年: 2017年

  • 2017年12月26日:「吉田寮生の安全確保についての基本方針」に対する抗議声明

    「吉田寮生の安全確保についての基本方針」に対する抗議声明

    2017年12月26日

    吉田寮自治会

    2017年12月19日、京都大学の公式サイト上で、『吉田寮生の安全確保についての基本方針』(以下、「基本方針」)と題する文書及びそれの策定・実施の通知が発表され、さらに寮自治会と寮生個人宛にメールで「基本方針」の決定を通知する文書が送られた。「基本方針」は、2018年1月以降の入寮を認めないとし、同年9月までに現棟および新棟からの退去を求めている。さらに寮生個人宛に「基本方針」と同時に送付された通知では、その一方的に定めた退去期限を過ぎても居住し続けた場合、「不法占有」にあたるとしている。

    今回の「基本方針」の決定及びその通知は、これまでの大学当局と吉田寮自治会の話し合いの積み重ねを無視しているうえに、寮生に無用な混乱と不安を生じさせている。吉田寮自治会としてこれに強く抗議し、速やかな撤回と団体交渉の開催を要求する。

    以下、基本方針における具体的な問題点を列挙する。

    「基本方針」の問題点

    1. 「基本方針」の策定は「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い、合意のもとに決する」とするこれまでの確約に違反しており、当事者との合意形成を放棄している。
    2. 「基本方針」の前文は、歴史的経緯を歪曲している。特に寮自治会と大学当局がこれまで現棟の補修について議論を積み重ねてきたことを無視している。
    3. 「基本方針」によれば、当面は誰一人吉田寮に入寮できなくなる。その間に寮を切実に必要とする学生の事情が何ら考慮されていない。また「基本方針」では、2015年7月以降5回にわたって出された入寮募集停止の要請を吉田寮自治会が無視しているかのように書かれているが、それは事実の曲解である。募集停止要請は決定ではなく提案であることは、当時の学生担当理事・副学長の杉万俊夫氏が確約で認めている。
    4. 「基本方針」で提示されている「代替宿舎」には何ら裏づけがない。
    5. 現在、吉田寮に住んでいる寮生を非正規/正規、あるいは修業年限という当局の定めた基準で分断し、住居の保障に関して差別化している。
    6. 「代替宿舎」の光熱・水道費が自己負担とされていることは、寄宿寮・光熱水費は低廉であるべきだと認めてきた確約に反する。
    7. 「基本方針」が作成され部局長会議を経て役員会で決議されるまでの議論の過程が何ら明らかにされていない。
    8. 個別寮生宛に送付した通知で、”18年9月以降寮に居住することは「不法占有」となる”と述べている。法的措置をもほのめかして退去を強要する恫喝であり、不当である。とりわけ法的により弱い立場にある留学生の状況を全く理解していない。
    9. 「基本方針」並びにその通知を保護者等に送付していることは、私的な関係を巻き込んだ形で寮生個人に負担を与える行為であり不当である。
    10. 大学公式サイト上での一方的な「基本方針」の公開は多くの人の誤解を生じさせうるとともに寮自治会・寮生個人への圧力であり、問題である。

    1.「基本方針」は吉田寮の寮生に2018年9月末日までの退去を勧告する内容であり、寮生の生活と寮の運営に極めて重大な影響を与えるものである。それゆえに、当局が寮自治会と方針を巡って話し合うのは必須である。しかしながら、吉田寮自治会はこの方針の策定を行う場から排除されてきた。

    従来、吉田寮自治会は団体交渉という形式で寮に関係する問題を大学当局と話し合い、解決を模索してきた。吉田寮自治会と京都大学当局が過去に結んできた確約(150212確約)の第一項目には「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い合意のもとに決する」と書かれている。今回の「基本方針」は明らかな確約違反であり到底認められるものではない。

    現任の学生担当理事・副学長川添信介氏は、これまでの副学長と寮自治会との合意を無視し、職責を放棄している。2015年10月に副学長に就任して以降、寮自治会との団体交渉への出席を拒否し、寮生のみならず寮に関心を持つさまざまな人々が参加できるような大衆団交ではなく、寮側の少数の代表者のみとお互いに氏名・身元を明かしたうえで話し合う円卓会議での交渉のみしか応じないという姿勢を取っている。このこともまた、「吉田寮自治会が団体交渉を希望した場合は、それに応じる」という確約に違反する。

    そもそも、吉田寮に関する問題の話し合いの場は現在住んでいる全ての寮生のみならず寮に関わりのある各人に対して開かれるべきであり、関心意見をもつ当事者を一方的に排除することは不当である。また、少人数の代表者が氏名・身元を当局に明かした形での交渉では担当者が不当な圧力を大学側にかけられる危険性もまた否定できない。今回の当局による「基本方針」は従来の原則を一方的に無視したものであり、当事者との合意形成の放棄であると同時に多くの当事者の声を切り捨てるものである。寮自治会は断固としてこれを認めない。

    2.「基本方針」では、これまで寮自治会と大学当局とが積み重ねてきた吉田寮「補修」の議論の歴史が捨象され、まるで寮自治会が協力しなかったために老朽化が進展したかのように言われている。しかし事実は全く異なる。

    まず「基本方針」で、京大当局は1970年代から吉田寮現棟の危険な状態を認識し、在寮期限を設定して、寮生の安全確保を実現しようと話し合いに努めた、とある。しかし当時、吉田寮自治会が建物の老朽化を問題視し、新自治寮の建設と当座の寮舎の補修を求めていたのに対して、行うべき補修をサボタージュして老朽化を引き起こし(このことは当時の学生部長も認めている)新寮建設に前向きに取り組んでこなかったのは大学当局である。

