力を有する者は裁判に潤沢なリソースを投入でき、法廷外においても弱い立場に置かれた者たちに有形無形の圧力をかけることができるため、結果として裁判そのものがある種格差の再生産装置として機能してしまうのです。その上、この場合は私たち学生側から話し合いの再開を求めています。学生との対話を拒み、裁判で決着を図ろうとする京都大学執行部の姿勢は、誠実とは言い難い振る舞いです。

  • 東京大学の学費値上げに抗議する声明

    東京大学の学費値上げに抗議する声明

    吉田寮自治会は2024年9月25日付で「東京大学の学費値上げに抗議する声明」を発出しました。

    東京大学の学費値上げに抗議する声明

    2024年9月25日
    吉田寮自治会

     9月24日、国立大学法人東京大学が来年度以降の学部入学者の学費値上げを決定したとの報道があった。[1]吉田寮自治会は以下の2点より、今回の東京大の決定に抗議し、その速やかな撤回を求める。

    1. 学費値上げが国立大学の意義に反し、教育の機会均等を妨げる施策であること

     そもそも国立大学の存在意義の一つに、「高等教育の機会均等の確保等について政策的に重要な役割を担う」[2](傍点引用者)というものがあるが、以下に述べるように、今回の学費の値上げは、この要請に明らかに背くものである。

     東京大は今回の判断に際して、世帯収入に応じた学費減免措置の拡充に言及している[3]。確かにそういった制度は最低限必要なものであるが、現に私たちは自治寮を運営する主体として、画一的な世帯収入の基準では到底測れない様々な事情を有する学生が多数いるということを、身をもって感じている。また、学費のベースを上げること自体が、大学入学の門戸を狭めるというメッセージ性をはらんでいる。

     ただでさえ、日本の国立大の学費は他国と比べても高い[4]。ましてや、日本は国として批准している社会権規約に基づき、学費無償化へと舵を切る義務を負っている[5]。そうした中で、東京大はその社会的影響力の大きさに鑑みると、むしろ先陣を切って学費値下げを進める、あるいは最低限、現在の授業料を維持することが求められるといえる。

     また、物価高騰などにより、大学運営のための資金が不足しているという事情は理解できるが、そのしわ寄せを、経済基盤が弱い学生に向かわせるべきではない。例えば、目下減らされ続けている運営費交付金を増額させるよう、学生をも巻き込んで関係各所に要求するなど、他の方策を取るべきである。

    2. 今回の学費値上げの決定が、学生の声を無視してなされていること

     東京大では、学費値上げ問題をめぐって、本年6月に学生と総長との対話の機会が設けられた。そこでは多くの学生が反対意見を述べ、東京大の藤井輝夫総長も、学生の意見を踏まえると発言している[6]。しかしながら、学生の意見が聞き入れられることは無く、9月10日に突如学費値上げ案が発表され[7]、24日には上述の報道がなされている。

     東京大教養学部自治会が9月に東大生に対して行ったアンケート調査では、8割の回答者が今回の学費値上げ判断に反対している[8]。また学生は今なお、総長との直接交渉を求めている[9]。東京大の執行部は、学内の主たる構成員であり、なおかつ学費問題の当事者である学生の要求に対し、真摯に応答するべきである。

     私たち吉田寮自治会は、以上2つの理由をもって、この度の東京大の学費値上げに対して抗議する。そして東京大執行部に対し、その即時撤回、及び教養学部自治会らが求めている交渉に応じることを、強く要求する。


    [1] 朝日新聞デジタル「東大、授業料値上げを正式決定 来年度入学生から学部で11万円増」(2024年9月24日, https://www.asahi.com/articles/ASS9S2T0LS9SUTIL00VM.html)

    [2] 文部科学省, 中央教育審議会「我が国の高等教育の将来像(答申)」(2015年1月28日, https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/attach/1335595.htm)

    [3] 東大新聞オンライン「【学費問題】東大、授業料値上げ案と学生支援拡充案発表 修士課程は4年後、博士課程は据え置き」(2024年9月10日, https://www.todaishimbun.org/gakuhiann_20240910/)

    [4] OECD, “Education at a Glance 2019 : OECD Indicators” (2019, https://www.oecd-ilibrary.org/sites/f8d7880d-en/1/2/4/5/index.html?itemId=/content/publication/f8d7880d-en&_csp_=b2d87f13821f45339443c7ca94aafe46&itemIGO=oecd&itemContentType=book)

    [5] 外務省「経済的,社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約)第13条2(b)及び(c)の規定に係る留保の撤回(国連への通告)について」(2012年9月, https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kiyaku/tuukoku_120911.html)

    [6] 東大新聞オンライン「【学費問題】総長対話、学生13人が発言 決定プロセスや使途の不透明性に関する質問相次ぐ」(2024年6月21日, https://www.todaishimbun.org/taiwa_20240621/)

