International Conversation ~違いを知ろう~

International Conversation ~違いを知ろう~

2021年2月17日

文責:M45

吉田寮は対話を重んじる。この「対話」は、勿論単なる会話と思ってもらっても差し支えないと思うのだが、「吉田寮は」という主語の元ではその限りではない、と寮生と付き合い、会議したりして意見を交えることで感じるようになってきた。およそ一年間寮で生活した私の稚拙な理解をあえて述べるならば、対話とは、「異なる背景を持つものが、常識を押し付け合うことなく、双方が納得するまで意思疎通を継続すること」である。このステップはどれも難しく、大変なエネルギーを弄するもので、普段の会話とは完全に異なる。中でも困難であるのが「異なる背景」を知ることで、留学生は言うまでもなく、同じ日本人でも真剣に対話してみるとここまで価値観が違うのか、と驚き半分うんざりさせられる。そこで本稿ではこの背景の違い、即ち吉田寮の多様性に目を向け、日本人と留学生の寮生にインタビューした内容を対談形式で書くことにする。私が言うのもおこがましいが、本稿を通じて多様性の幅広さやその奥ゆかしさを少しでも感じ取ってもらえればと思う。こんなに多様な考え方に我々は晒され、そしてもしかするとあなたも晒されることになるかもしれないのである。

M45(著者)「皆さん、今回は快くインタビューを受けてくださってありがとう!簡単に自己紹介をしようかね。まず俺から、名前はM45、男、華僑二世で生まれも育ちも日本です。専攻は材料工学でビリヤードが趣味。日本語と英語、中国語を少し話せます」

Noemi「Noemiです!生まれも育ちもスイスです。性別は女。いろんな風習に興味があって、東南アジアの地域研究をしています。趣味は裁縫。フランス語話者です!」

チョウ「チョウです。中国出身で向こうで育ちました。男。専攻はコンピュータサイエンスで京大で修士号と博士号を取り、今は卒業して働いています」

M45「OB枠ですな。ちなみにビリヤード仲間!」

Otherwise Homeless March「Otherwise Homeless March(著者注:以下OHM) です。ニックネームの由来は後程、、」

M45「乞うご期待(ゴクッ、、)」

L「フランス系イスラエル人(ユダヤ系)のLです。フランス語とへブル語、英語を話せます。あと日本語を話す振りができる。歴史、文化、農業に関心がある」

M45「NoemiとLは時々フランス語で話してるのを見かけるな。何言ってか全くわからん(笑)」

S「25歳の秋田人。仏教徒で社会福祉を専攻しています」

M45「いわゆる日本人寮生は僕とSの二人やな」

SuzuTong「中国人の女性です。母語は中国語で、英語も話せます。日本語もある程度。あとわずかにイタリア語。外向的で人当たりがいい。新しい物好き。料理好きで歴史とか旅行にも興味あるね。『食彩の王国』と『月曜から夜更かし』が好き!大気科学を専攻していて、自身は東アジアのモンスーンや日本の梅雨について研究しています」

M45「自己紹介はこんなもんやね、では質問していきます!Q1:みんなはなんで吉田寮をえらんだんですか?理由とかありますか?そもそもどこで寮のことを知ったんですか?」

S「恋に落ちるように、知らぬ間に入寮してました、、、」

M45「詩人か!寮好きすぎるでしょ(笑)入寮の経緯と動機は?」

S「なんか面白そうなところをネットで偶然見つけて、高校のときね。そこからは芋蔓式。気が付いたら入寮してた(笑)恋っていうのはわくわく感が強いからだね。あと寮をネットで見つけたときビビッと来た。入寮動機は人と違う大学生活を送りたかったから、ウン」

OHM「これは僕のニックネームにかかわる話だね」

M45「早速聞けるのか!」

OHM「最初京大に入学しようと思ったときに寮のこと知ったんだけど、大学の公式サイトで、そこは入寮募集してないと書いてあって、いったん諦めたんだよね。でもその後吉田寮が実は入寮募集してることを知って、いろいろ理由はあるけど、主に経済的な理由で入寮したね。」

M45「それは本質情報やな、当局は別に入寮募集を停止させる権利を持ってないから、昔も今も自治会として入寮募集をしてるんや。本質情報やぞ!!受験生読者諸君!!!」

OHM「そうだな。しかもパンデミックがこんなに長引くとは思ってもなかったし、バイトもなくなってしまったから、もし入寮してなかったら完全に詰んでたと思う。 Otherwise Homeless March