    その後、2000年代初頭から寮自治会は吉田寮現棟の大規模補修を模索し始めた。2005年には大学当局との合意のもとで実際に耐震調査が行われ、現棟補修の設計を行うにまで至っている(この時は当局の予算の都合により施工には着手されなかった)。当時寮自治会は居住棟の一部を空け、補修工事に向け準備を進めていた。両者協力のもと補修が進められようとしていた事実は、「基本方針」では全く触れられていない。

    次いで「基本方針」では、当局が2009年に「『吉田南最南部地区整備・基本方針(案)』で旧食堂を取り壊して新棟を建設した後に現棟を建て替える方針を示し」たとしている。あたかもこの方針の一環で15年に吉田寮新棟が建てられたかのように読めるが、明らかな誤りである。2011年から12年に吉田寮自治会は赤松副学長との間で老朽化問題について議論を進め、寮食堂(86年に食堂としての機能が停止し、多種多様なイベントスペースとして自主管理されている)は現在地で補修すること、その隣に木・鉄筋混構造の新棟を建設することが合意されるに至った。そして同時に現棟については、速やかな安全確保のために「補修」が有効であること、また現棟の有する建築的価値を認め、補修実現に向け協議を続けることが、文書の形で約束された。なお、当時吉田寮現棟よりも老朽化が著しいと言われていた寮食堂は、15年に無事補修が完了し、耐震性を確保した上で活動を再開している。

    その後大学当局と吉田寮自治会は現棟補修方法の議論を開始し、14年に寮自治会は、法的側面もクリアしつつ現在の形を最大限保つ補修方法を提示した。これに対して赤松副学長は安全性が確保されるならば問題無いとした(14年2月)。更に翌15年、後任の杉万副学長との間でも議論が進み、15年3月の交渉で寮自治会が提示する補修案に学生担当副学長として同意するに至った。その後は大学当局内で現棟を補修することを確認し、調査・設計の段階に移るはずであった。

    ところがその後突然交渉が開催されなくなり、補修の議論が進まない状況となった。同年7月に大学当局は吉田寮の入寮募集停止を発表(「要請」)し、半年ぶりに開かれた交渉の場で杉万副学長は「補修に反対している理事により団体交渉を止められている」ことを明らかにした。理事(の一部)は寮生の安全確保より他の利害関係を優先し、議論を差し止めるという強行手段が取られていたということである。

    15年11月に就任した川添副学長に対しても、寮自治会は現棟補修を進めることを要求し、寮自治会の補修案へのレスポンスを求めた。しかし川添副学長は約2年間に渡り「検討中である」と繰り返すのみで実質的には何ら無回答であり、老朽化対策を棚上げにした募集停止要請のみが繰り返された。17年12月現在に至って出された「基本方針」でも大学当局は、現棟の老朽化対策については「検討を進める」としか述べていない。

    以上の経緯から明らかなのは、吉田寮自治会と大学当局(赤松・杉万両副学長)が早急な老朽化問題解決のために現棟の大規模補修の議論を積み重ねてきたのに対し、この数年間大学当局はこれまでの議論や約束を反故にして、老朽化対策を遅延させ続けているということだ。「基本方針」はこの基本的事実を無視している。

    寮自治会は、部分的・段階的に建物を補修し、寮生が居住しながらでも速やかに耐震性を向上させることができると主張してきた。このことを無視し、他の選択肢を捨象して「安全確保」のために全寮生の退去を必須とする「基本方針」は不当である。京大当局が真に学生の安全を守る責任を果たすならば、速やかに大規模補修に向けた議論を寮自治会と再開すべきである。

    3.「基本方針」で大学当局は2018年1月以降の入寮募集停止を決定したとしている。しかしこれは現在の寮生やこれから寮を必要とする寮生の生活に著しい損害を与えることであり、入退寮選考を行う寮自治会との話し合いなく一方的に決定されてはならない。

    「基本方針」において当局は「5回にわたって入寮募集の停止を要請した」と述べている。しかし、経済的不況が続き大学では授業料の高騰が続く中、吉田寮のような福利厚生施設の必要性は益々高まっており、当局が「要請」を続ける間にも多くの人が吉田寮を切実に必要としている。また一方でこれを考慮するような大学の新たな施策が何ら講じられない(例えば京大の全ての留学生寮の寮費が高額で、厳しい在寮年限があるという問題が何ら改善されない)状況下、寮自治会として安直に入寮募集を停止することはできないと考え、選考を継続してきた。

    また寮自治会はこの「要請」(これが「勧告」などの類ではなく、当局からの「提案」にすぎないことは、最初に「要請」が出された15年7月に杉万副学長との間で確認している)に対して毎回、声明や質問状の形で返答を行ってきた。募集停止措置は現寮生とこれから入る学生の生活を脅かすため避けるべきであること、根本的な問題として吉田寮の老朽化対策を進めることが肝心であること等を説明し、話し合いを求めた上で、入寮選考を継続してきたのである。しかしこれらの説明に対して大学当局は応答せず、補修の議論もなおざりにしたまま、只々同内容の「要請」を機械的に繰り返した。この経緯を鑑みても、寮自治会が「要請」に従わなかったことは、強権的な入寮募集停止「決定」を正当化する理由とはならない。

    京大当局が「基本方針」で認めているように吉田寮を必要としている学生は毎年増加しており、今回の当局の方針は来年以降、そうした学生から修学の機会を奪うことにつながりかねない。即刻撤回し、寮自治会との話し合いを行うべきである。

