吉田寮の設備と機能

吉田寮の設備と機能

2021紹介パンフ

文責:M45

 本文は来るべき新入寮生ひいては読者全般に向けて、吉田寮現棟及び食堂、新棟の設備、機能をまとめたものである。この文書は読者の皆様が入寮した際に参考となるような、いささか実用的なものにしようと思う。従って挨拶はこの程度にとどめることとする。

【吉田寮現棟】

 吉田寮現棟(以下現棟)は築百余年、木造二階建てであり、受付を中央に構えた南北に延びる管理棟及び、そこから東に延びる三棟からなるE字の建物である。住居は主にこれらの三棟になり、南の建屋から順に南寮、中寮、北寮と言う。中寮は他の二棟よりも若干短い。南寮と中寮の間、中寮と北寮の間には中庭があり、それぞれ南中間(なんちゅうかん)、北中間(ほくちゅうかん)などと言われる。南寮の南には駐車場があり乗用車二十台は収まるほどの広さではないだろうか。各棟各階の廊下には一か所共用の火口とシンクがある。トイレはオールジェンダーで、管理棟の北の端と各棟の東の端にある。現棟の収用人数は一部屋に何人住むかによるのだが、一応200人弱ということになっている。

 管理棟には寮の機能が集中しており、受付、漫画部屋、大部屋、麻雀部屋、ゲーム部屋などの機能的な部屋が殆どである。受付は管理棟の中央に位置する寮の玄関で最近は常に寮生が待機している。そこでは荷物の受け取り、来訪者の対応をするほか、電話を取ったり、寮内放送を利用することができる。漫画部屋には新旧の漫画が壁いっぱいに並べられているが、小さな会議室としても頻繁に利用されている。大部屋とは、部屋割りが決まるまでの最初の一、二か月に新入寮生が集団生活を送る文字通り大きな部屋のことをいう。大部屋は、大きいものから順に、旧印刷室、茶室、ビリヤード部屋、舎友と言われる。特に、旧印刷室は寮生の憩いの場であり、恒常的に人がいる。適当に飲み食いしたり、ボドゲやスイッチで遊んだりしているうちに夜が更けてしまうのは、大部屋と言う場が我々をそうせしめるのであって、誰のせいでもない。麻雀部屋とゲーム部屋に関しては、私があまり利用しないので語ることはない。文字通りの部屋である。

 南寮、中寮、北寮は居室がほとんどを占める。これらは全て南向きで、6~10畳ほどの広さがあり、押し入れがついている。当然冷暖房は設置されていないので、個人で調達する必要がある。しかし某寮生の話によれば、夏は居室に日が差し込みすぎないように、冬は十分に日光を取り入れるように軒が設計されており、そこここに建築家の気遣いが感じられるようである(と言っても盆地の京都市は夏冬の温度変化が激しく、夏は暑く冬は外と変わらない寒さであるから過酷な環境であることには変わりない)。確かに階段の手すりの造形や、踊り場に注ぐ日光の程よいことは、それを使う居住者の快適さにつながっていると言えなくもない。

 現棟は老朽化が認められる。例えばスライドできなくなった廊下の木枠のガラス戸や瓦の損壊、水道管の軽微な損傷等である。本来こういった箇所の補修は大学の厚生課なりが対処すべきなのであるが、三年前に端を発した、当局の清々しいとも言うべき廃寮攻撃のために、現在は補修が停滞しているだけでなく、自己補修も勝手にやるなと言うありようだ。そこで現在は寮生有志による補修が行われている。某寮生らによる南寮二階の自室改装は見事で、壁を塗りなおし、天井にファン付きの照明を取り付け、床にはベージュの厚い絨毯を敷き、同じ系統色のL字ソファを壁に沿うように設置し、その傍には揺り椅子も置かれている。さらにワインなどを飾るガラス戸付きの棚まで用意されている。これら多くはヴィンテージと見受けられる。晴れた日、南向きの部屋はよく陽が差す上に、家具の色も相まって、全体的に白やベージュの明るい色を帯びているのがまたこの上なく優雅なのである。また居室のみならず、廊下等の共有スペースの維持清掃も寮生が行う。三か月に一度の大掃除では二回に一回ほど、廊下に油をひく。現棟を訪れたものはみな、その家屋のたたずまいをみて、恐る恐る軋む床板の上に立つのであるが、それでもなお我々はここを大切に使い維持していることを強調しておく。