だよ!!」

M45「Otherwise Homeless Marchなるほどもって。実際寮生は経済的に困窮してる人が多いから、寮費が安いのは魅力的やんね。他にもそういう人多いんでない?」

Noemi「私も。ある年、来年の経済状況がはっきりしなくなって、安い寮に引っ越そうと決めたましたね。理由として他にも、一人暮らしに飽きたからっていうのと、吉田寮の包括的な意思決定が魅力的だったことがありますね」

M45「包括的っていうのはウマいな。例えば、吉田寮の定例会議は全会一致で、みんなの意志をできる限り反映した意思決定するという方針が取られてるしね」

チョウ「安いのはマジで大きい。僕の場合、他にもキャンパスに近いことと、寮外との交流の機会が多いこと、あとCoolなヤツらとイベントが多いからだね」

L「はいはい。私が入ったのは経済的な理由でもキャンパスに近いからでもない。僕はここの歴史に価値があると思っていて、本当にその一部になりたいんです。最初、数年前にここにきたとき、すぐにこの場所は特殊だと感じた。でも当時私は学籍を持っていなかったので、数年後実際に入学して自分の部屋をもらったときは本当に幸せな気分になったね」

M45「なんか吉田寮愛を語る企画みたいになってきたな。入寮動機は人の数だけあるよな。俺もLと似てる。浪人一年目の三月(現役で不合格まちの一週間の間)の時に寮をみてビビッと来て京大受験を決意したね。ここに入るためなら、もし今回落ちたら、一年ぐらい屁でもねーわと(笑)ワンチャン阪大落ちてないかなーと思ったらマジで落ちたからこれはめぐり合わせ」

SuzuTong「日本に来る前にテレビで寮のことをやってて強く興味をひかれた。いつか住みたいと思ったね。吉田寮のことを知れば知るほどそこに住みたいと強く感じるようになった。実際に住んでみて雰囲気は最高だしみんな優しくしてくれる。平常時ならイベントもたくさんあって、いろんなバックグラウンドの人と考えを共有したり日本文化を学ぶのに有益だよね。」

M45「コロナがないときはイベントだらけだよね!歴史のパネル展示から、ただただはっちゃけるだけのものとかいろいろあって楽しい(笑)」

「さて次の質問に行きますか。Q2:さっきもちらっと話に上がりましたが、皆さんはどのような形で自治に参加してますか?できてない人もいると思いますがそれはなぜですか?ちなみに僕は評議会です。寮内の定例会議、総会を取り仕切る委員やね。やっぱり意思決定に積極的にかかわりたいから」

Noemi「最近は研究が忙しくて参画できてないねー。でも評議会は信頼できるし、寮を動かしてくれる全寮生に感謝!」

S「隣人関係の基本は持ちつ持たれつ。いつもほかの寮生に支えられているので、自分の得意なことで自分の属するコミュニティに貢献出来、そういう実感を持ちながら生活できるのは素晴らしいことですね。自分は例えば通訳や郵便物仕分け、廊下の掃除、とか好きなことをやる。役割があると存在意義を感じれて、居心地がいい」

M45「吉田寮は、住居と言うよりコミュニティ感を日々強く感じるな。やっぱり自分一人では何もできないし、だからこそ自分ができることを少しでも多くやろうと思える。でも留学生にとって言語の壁は大きいのでは?」

チョウ「全力を尽くしたが、言語の壁は大きかった。日本語苦手だから、、、(著者注:彼はよくこれを言ってましたね)なので自治には積極的に関与しなかったけど、寮内のイベントとかには活発に参加したよ!バンドもやってたし」

S「これは寮の課題だな。マジョリティの日本語話者が積極的にサポートする必要がある」

L「私も時々議題を通したいときに総会に出るけど、日本語能力に長けていないことと、総会の雰囲気がピリピリしてるせいもあってかいつも苦労する。」

M45「確かにLはいつも総会で苦労してるね。」

L「大体は議題が却下されて、そのたびにすべてを投げうっちゃいたくなる。皆新しいこと提案するより批判することを好むんじゃないかな。そんなんでは寮がとても保守的になってしまうし、昔からあるルールに盲従し疑いもせず、新しいアイデアは生まれる前に潰されるよね。だから私は個人によるイニシアチブが自治の参画にはより効果的だと思う。あまり賛同は得られないだろうけど。例えば鶏を自分たちで育てて食料の足しにしたり、本当の自治は食料の自給自足、文化的活動を通したコミュニティの活性化そして紙面による現状への反映がリンクしている。」