    4.代替宿舎がどこのどのような施設であるかが全くの白紙の状態であり、何ら具体的な説明が与えられていない。また、方針通りに代替宿舎が確保できる予算根拠などの裏付けも明示されていない。仮に寮生が代替宿舎に移るとしても、今後の生活設計の見通しを非常に立てづらい内容となっている。寮生全員を対象とした在寮期限を定めておきながらこのような具体性の何らない代替施設を提示してくる京大当局は、学生の住居の保障に関して非常に無責任だと言わざるを得ない。

    5.「基本方針」では、吉田寮退去後の寮生の住居の保障を差別化している。寮生が非正規/正規のいずれの区分に属するのか、あるいは修業年限を過ぎているかにより現在の吉田寮の代替宿舎への入居の資格の有無が定められている。資格のない寮生は本人の事情に関係なく4月までという短期間で家探しを強いられることになる。このような方針は非正規/正規の区別や在籍年数に関わらず平等に寮に住めることを認めてきた寮自治会と大学当局の議論とは大きく異るものであり、当局の一方的基準で寮生を分断するような「基本方針」は寮自治会として断じて認められない。

    6.「基本方針」では、代替宿舎の寄宿料・光熱水費に関しても言及がなされており、光熱水費が寮生の自己負担とすることが明記されている。しかしこれは、従来の寄宿料・光熱水費に関しての、団体交渉における議論・その結果としての確約を無視している。これまで、吉田寮側・大学当局は、それぞれの負担区分に応じて光熱水費を負担しあっている。2015年に完成した西寮の場合でも、赤松副学長・杉万副学長は、西寮の負担区分に関しては団体交渉の場で継続協議を行うことに同意していた。現に、杉万副学長との間で寮自治会が結んだ150212確約では、西寮の経済負担に関して現行の負担区分を維持しつつ継続協議を行うことで合意した。同確約の項目15では、学生寮は福利厚生施設であり、寮生の経済負担はなるべく低廉であるべきだという理想も共有された。

    しかし、川添副学長に代わってからの2015年以降、団体交渉が、川添副学長によって拒否され続けているために、開かれていない。そのため、現行の負担区分を維持しつつ継続協議として合意された西寮の経済負担をそもそも話しあうことができていない現状がある。

    それにもかかわらず、今回、代替宿舎の光熱水費を寮生の自己負担とする大学当局の一方的な方針決定がなされた。この一方的な方針決定は団体交渉と確約によってつくられた建設的な議論の流れを無視している。さらにこれは150212確約でも合意された、学生寮の福利厚生施設としての理想を裏切るものであり、経済的事情に関わらず学生の修学を支援するという観点から見た場合、福利厚生の大きな後退と言える。寮自治会としては学生の経済的負担を重くするこのような方針は受け入れることができない。

    7.今回の「基本方針」は吉田寮生全員の生活に関わる重大な事案であるのみならず、学内においても相当な規模の事務手続き及び予算の執行が必要になる事柄である。にも関わらず、具体的にいかなる場でこのような方針が作成され、どのような議論を経て決議されたのかについて何ら具体的な説明がない。さらに寮務担当である学生生活委員会第三小委員会にすら本件について情報共有が行われていない。このように、非公開のまま執行部の独断により、寮生の今後の生活、吉田寮の今後の在り方に関わる大事な議論がなされるなどということは断じて寮自治会として認めるわけにはいかない。

    8.「不法占有」という文言がいかなる法的根拠に基づいての表現なのかが不明である。十分な説明もなく、吉田寮に在寮期限後も居住し続ける寮生には法的措置を当局が取ることを示唆しているとも取れるこの文言は寮生への恫喝であると言わざるを得ず、寮自治会として決して許容できない。

    とりわけ現在吉田寮には多くの留学生が居住している。留学生が京都大学で学問を続けるためには、学籍だけでなく、滞在資格や査証など、入管法の厳しい条件をクリアしなければならない。このような境遇に置かれている人に対し、「不法行為になりうる」という脅しを掛けることは、断じて許されないことである。留学生の立場の弱さに付け込んだともとれるこの暴力は、学問の府であり社会的に道義的な責任も負っている大学の在り方として、到底看過できないものである。

    京都大学は、「国際化を推進する」として留学生の受け入れ数を増やし、国際高等教育院・博士課程リーディングプログラムなどの教育機関を設置してきた。このような大学であるからには、留学生の置かれている状況、すなわち永住権や日本国籍を持たない者の社会的な立場の弱さを理解しておくのは当然のことである。

    現在の国際社会状況の中では、高等教育を受けるために留学する者が数多くいる。その中には日本と、出身国や生まれ育った地域との物価の差から、大きなコストを支払って京都大学に通っている者も少なくない。学問に取り組むために廉価な居住空間など福利厚生を必要とする留学生は現在も多く、これからも増えていくだろうと考えられる。真に留学生の個別の事情に配慮するならば、「不法占有」という脅しを用いて吉田寮の居住を断念させる「基本方針」は認められないはずである。

    9.通知では寮生の保護者等に「基本方針」の決定を通知することが記されており、通知を寮生に送付する以前に既に保護者等に送付済みだったことが明らかにされている。しかし、寮生とは異なり吉田寮の実情や大学当局とのやり取りに関して十分な知識があるとは限らない保護者等に、内容的にも多くの事実誤認をはらむ通知を一方的に送りつけることは、様々な誤解を生じうる。このことにより、自己決定を尊重されるべき寮生個々人が、様々な困難を被ることも当然予想される。私的な関係を巻き込んだ形で寮生個人に負担を与える行為であり、寮自治会として強く抗議する。

    10.大学当局は当事者である寮自治会や寮生個人に通知を送るにとどまらず、京大ウェブサイト上に「基本方針」や関連する通知を掲載した。非常に大きな社会的発言力・影響力をもつ京都大学が公式サイト上で一方的な発信を行うことは、当事者との合意形成を蔑ろにして、内容的にも多くの事実誤認をはらむ「基本方針」を既定路線化することを意味しており、不誠実である。