    [7] 3と同じ

    [8] 東京大学教養学部学生自治会Xアカウント, 2024年9月18日のポストより(https://x.com/todaijichikai/status/1836311745251426306)

    [9] 東大新聞オンライン, 「【学費問題】授業料値上げ案に自治会と「緊急アクション」が反対声明発表」(2024年9月21日, https://www.todaishimbun.org/gakuhihantai_20240921/)


  • 「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    國府 寛司 殿

    吉田寮自治会
    2024年9月16日

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長國府寛司氏は2024年8月29日、京都大学公式HP上において「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」[1]なる文書(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、吉田寮自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において國府理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると吉田寮自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て吉田寮自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。

     その上、吉田寮自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った[2]。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     吉田寮自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と吉田寮自治会において結ばれた確約に基づいて実施している。この確約とは大学当局と吉田寮自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が吉田寮自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって吉田寮自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも吉田寮自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

     また、吉田寮自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、吉田寮自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (訴訟について)

     2019年、大学当局は吉田寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、吉田寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、吉田寮自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

     さて、現在吉田寮に居住している吉田寮自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者[3]は吉田寮現棟への居住を裁判所により確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で寮自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

     また、吉田寮自治会は2024年秋期入寮募集を行う旨を公式HP上[4]にて発表しているが、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない吉田寮西寮(2015年竣工)に限って実施すると公表している。國府理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない吉田寮西寮への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。西寮の存在を隠蔽し、吉田寮自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

    (入寮募集の責任について)

     以上に鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、吉田寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、吉田寮自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、吉田寮自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

      吉田寮自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。


    [1] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2024-08-29-1

    [2] 2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

    [3] 2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。

    [4] https://www.yoshidaryo.org/


  • 2024年4月9日発出 山極壽一氏・川添信介氏宛公開質問状の無回答について

    2024年4月9日発出 山極壽一氏・川添信介氏宛公開質問状の無回答について

    2024年4月9日に、吉田寮自治会は山極壽一前総長および川添信介・元学生担当理事に対する公開質問状を発出しました。

    これについて、2024年5月31日を回答期限としましたが、現在に至るまで一切の回答がありませんでした

    従来取り交わしてきた約束を反故にし、寮生を対象とした不当な明渡請求訴訟を断行した責任者として、当事者からの問いかけに一切の応答・釈明を拒む姿勢は到底容認できません。吉田寮自治会は、京都大学に対し、訴訟を取り下げ、話し合いを再開することを、あらためて強く求めます。

  • Statement on the Current Situation of Universities in the Gaza Strip, Palestine

    Statement on the Current Situation of Universities in the Gaza Strip, Palestine

    May 15, 2024
    Yoshida Dormitory Self-Government Association

     The current Israeli military aggression against Palestine has destroyed all the 12 institutions of higher education in the Gaza Strip, Palestine. 

     All that has been caused by the Israeli military invasion since October 2023, in which Palestinian residents have been indiscriminately deprived of life, lost their homes and communities, mourned their friends, family and loved ones, starved and dehydrated, injured and infected, and deprived of their right to live in safety and security as a matter of course We want to show our protest against the situation.

     And the Yoshida Dormitory Self-Government Association, as an entity that emphasizes an environment in which students and others associated with the university can concentrate on academic and research activities, and as an entity that aims to share the benefits of academic and cultural activities widely in society, also protests the Israeli military’s acts of attack on Palestinian universities and destruction of culture and history and demand an immediate halt to the attacks.

      According to a report by Al Jazeera[1] this January, Israeli forces have been systematically attacking universities in the Gaza Strip, some of which have had their campuses bombed; as of January, up to 4,327 students had already died. In addition, the Israeli military continues to attack the city centers, and students are no longer able to study in a safe environment, not even using remote functions. It must be said that the current actions of the Israeli military are a massacre against civilians and are beyond the level of a conflict. The Yoshida Dormitory Self-Government Association hereby issues this statement in the hope that an immediate ceasefire will be achieved to ensure the safety of students and other residents in the Gaza Strip, Palestine, and the environment in which they can study as soon as possible.

      In addition, worldwide, repression of students and faculty members who raise their voices in protest the Israeli military continues[2]. The act of freely raising one’s voice is a universal right, as stated in the Universal Declaration of Human Rights, Article 19[3]. The security authorities and university authorities must not act to forcefully suppress the voices of students and faculty members. The Yoshida Dormitory Self-Government Association also expresses its protest such oppression.


    [1] https://www.aljazeera.com/news/2024/1/24/how-israel-has-destroyed-gazas-schools-and-universities

    [2] reference ; https://www.fnn.jp/articles/-/696012

    [3] “Everyone has the right to freedom of opinion and expression; this right includes freedom to hold opinions without interference and to seek, receive and impart information and ideas through any media and regardless of frontiers”, https://www.un.org/en/about-us/universal-declaration-of-human-rights#:~:text=Article%2019,media%20and%20regardless%20of%20frontiers.


    Japanese Version <日本語版>→https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/3476/