M45「評議会にとっては頭が痛くなる意見や。でも変化がゆっくりとしか起こらないのは対話を重んじる寮にっとては避けがたい。みんなの意見を通そうと思うと自ずと反対意見も考慮しなくちゃならない。労力がエゲツナイから嫌がる人も多いのもまた真なり。一方で、他人の意見があまり関係ないところで個人的に寮に働きかけるのも大切。このインタビューも僕が勝手にやってるからなぁ。勝手に何かする人がいて寮内も多様性に満ち溢れる。中庭の鶏は寮の名物、卵も美味しい!」

「つぎ行きますQ3:文化の違いを経験したことは?これは大なり小なりあると思います。文化と言ってもテーマ性が広いので自由に体験談を教えてください!」

OHM「文化っていうよりは慣れ不慣れのために起こること、ととらえる方が適切じゃないか?」

M45「そう思うならそういう筋の話でもいいよ。文化ってワードは方便に過ぎないから」

チョウ「寮生はたばこ一本にわざわざ10円20円払ってくる。中国じゃタダで分けるけど、なぜなんだろう」

M45「貧乏だからお互い物をもらうと申し訳なくなっていくらか払うんかな?(笑)これは吉田寮特有やね。ビールもお菓子も大体いくらか払うよな。まえチョウくんが卒業するときにご飯いっぱい作ったけど、その時も他の寮生はなんぼか払ってくれたわ(笑)」

チョウ「あと日本人は寛容かもしれない」

M45「と言うと?」

チョウ「僕は前ロン毛の時期があったんだけど、中国では皆不思議そうに見てくる、特にトイレに入るとき(笑)」

M45「小さいことだけど、寛容な視線があるとないとでは大違いやな。俺の中国の親戚も俺がロン毛にしたとき、女みたいだから早く切れって言ってたな。少なくとも俺の経験上、日本ではバイトや就活とかだと男は髪が短くないと印象が悪いこともあるけど、日常レベルではなにも起こらない」

L「文化の違いは日々感じるよ。印象的だったのが、二年前、授業で京都市動物園に行った時の話だね。先生が明らかに間違った指導をして、そのまま行くとグループ全体の動きが悪くなるのに、誰も指摘しないんだよね。みんな子供じゃない、大人なんだぞ?フランスでは7歳の子供でも先生の間違いを指摘するもんだが、こういった文化の違いは、自分がどれほどフランスの文化を価値あるものと考えているかを教えられるね」

M45「7歳から!それは見てみたい。まあでもそれにはいろんな要因があるだろうね、日本人は周りの目を気にするから、自分が間違えてたらどうしようとか思っちゃって抑制がかかるんよなぁ。あと目上の人の顔を立てがち。その人の立場を考えて困らせないようにしようという、これまた抑止的効果。」

L「逆の経験がある。一回調査のために日本の限界集落に後輩と行った時の話だ。村人への聞き込みをやったとき、もちろん会話は後輩がメインでやってくれるけど、私が何か無礼なことをしてなかったか後で聞くんだけど、いつも『うーん、まあ大丈夫です、そんなことないっす』みたいに何も言ってくれなくて改善のしようがない(笑)同様に教授も授業の改善ができないと思うから生徒がいろいろ言った方がいいと思うんだよね」

M45「そうか、逆に困るのか!敬語の問題もあるんじゃない?吉田寮は敬語を使わないやん?」

L「吉田寮は特殊だね。ヒエラルキーがなくてフラット。総会でも先輩とか関係なくズバズバモノ言うでしょ(笑)」

M45「Noemiは何かある?」

Noemi「やっぱりなんでも文化の違いよ。特に日本人は簡単なことでも遠回しに言いますね。スイスでは簡潔に言えば十分なことが多いのに、日本ではいつもばつの悪そうな文章が好まれるんですよ。お手数おかけしますが、よろしくお願いいたしますってね。そんなことしてるとビジネスの業界では関係性を上手く構築できないでしょ。」

M45「俺もうんざりやわ(笑)バイト先にメールするにも、冒頭に『お疲れ様です』とか『お世話になっております』、最後に『お忙しいこととは存じますが、よろしくお願いいたします』とか書く。正直、大体の場合、角が立たない以上の意味はないよ」