  • 2017年12月22日: 学生担当理事・副学長への質問状

    川添信介 学生担当理事・副学長 殿

    質問状

    2017 年 12 月 19 日、『吉田寮生の安全確保についての基本方針』(以下、「基本方針」) 並びにそれの策定・実施についての告知が京都大学公式サイト上で出された。あわせて、 これに関する通知が寮生個人宛にメールで送られた。 今回出された「基本方針」は、生活に重大な影響を受ける当事者との間に話し合いがな いまま出されたものであり、かつ内容もこれまでの議論を踏まえていない点、説明が不十 分な点がある。このような問題のある決定は、当事者の意向を無視した形で進めてよいも のであるとは決していえない。したがって、大学当局には少なくとも、寮自治会と寮関係 当事者に真摯に説明を行い、可能な限り当事者の疑問に応える義務がある。 寮自治会は 12 月 20 日に、教育推進学生支援部厚生課窓口を訪問し、これらの決定に責 任のある立場から説明するよう求めた。対応した教育推進学生支援部長の田頭吉一氏は寮 自治会からの質問に対しその場ですべてを責任もって回答することはできないとし、これ を川添副学長に引きつぐと約束した。内容については田頭氏本人がメモを取り、それを川 添理事に伝えることを約束した。大まかな内容については 20 日に電話で川添副学長にも伝 えられたはずである。

    下記 1~4 の質問は、田頭氏が川添副学長からの回答を取りつけると約束した質問を整理 したものである。それぞれ質問について丁寧かつ詳細な回答を求める。また、回答におい ては以下の点を守られたい。 ・質問への回答はできるものから速やかに行い、遅くとも 2017 年 12 月中にはすべての質 問に対して回答をすること。

    ・万が一 12 月中に応えられない質問がある場合は当該質問ごとに回答を出せない理由を示 すこと。 ・本質問状とその回答についての大学当局と吉田寮自治会のやり取りを、大学当局は公式 サイトに掲載するなどして公開をしないこと。

    1. これまでの経緯を無視していることに関して 「基本方針」にはこれまで吉田寮自治会と大学当局が話し合いによって積み上げてきた 議論・約束をないがしろにしている箇所が多く見受けられる。歴史的事実を歪曲・捨象し ているのはなぜか。

    1.1. 「吉田寮生の安全確保についての基本方針」における歴史的経緯の記述について

    「基本方針」の 1 段落目から 4 段落目に事実誤認がある点を認識しているか。たとえば、 2 段落目には「平成元年までの間、寮生の安全確保を実現しようと吉田寮生との話し合い に努めたが、吉田寮現棟の建物の本格的な改善整備は果たされないまま、老朽化が進んだ」とあり、自然現象のように老朽化が進んだように書かれている。しかし、これは事実 の正確な記述とはいえない。大学当局と吉田寮自治会との間でこれまで行われてきた話し 合いのなかで、大学当局が補修に難色を示してきたという事実に触れていないのはなぜか。 実際、補修案については、2005 年に大規模補修に向け、耐震調査及び設計を終えたにもか かわらず、翌 2006 年に当局の予算の都合で計画が頓挫している。さらに、赤松副学長は 2012 年、吉田寮自治会との話し合いにおいて、現棟の補修の有効性を認め、現棟の価値を 損なわない形の補修の実現に向けて協議を進めていくことに合意した。2014 年には寮自治 会が法的条件を満たす補修案を提示し、翌 2015 年、杉万副学長は補修案に同意した。この ように積み重ねてきた議論を、2015 年に就任した川添副学長が反故にしているにもかかわ らず、その事実を捨象しているのにはどのような理由があるのか。

    1.2. 入寮募集について

    「基本方針」では、2018 年 1 月以降は、誰も吉田寮に入寮することはできないとされて おり、これは 2018 年 4 月以降入学する学生が入寮できないということを意味する。また、「基本方針」では「正規学生」には代替宿舎を用意するとしているが、新たに入学する学 生はこうした保障から排除されている。これは、様々な立場の人に入寮を認めてきた吉田 寮の入寮選考権を侵害しているのみならず、経済的に不安を抱える人に京大で学ぶことを 断念させることにもつながりうる。どのような理由から、このような決定を下したのか。

    1.3. 正規学生/非正規学生を区別していることについて

    「基本方針」では京大に 2018 年 4 月の時点で「正規学生の学籍を有する吉田寮生」につ いてのみ、代替宿舎を用意するとしている。このように、学籍の性質による区別を設けた のはどのような理由からか。これまで、寮自治会との話し合いのなかで、このような区別 を設けてこなかったにもかかわらず、そうした歴史を無視して新たな区別を設け「非正規 学生」を住居保障の対象から排除するのはなぜか。

    1.4. 吉田寮自治会が出した補修案について

    上述したように、吉田寮自治会は大学当局に対してこれまで補修案を出してきたにもかかわらず「基本方針」ではそれについての言及がない。これは大学当局はいったん合意した補修案を取り下げるということを意味するのか。仮に取り下げるということであればそれはなぜか。

    2. 通知の決定プロセスについて 「基本方針」は 2017 年 12 月 19 日開催の部局長会議において協議の上、同日開催の役員 会において決定されたとのことであるが、決定に至るまでの経緯・過程をより詳細に開示 せよ。当該文書の原案の作成に関わったのは誰、どこの部署か。また、当該文書に書かれ ている方針の方向性を大まかに決めたのは、いつ、どのような会議体においてか。その会 議体の構成員も明らかにせよ。

    3. 2018 年 9 月を期限とする退去の要求について 「基本方針」では 2018 年 9 月末日までに、現在吉田寮(現棟と新棟の両方)に居住して いる者は退舎しなければならないとしている。さらに寮生に送られた通知では、「退舎期 限」以降に吉田寮に居続けることは不法占有となると述べられている。このような決定を 下したのはなぜか。

    3.1. 2018 年 9 月(一部 3 月)を退舎期限としている理由について

    「基本方針」では 2018 年 9 月末(2018 年 4 月時点で「正規学生」の学籍を有しない学生 は 3 月末)が「退舎期限」に定められているが、どういう理由から 9 月末(3 月末)を期 限に設定したのか。10 月以降に現在の建築物をどうするかは検討中とのことであるが、ど のようなプロセスで、どのような案の検討を進めているのか。

    3.2. 「不法占有」とは

    「退舎期限」以降、吉田寮に居続けると「不法占有」になるとされているが、これはどのような法的根拠があるのか。「不法」とは、どういった法律を根拠にしたもので、どういった事態を指すのか。また、どのような状態が「占有」にあたるというのか。仮に「不法占有」をしていると大学当局がみなした場合、裁判に持ち込むことも考えているのか。

    4. 代替宿舎について 「基本方針」では 2018 年 4 月の時点で「正規学生」の学籍を有する寮生に限り代替宿舎 を用意するとしている。

    4.1. 「非正規学生」ほかに代替宿舎を用意しない理由について

    「基本方針」を読むかぎり、「非正規学生」及び標準修業年限を超過している学生については代替宿舎などの住居保障は行われないこととなっている。これはどのような理由からか。

    4.2. 代替宿舎の予算の裏づけについて 代替宿舎について予算の裏づけはあるのか。流動的な部分も含めてできるだけすみやかに報告せよ。

    4.3. 代替宿舎の光熱水費について 「基本方針」によれば、代替宿舎での光熱水費は使用者の自己負担とされている。これまでの寮自治会との話し合いを無視して、全額自己負担を求めるのはなぜか。

  • 2017年12月20日:「吉田寮生の安全確保についての基本方針」に対しての抗議声明

    吉田寮自治会

    2017年12月20日

    2017年12月19日に京都大学ホームページ上で発表された『吉田寮生の安全確保についての基本方針』(以下、「基本方針」)という題の文書について、吉田寮自治会としての見解を以下に述べる。

    1.「基本方針」の策定は一方的であり、当事者との合意形成を無視している。

    2.吉田寮自治会の入退寮者決定権を侵害している。

    3.「基本方針」には多数の事実誤認が散見される。特に寮自治会と大学当局がこれまで現棟の補修について議論を積み重ねてきたことを無視している。

    1、「基本方針」は吉田寮寮生に2018年9月までの退去を勧告するなど、寮生の生活や寮の運営に直結する重大な問題です。にも関わらず当事者である吉田寮自治会は、その策定プロセスから完全に排除されています。

    従来、吉田寮自治会と大学当局は団体交渉という場で寮に関係する問題の解決をはかってきました。「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い合意のもとに決する」ことは、吉田寮自治会と京都大学当局との「確約(※ 1)」の第1項目により保証されています。今回の京都大学当局の通告は、当事者である自治会・寮生との一切の合意形成プロセスを経ずに、一方的に通達されたものであり、決して許容することは出来ません。

    2、吉田寮の入退寮者決定権は歴史的に吉田寮自治会が担ってきました。寮生という当事者自らが入寮選考を行うのは、大学の審査にみられる実態に沿わない画一的な基準に基づく選別や排除を避けて、より入寮希望者の個別の事情に配慮した柔軟な選考が出来るからです。また 大学当局が入退寮選考権を持つと、大学当局から不当な圧力を受けた者は寮に住めなくなる可能性が高まります。

    「基本方針」において当局は「現在まで5回にわたって入寮募集の停止を要請した」と言います。しかし実際には、その度に寮自治会はこの「要請」に対して返答し、募集停止措置は福利厚生の縮小であること、根本の問題である吉田寮の老朽化対策(大規模補修)の議論を進めるべきことなどを説明した上で、入寮選考を継続してきました。これらの説明に対して大学当局が納得のいく応答をしていません。

    2015年に「要請」を行った際、大学当局は「募集停止はあくまで”要請”にすぎないので確約には違反しない」との見解を示しましたが、今回は「吉田寮への新規入寮は認めない」とあり、まるで寮自治会の入寮選考権を度外視して、募集停止を「決定」しているように読み取れます。そうであるならば、寮自治会として決して認めることはできません。

    3、「基本方針」においては、これまで寮自治会と大学当局が積み重ねてきた吉田寮の補修に関する議論の歴史が、なかったことにされています。例えば2007年には現棟補修案が両者の間で合意され、寮自治会は実際に寮の一部を空けて工事に備えるという対応を行いました。また2012年及び2015年に現棟補修が早急な老朽化対策のために有効な手段であることが確約書の形で確認されています。2014年からは、吉田寮自治会はさらなる具体的補修方法を提案しています。

    このように寮自治会は長年に渡って現棟の大規模補修を要求し、大学当局との議論を行ってきました。最も安全性が問題視されていた寮食堂(「基本方針」で言うところの「旧食堂」)は、両者の合意の上で大規模補修が行われ、現在耐震性を十分に確保した状態で使用されています。ところが2015年秋に川添学生担当副学長が就任して以降は、寮自治会の度々の現棟補修要求にも関わらず、大学当局は「検討中である」と繰り返すだけで、何ら具体的なレスポンスを行わないまま2年半が経過しています。