Noemi「コミュニケーションで言うと、日本のハイコン社会に慣れるのに時間がかかったわね」

M45「ハイコン?」

Noemi「High Context文脈以外の情報を重視するってことよ」

M45「要するに日本人が本音を言わなかったり、空気を読んだりするってことか」

Noemi「そうね、最後まで言い切らずにこちらに理解を求めてくるでしょう?実家にかえったときに文章を半分で切って話してみたら家族はおろか弟も私の言いたいことを誤解してたのよ!しかも日本人も私の話を途中で遮っておいて結局正しく理解できてなかったこともありましたね!(笑)」

M45「迷惑すぎるww」

SuzuLing「中国ではケツポケットとか口の空いた鞄に貴重品をいれたりすることは絶対ない。注意不足で物をなくすなんてありえない。だから日本人は外国ではターゲットにされるのよ。でもそれは日本の集産主義と倫理観やモラルがしっかり教育されてるためでしょうね。中国とかヨーロッパのいくつかの国では貧富の差が激しく、モノが足りないために、不適切な方法でモノを奪取しようとするのが傾向としてある」

M45「それはよく言われるね。やっぱりいいカモなんだよな。僕もツアーで欧州に行ったとき団体の人が危うくカモられかけてた。中国にも数年に一度帰るけどまだそんな経験はないな。」

チョウ「確かに日本の治安はいい」

「Q4:日本について受け入れがたいと思うことは?これは前問に続く感じやな。誰から行くか?」

SuzuLing「受け入れがたい、というよりは、理解できないことならあるよ。ヒエラルキーが強いのと"No-no"現象ね。グループでデスカッションするときに日本人はとりあえず『そうですね』って言って終わるの。でもそれで本当にいいのかわからないしこのまま自分が喋っていいのかと不安になる」

M45「さっきのLと同じやないか(笑)やっぱり日本人は主張がないと言われるのは留学生も強く感じてるんやな。でも稀有な人もいて、一回の夏、世界の環境問題について、英語論文を読んでディスカッションしよう、みたいゼミの話。初回授業の終わりに60手前の教授が「質問とかありますか」って言ったら、対面のおないくらいの男子が「先生は環境にやさしくしたいですか?ならエアコンを消せばいいと思います」って言うんやで!?こいつマジかぁ思て笑いこらえるのに必死やったわ(笑)そのあと教授もテンパってなんも言えんくなってたらそいつが「消さないんですか」って。んで教授が消したな」

L(爆笑)

L「それヤバいね。私も言うと、これまた多々ある。特に日本社会におけるの女性の立ち位置にはhorrifiedね」

M45「立ち位置?」

L「そう、日本の女性はBeautifulよりもCuteになろうというのが現代のスタンダードだろう。しかもこのCuteと言うのは子供っぽさを形容するもので、日本女性は子供っぽい外見と行動を社会から求められていて、ジェンダーロールもそれに批准すべきだと信じている。そうなると彼女たちは権利と正当性を失って男性支配のもとに置かれてしまうよ。2020年の日本の世界男女格差指数は過去最低で153か国中121位だったんだ。先進国なら物質的な富だけではなくて、国民が社会の中でどういう状態に立っているかにについても目を向けるべきだよ。」

M45「なかなか極端な意見だな。でもCuteとBeautifulの違いも国によって認識がさまざまやけど、具体的にどういうとき、日本人はCuteに振舞ってると思う?」

L「電話口。日本に来て最初の彼女はほんとにパワフルな人で、体つきもしっかりしてたけど主張も強かった。僕に対しても語気が強くて、Cuteという感じではなかった。でも電話に出るときはネズミみたいな小さい声で話すんだよ(笑)そういう時はやっぱCuteって感じるかな」

M45「それはわかる、中川家のコントでもオカンは電話口でハイトーンボイスになるしな(笑)フランスでBeautifulというとStrongみたいなことも含むの?」

L「そうかも。あと日本人はKawaiiって言葉よく使うじゃん。Sexyとかより、女性の容姿を評価するときにKawaiiっていうよね。男の容姿を言うときもそうでしょ」

M45「確かに!Beautifulっていうとキザというか、そもそも日常的にもKawaiiが好まれるね。Kawaiiは何かを愛でるというニュアンスが強いから、それ自体日本人の趣向を反映してるかもな」

S「ゴキブリと言う謎の生命体」

M45「そうかSは秋田から来たからGは未確認生物やな(笑)感想は?」

S「一匹いたら百匹いると思えって感じ。特に寮はおおいよね(笑)あ!あと関西特有の『知らんけど』にはほんとに何回も裏切られた。関西の人ってストレートに物申す印象が強かったから、最後に一言『知らんけど』って言われると、そこは押さんのか!って言いたくなる(爆笑)最近は慣れたけど最初はほんとに結論をはぐらかされた感じがして戸惑ったな、真面目に受け取ってしまうから」