    「基本方針」においてはこれらの基本的事実が無視され、その他の経緯に関しても事実誤認が多数散見されます。あたかも吉田寮の老朽化は寮自治会に責任がある、と言わんばかりです。真に学生の安全を守るのであれば、入寮募集停止措置を講じ現棟からの退去を一方的に通告して議論を長期化させるような混乱を招くのではなく、現棟補修を速やかに実現するための議論を、吉田寮自治会と行うべきです。

  • 2017年秋季入寮募集停止「要請」に対する抗議声明

    吉田寮自治会への2017年秋期入寮募集停止「要請」

    に対する抗議声明

    2017年8月15日

    吉田寮自治会

    2017年8月10日、川添学生担当副学長名義の文書にて吉田寮の2017年秋期の入寮募集を停止することが「要請」された。吉田寮自治会はこのことに強く抗議し撤回を求め、以下のとおり見解を示す。なおこの見解に基づき、吉田寮自治会は2017年秋期も通常通り入寮募集を行うことを予定している。

    1. 入寮募集停止は吉田寮老朽化の根本的な問題解決とはなりえない。関係当事者の補修要求に真摯に応えず、募集停止のみを通知することは不誠実である。

    吉田寮自治会は、2002年7月の交渉を始めとして長きに渡り現棟補修を行うことを主張してきた。近年では、2012年及び2015年に現棟補修が早急な老朽化対策のために有効な手段であることが確約書の形で確認された。2014年以降、吉田寮自治会は具体的補修方法として「京都市条例案」(後述)を提案している。

    しかし自治会の提案から3年が経過した現在、京都大学当局はこの補修案に対して何らの見解も示さず、また具体的な案を出すでもなく、「検討中である」との返答を2016年7月20日の交渉以来繰り返し続けている。吉田寮の老朽化・災害対策を行って人命を守るという意志が全く感じられない。

    吉田寮自治会は2016年7月26日に山極総長及び川添副学長に対して公開質問状を出し、寮自治会の補修要求に対するレスポンスと二つの学会から出された吉田寮の保存要望書に対する見解を求めた。しかしこれに対する「今回の公開質問状に対する回答は、老朽化対策の緊急の必要性を認めつつ、自治会側の提案も含めて、検討を進めていくこととし、外部団体からの要望書のことも認識している、というものである。なお、このメールをもって回答とし、さらなる回答は行わない。」(原文ママ)という文面の電子メールが教育推進学生支援部厚生課厚生掛より、川添副学長からの伝言として吉田寮自治会に送られるのみであった。公開質問状に対し文責すら無い電子メール上の伝言という形式であり、真摯な対話とはかけ離れた姿勢であると言わざるを得ない。また、回答の内容についても京大当局の見解として全く具体性を欠くものであり、あまつさえそれ以上の対話を一方的に拒絶する旨の付言をしてもいる。吉田寮自治会としては関係当事者からの補修要求に対する大学当局のこのような不誠実な姿勢を強く批判する。

    その一方で、京都大学当局は吉田寮自治会に対し2015年7月から現在まで5度に渡り、老朽化を理由とした入寮募集停止「要請」を一方的に通知している。これは吉田寮自治会からの老朽化・災害対策の要望を無視したうえで、災害時の責任を「吉田寮現棟に住むことを選択した寮生自身」に押し付ける、非常に不誠実で不当な行為であると評価せざるを得ない。また、これまでの吉田寮自治会と京都大学当局との交渉の経緯から考えるに、いま吉田寮自治会が入寮募集停止を受け入れることで現棟の老朽化・対災害化対策についての議論が特段円滑になるとは考え難く、むしろ寮生の生命・財産の安全を守る行動をこれ以上行う必要がないといった態度を大学当局が取るのではないかと懸念している。

    2. 入寮募集停止は寮を切実に必要とする人間を困窮させる上、歴史的に自治寮潰しの常套手段として用いられた手法であり、吉田寮自治会として到底受け入れることはできない。募集停止は老朽化対策に何ら資さず、寧ろ議論の混乱・遅延につながるため、即刻撤回すべきであり今後も出すべきでない。

    吉田寮は京都大学の福利厚生施設であり、経済的に困窮した人への安定した住環境を保証している。寮自治会による入寮選考は、年収額面上に表れない様々な経済事情を抱えた入寮希望者を安易に切り捨てず、福利厚生を広く提供するために非常に重要なものである。入寮募集を停止することは厳しい経済事情を抱えた学生の入進学・在学を阻み、現在・未来の寮生や寮を使用しうる全ての学生など当事者にとって、人生そのものにも深い影響を与える致命的な問題である。

    入寮募集停止は寮生の数を減らして量・質ともに寮自治を弱体化させる廃寮化の布石として、過去の学生寮潰しで用いられてきたという経緯がある。例えば、1980年代吉田寮が一度廃寮寸前まで追いやられた時や1990~2000年頃の東京大学駒場寮廃寮化攻撃の一環として、当局による入寮募集停止が出されている。こうした歴史的経緯や先述したように現棟老朽化への取り組みが何らないことを踏まえると、「募集停止に廃寮化の意図はない」という大学当局の主張は説得力を欠いていると言わざるを得ない。

    こうした理由から、吉田寮自治会は入寮募集停止の要請を受け入れることはできない。吉田寮現棟の早急な老朽化対策が求められる今、入寮募集停止は実質的な解決策とならないばかりか、そのための議論を徒に遅延させるばかりである。京都大学当局に真に寮生の生命・財産を守る責任を果たす意志があるのならば、議論の遅延につながる「入寮募集停止要請」は直ちに撤回すべきであり、今後も出すべきでない。