M45「あれはスルーしていい(笑)関西人はストレートやけどいい加減でもあるから、とりあえず『知らんけど』を使えばいいと思ってる。いわゆる『そんな感じ』とでも思っとけば?(笑)知らんけど」

チョウ「僕は特になかった。日本は過ごしやすいね、しいて言うなら役所関係かな」

OHM「僕もないね、受け入れられないと言っても共生のためには忍耐がとても大切だと思う。皆個性があるし、考えも行動も違う。だからこそ多様性が生まれて、世界はこんなにも興味深いものになるんだ。違いがあることに感謝して、全ての違いと調和の内に生きていたい。日本にいるとそういう刺激が多いね。そもそも日本語を学んでこっちで勉強したいと思ったのが、日本の豊かな多様性のためだったから」

「Q5:日本は様々な宗教が混在しているけど、それについて考えや体験談を話してほしいです。」

Noemi「私は福音派のプロテスタントの家で育てられたので、他人を自分たちの宗教に引き込むワザを知っているし、証をしたり讃美歌を広める方法を教えられました。でも、そういうのはほんとにイヤで、私は、自分の宗教が正しいといって人を説き伏せようとする人たちと繋がりを持たないようにしてるの。ドグマとか裁きとかは、人を苦しめるためにあるようなもので、どの宗教もあまり信じる意味がないと思う。一方で私はスピリチュアルとか日本の神道なんかの伝統的な信仰の違いを学ぶことが好きね。私や他人を巻き込まないなら宗教とスピリチュアルの議論は大歓迎ですよ」

チョウ「日本では好きなものを信じて他人のことは気にしないという感じがある」

Noemi「同意見!」

M45「熱心な人ほど他者の救済にも励むよね。僕の実家も僕自身も改革派のプロテスタントに属しているけど、こないだも実家に帰って人の価値観は相対的でしかなく、自分が正しいと思うことって危ないよな、って言ったら、両親に『神の教えを絶対的と言わないその考えはこの世に蔓延るもので、終わりの日には裁かれるぞ』と言われたな。目の前に違う価値観を持つ人がいてもこの有様なんだよね。でも家族が一つの宗教を信じる前よりは家族がまとまって、父も母に対して優しくなったから必ずしも意味がないわけではないとも思う。良し悪しだなぁ」

S「もっとオープンに宗教について話すことができる社会になれば、自分とは異なる宗教を持つ人への理解も深まり、偏見などもなくなっていくのではないかな」

M45「チョウとNoemiからは日本人は人の宗教を気にしないという意見が出たが、Sはむしろ日本では宗教に関してオープンじゃないと言いたいんやな?なるほど、二つは両立するな。実際日本人は気にしないというより話さないだけだと感じる。僕の両親は僕にいろいろ話して来るけど、高校とかで友達と宗教の話をすることはまずない」

S「二面性だよね。よく言えば日本人は人の宗教のことを気にしない、でも悪く言えばそれはマイノリティに対するイマジネーションの欠如だと思う。相手がどうゆう宗教を信じてるか、とかいう理解が育まれないわけだし、それって不透明だよね」

M45「確かに!僕は高校で日曜に礼拝があるから休みたいって言ってもあまり教員にその重要性が伝わらなくて、『そうはいっても来れるんだろ?』みたいにあしらわれた。以前にもキリスト教の生徒がいてその人は日曜も来てたとか言われて。でも信仰の厚さは人それぞれだし、それこそイマジネーションの欠如やな」

SuzuTong「私は無宗教だけど、異なる宗教を持つ人同士のコミュニケーションは大切ですね。まえ食堂でご飯を食べていたら、アメリカから来たインド人とアメリカ人でキリスト教のことを広めてる二人の女性が同じテーブルに座ってきてしばらく話しをした。別にイヤじゃなかったし、今でも連絡を取り合ってるよ。個人的に異なる宗教の友達ができるのはうれしいし、困ったときは自分とは違うものの見方をシェアしてくれる。意思疎通って大事ね。文化とか宗教を超えたものってこういう絆を育んでくれる」