     「京都市条例案」について

    吉田寮は良質な住環境を保有し、低廉な寮費や学内寮である利便性から、福利厚生施設としても非常に質が高い。吉田寮自治会はこの吉田寮を現在及び未来の吉田寮を必要とする人々に開かれた場とし、福利厚生施設・自治自主管理空間として引き継いでゆく責任がある。また現棟には、建築史的な価値や長きに渡り当事者による自治空間として使用されてきた価値がある。こうした理由から現在寮自治会は、建物の構造を現状から可能な限り変更せずに補修や構造補強により吉田寮を存続させることを求め、具体的手法として「京都市条例案」を提案している。

    建築基準法制定以前に建設された吉田寮を現行の画一的な建築基準法に無理やり適合させた場合、建物の構造を大きく変更せざるを得ない可能性がある。「京都市条例案」とは、「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を吉田寮現棟に適用することで、建築基準法のいくつかの制限を適用除外しつつ、吉田寮という個別のケースに適した柔軟な補修を行い、吉田寮現棟の構造・意匠を可能な限り残したままに耐震性を向上させるという案である。

    一般的に木造建築は継続的なメンテナンスによって非常に長期間使い続けることができる。良質な木材を使い、湿気のたまらない構造的な工夫がされた吉田寮は、築100年が経過した木造建築ではあるが、比較的しっかりとした構造を保っており、補修存続は十分可能であることが再三指摘されている。大学当局が入寮募集停止「要請」で老朽化の根拠に挙げている建築研究協会による吉田寮耐震調査でも、吉田寮の補修は現実的であることが述べられている。

  • 2017年1月31日の熊野寮の家宅捜索と、これに関する川添副学長の発表した文章に対しての抗議声明

    2017年1月31日の京都府警による熊野寮の強制捜査と、『Campus Life News No.12』における川添副学長による記事『熊野寮の捜索』に対する抗議声明

    2017年6月13日

    吉田寮自治会

    2017年1月31日、熊野寮において京都府警による家宅捜索が行われた。また翌2月14日、「Campus Life News No12」に川添学生担当理事・副学長の文責による「熊野寮の捜索」という記事が掲載され、警察の捜索に対して抗議した学生など当事者への批判が展開された。吉田寮自治会は、警察の暴力的強制捜査とそれを容認し抗議の声を封じ込める大学当局に対して、強く抗議する。

    新聞報道等によれば、今回の捜索は3ヶ月前に発生した「公務執行妨害事件」で逮捕された学生の「関係先」に対する捜索であるとされているが、強制捜査という強力な権力の発動を必要とする明確な根拠や妥当性が示されているとは言い難い。政治的思想や活動に対する嫌がらせを目的とした権力乱用であると言える。吉田寮自治会は一自治自主管理団体として、このように公権力が自由な思想や表現を取り締まることを決して容認しない。

    また警察による家宅捜索は、熊野寮自治会や熊野寮生に対して何らの事前通告なく、多数の機動隊員を動員して行われた。当事者を強く威圧し動揺させることを目的とした行為である。このような暴力を背景にした捜査手法に対しても強く抗議する。

    一方、記事「熊野寮の捜索」で川添副学長は、こうした公権力の介入を根拠や妥当性の無さ、暴力性を無視して、「裁判所が判断して強制捜査を許可した」という理由のみで正当化し、これに対する学生など当事者らの抗議を批判している。本来公権力と距離を取り表現や研究の自由を標榜する大学は、外部権力の介入に対して批判的な立場であるはずで、このような強制捜査に抗議しなければいけない。抗議はおろか積極的に容認する姿勢を示している川添副学長の姿勢は大いに問題である。

    上述のように暴力を背景にして行われる警察の強制捜査に対して、現場の当事者から抗議の声が上がることは当然である。また大学職員は警察の不当な行為がないよう監視するため立ち会いを行うのであり、その責任上、警察への抗議を求められることもあり得る。”職員が立会に際して警察の自治や人権を侵害する行為に対して抗議すること”は、近年では例えば熊野寮自治会と大学当局との交渉の中で話し合われ合意され、履行されてきたことでもある。川添副学長の主張はこうした歴史的経緯をも無視している。

    最後に、「熊野寮の捜索」では警察による捜索について、「父兄」や近隣住民からも苦情があるといったことが付け加えられている。しかし、大学の公的発言がもつ影響力を考えれば、このような一面的情報を特段の必要もなく取り出して、大学の広報誌に掲載し拡散させることは行ってはならない。学内団体に対するネガティブな印象を徒に一方的に流布する行為であり、強く抗議する。

    以上を踏まえ、学生担当理事・副学長川添信介氏に対し以下要求する。

    ① Campus Life News No12における記事「熊野寮の捜索」を撤回し、次回の同誌でその旨を表明すること。

    ② 1月31日の家宅捜索について、京都大学として京都府警に抗議すること。

  • 2017年春期入寮募集停止「要請」に対する抗議声明

    吉田寮自治会への2017年春期入寮募集停止「要請」に対する抗議声明

    2017年2月9日

    吉田寮自治会

    2017年2月6日、川添学生担当副学長名義の文書にて吉田寮の2017年春期の入寮募集を停止することが「要請」された。吉田寮自治会はこのことに強く抗議し撤回を求め、以下のとおり見解を示す。なおこの見解に基づき、吉田寮自治会は2017年春期も通常通り入寮募集を行うことを予定している。

    1. 入寮募集停止は吉田寮老朽化の根本的な問題解決とはなりえない。関係当事者の補修要求に真摯に応えず、募集停止のみを通知することは不誠実である。

    吉田寮自治会は、2002年7月の交渉を始めとして長きに渡り現棟補修を行うことを主張してきた。近年では、2012年及び2015年に現棟補修が早急な老朽化対策のために有効な手段であることが確約書の形で確認された。2014年以降、吉田寮自治会は具体的補修方法として「京都市条例案」(後述)を提案している。

    しかし自治会の提案から3年が経過した現在、京都大学当局はこの補修案に対して何らの見解も示さず、また具体的な案を出すでもなく、「検討中である」との返答を2016年7月20日の交渉以来繰り返し続けている。吉田寮の老朽化・災害対策を行って人命を守るという意志が全く感じられない。

    吉田寮自治会が2016年7月26日に山極総長及び川添副学長に対して公開質問状を出し、寮自治会の補修要求に対するレスポンスと二つの学会から出された吉田寮の保存要望書に対する見解を求めた。しかしこれに対する「今回の公開質問状に対する回答は、老朽化対策の緊急の必要性を認めつつ、自治会側の提案も含めて、検討を進めていくこととし、外部団体からの要望書のことも認識している、というものである。なお、このメールをもって回答とし、さらなる回答は行わない。」(原文ママ)という文面の電子メールが教育推進学生支援部厚生課厚生掛より、川添副学長からの伝言として吉田寮自治会に送られるのみであった。公開質問状に対し文責すら無い電子メール上の伝言という形式であり、真摯な対話とはかけ離れた姿勢であると言わざるを得ない。また、回答の内容についても京大当局の見解として全く具体性を欠くものであり、あまつさえそれ以上の対話を一方的に拒絶する旨の付言をしてもいる。吉田寮自治会としては関係当事者からの補修要求に対する大学当局のこのような不誠実な姿勢を強く批判する。

    その一方で、京都大学当局は吉田寮自治会に対し2015年7月から現在まで4度に渡り、老朽化を理由とした入寮募集停止「要請」を一方的に通知している。これは吉田寮自治会からの老朽化・災害対策の要望を無視したうえで、災害時の責任を「吉田寮現棟に住むことを選択した寮生自身」に押し付ける、非常に不誠実で不当な行為であると評価せざるを得ない。また、これまでの吉田寮自治会と京都大学当局との交渉の経緯から考えるに、いま吉田寮自治会が入寮募集停止を受け入れることで現棟の老朽化・対災害化対策についての議論が特段円滑になるとは考え難く、むしろ寮生の生命・財産の安全を守る行動をこれ以上行う必要がないといった態度を大学当局が取るのではないかと懸念している。

    2. 入寮募集停止は寮を切実に必要とする人間を困窮させる上、歴史的に自治寮潰しの常套手段として用いられた手法であり、吉田寮自治会として到底受け入れることはできない。募集停止は老朽化対策に何ら資さず、寧ろ議論の混乱・遅延につながるため、即刻撤回すべきであり今後も出すべきでない。

    吉田寮は京都大学の福利厚生施設であり、経済的に困窮した人への安定した住環境を保証している。寮自治会による入寮選考は、年収額面上に表れない様々な経済事情を抱えた入寮希望者を安易に切り捨てず、福利厚生を広く提供するために非常に重要なものである。入寮募集を停止することは厳しい経済事情を抱えた学生の入進学・在学を阻み、現在・未来の寮生や寮を使用しうる全ての学生など当事者にとって、人生そのものにも深い影響を与える致命的な問題である。

    入寮募集停止は寮生の数を減らして量・質ともに寮自治を弱体化させる廃寮化の布石として、過去の学生寮潰しで用いられてきたという経緯がある。例えば、1980年代吉田寮が一度廃寮寸前まで追いやられた時や1990~2000年頃の東京大学駒場寮廃寮化攻撃の一環として、当局による入寮募集停止が出されている。こうした歴史的経緯や先述したように現棟老朽化への取り組みが何らないことを踏まえると、「募集停止に廃寮化の意図はない」という大学当局の主張は説得力を欠いていると言わざるを得ない。

    こうした理由から、吉田寮自治会は入寮募集停止の要請を受け入れることはできない。吉田寮現棟の早急な老朽化対策が求められる今、入寮募集停止は実質的な解決策とならないばかりか、そのための議論を徒に遅延させるばかりである。京都大学当局に真に寮生の生命・財産を守る責任を果たす意志があるのならば、議論の遅延につながる「入寮募集停止要請」は直ちに撤回すべきであり、今後も出すべきでない。

     「京都市条例案」について

    吉田寮は良質な住環境を保有し、低廉な寮費や学内寮である利便性から、福利厚生施設としても非常に質が高い。吉田寮自治会はこの吉田寮を現在及び未来の吉田寮を必要とする人々に開かれた場とし、福利厚生施設・自治自主管理空間として引き継いでゆく責任がある。また現棟には、建築史的な価値や長きに渡り当事者による自治空間として使用されてきた価値がある。こうした理由から現在寮自治会は、建物の構造を現状から可能な限り変更せずに補修や構造補強により吉田寮を存続させることを求め、具体的手法として「京都市条例案」を提案している。

    建築基準法制定以前に建設された吉田寮を現行の画一的な建築基準法に無理やり適合させた場合、建物の構造を大きく変更せざるを得ない可能性がある。「京都市条例案」とは、「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を吉田寮現棟に適用することで、建築基準法のいくつかの制限を適用除外しつつ、吉田寮という個別のケースに適した柔軟な補修を行い、吉田寮現棟の構造・意匠を可能な限り残したままに耐震性を向上させるという案である。

    一般的に木造建築は継続的なメンテナンスによって非常に長期間使い続けることができる。良質な木材を使い、湿気のたまらない構造的な工夫がされた吉田寮は、築100年が経過した木造建築ではあるが、比較的しっかりとした構造を保っており、補修存続は十分可能であることが再三指摘されている。大学当局が過去の入寮募集停止「要請」で老朽化の根拠に挙げた建築研究協会による吉田寮耐震調査でも、吉田寮の補修は現実的であることが述べられている。