M45「そういうつながりはいいよね。僕にもそういう知り合いがいるな、彼らは今何をしてるんだろ、、、」

「Q6:最後の質問!皆の故郷の自慢を教えてください」

S「秋田は冬の日照量が極端に少ないからそれに関連した文化が育まれてる。冬は長くて暗いから耐え忍ぶんだよ。で夏にいろんな祭りがあって、はっちゃける。東北は特に祭りが多いね。僕の地元には曳山祭りってのがあって、町内ごとにお囃子とかをのせた台を引っ張て道を練り歩く。道は封鎖するし、祭りの二日は学校も休みになる。町一丸って感じ。地元は文化が豊かで土地に息づく暮らしが実感できる」

Noemi「給料がいいこと。購買力は日本より強いと思うよ」

L「パリはよく誤解されてる。寮生もバカげたアメリカの映画とかで見たパリしか知らないから、私を裕福な白人と思ってるね。皆パリの生活がどれほど苦しくて危険なものか知らないんだよ。行ったこともないようなところから来た人へのイメージを決めつける前によく考えてほしい。豪華絢爛な通りというよりは、パリをフランスの中心と考えてほしい。市民はそこで王や皇帝、大統領と戦ってきた。幾千人という人々が我々のために通りで自由と権利のために命を落とした。ブランドショップなんかじゃなくて、その歴史が大切なんだ」

チョウ「変化が速いことかな。それもいい方向に。生活や治安はよくなってるし、何より貧富の差が縮まった。経済成長の恩恵」

M45「僕は神戸の多様な文化が大好きやぁ。150年前、江戸の終わりに開国と同時に神戸港も開かれて、いろんな文化が輸入された。ゴルフは神戸だけから入ってきたとは言わないけど、六甲山の上に日本最初のゴルフコースがあったりするのは自慢やな。六甲山にはイングリッシュガーデンもあるな。他にも昔の貿易商の別荘がある北野坂もいい(手塚治虫の『アドルフに告ぐ』の舞台にもなった(ドイツ軍の家の子と移民のユダヤ人の子どもの話は因果なものよ))。宝石、コーヒー、洋菓子、マラソン、ジャズ、いろいろ入ってきた。楽しい街」

M45「皆さんいろんな意見をありがとう御座いました!インタビューしていて本当に楽しかったです。次回もこういう機会を設けられるといいですね。最後に何かありますか?」

Noemi「日本はお人形さんの家だね!全てがミニサイズ(笑)道路、家、車、人、買い物かご、お土産、全てが小さくてまるで靴箱の中の象ですよ!デスクと椅子も小さいから大体は寮にいるし、前のアパートのキッチンは腰より低くて、料理してると背中が痛くなったよ。極めつけは和式便所ね。しっかり座ろうとすると壁にキスすることになるの。和式便所は他の地域にもあるけどこんなの日本で初めてですよ!」

OHM「このパンフ記事を読んでくれた人がインスパイアされるといいな。自分の興味、関心に沿って勉強する一方で、多様性を享受してほしい。寮に来て色んな発見をして、色んな考えを探ってみて、お互いに将来に向けて、世界がより良い場所になるように刺激し合ってほしい。Welcome!」

L「私の意見は批判的でしたね。フランスではなんでも批判の対象とし、自分で考えるように教わるんです。日本ではcriticsは嫌がられるけど、私はやめないよ。過去から学び、今を批判せずに未来をいいものにすることはできないからね。自分たちを批判するのは自分たちのためで、あなたを批判するなら、それはあなたのことを気にかけているからなんですよ。だからどうぞ私のことも批判してください」

チョウ「Viva la Yoshida!!!!」

S「日本に吉田寮があってよかった」

SuzuTong「こないだの福島の地震のことが心配ですね。皆さん大丈夫でしょうか。あと吉田寮がもっと長く存続できますように。ここは寮生だけじゃなく多くの人に知られ、守られるべき。ここには守られて理解されるべき豊かで多様な価値がある。」

M45「皆さん、ありがとう御座いました!!!楽しかった!!」

ここまで読んでくださってありがとうございます。ここに挙がった違いなんてものはほんの一部にすぎませんし、フランス人やスイス人、中国人は「皆」こう考えると思わないでくださいね。人の数だけ違いがあるし、別に相手が留学生だから違いを感じるわけでは決してない。それは我々の個性であり、おそらくあなたの最も親しい日本人ですらあなたとは考え方や感じ方、行動の仕方も違うでしょう。また、多様性は良いとか悪いとかではなく、それ自体コミュニティの豊かさや楽しさにつながるものだと思います。違うって面白い!と思った方は是非一度吉田寮に来てみてください。ここで読むよりももっと面白いですよ!