【吉田寮食堂と厨房】

 吉田寮食堂(以下食堂)は京大に現存するものの内、現在確認できる中で最古の建物である。東大路から受付に真っすぐ歩いていくとその左手に見える現棟と同じくらいの高さの建物がそれである。食堂は2015年に全面改修されたので、初めて見る人にはこれが現棟よりも古い建屋であるとは信じがたいだろう。構造の一部、例えば内部の三本の柱などは補修前のものをそのまま使っているが、あとは全て新しくなっている。内部は広々とした空間と厨房に分かれている。1980年代に当局が、最近のように吉田寮生を一方的に追い出そうとした際に、炊フを解雇してしまったため、現在に至るまで食堂全体の給仕機能が損なわれている(別に再開も予定していない)。厨房は目安20畳ほどで、コンロやシンク、調理台の他に、ギターやドラムセット、マイク、スピーカー、アンプ等がそろえられていて、自炊は勿論バンド練習やライブができるようになっている。ここは寮内では「厨房」という固有名詞で呼ばれ、厨房と言えば調理場を意味せず、この楽器の置いてあるところを指して言う。更に広い方の空間においては単管と平台で舞台を組み、厨房よりも大規模なライブをしたり外部の劇団を呼んで演劇が行われることもしばしばである(ここ一年はアイツのせいでイベントは開催されていない)。コロナがない時期はイベントの日は勿論、平常時にも様々な人間が日夜出入りする。安酒で酔い、寮生が調理した原価ギリギリの何かを食い、歌詞も題名も知らぬ大音量の音楽のせいで、相手の声が聞こえないために、大声で話したりする。こういった交流は寮生、寮外生双方にとって、食堂利用の醍醐味であり、その時々に起こる珍エピソードは、後々人に話せばよい話のタネになろう。私も寮生になる前はこの食堂で寮生と戯れたり、一緒にイベントを盛り上げたりもした。もっと主体的に食堂の運営に関わろうとする寮外生もいた。このように「食堂」とは名ばかりで、その機能はむしろ寮と外部を結ぶパイプであるといった方が適切かもしれない。この一年間、某アイツと聞く何某のバイアラスのために外部との交流が断たれた今、食堂の本来の機能を取り戻そうという声が徐々に上がってきている。オープンスペースとして機能する食堂もまた、吉田寮の重要な施設である。

【吉田寮新棟】

 吉田寮新棟(あるいは西寮、以下新棟)は大学との交渉の末獲得された建物で、地下一階、地上三階建て、築六年の現代的な鉄筋コンクリートと木造の混構造で、エレベータも設置されている。新棟は、東大路と食堂に挟まれるようにして、東西に二本の棟がコの字に延びるように建てられている。地上の建屋が住居であり、収容人数はおおむね100人と言われている(ちなみに現棟の収容人数は200人弱であったから、吉田寮は全体でかなりの人数が居住できることになる)。各階には6~8畳、南向き(一部西向き)の居室が16室と個室トイレが4つ、多目的トイレが1つ、洗面台が4つ、そして共用ラウンジが一つづつ用意されている。また、バルコニーがあるが、各居室はバルコニーを共有するように設計されている。地下には筋トレ器具が置いてある広々とした多目的スペース及び、共同炊事場、ダイニング、個室トイレ、ランドリー、シャワー十基(バリアフリー仕様のもの一基含む)が設置されている。トイレはどれもオールジェンダーである。また、居室は畳と高い天井、頑丈な壁、LED照明、厚いガラス戸、押し入れ、バルコニーを備えた現代的なアパートの雰囲気を呈する。やはりエアコンはついていないため自分で調達する必要がある

 新棟には機能的な部屋があまりないことが特徴として挙げられる。というのも新棟ができた際そこに機能的な部屋を設けない旨の合意が寮内で採られたためである。そのほとんどは上に述べたように管理棟にあるので、寮生は主に新棟を生活上実用的な設備が集合した場所と認識しているのではなかろうか。実際、洗濯、風呂は新棟に来るしか選択肢がない。一方で会議は別に新棟の空き部屋や地下の多目的スペースを使っても何ら差し障り無いのだが、なぜか9割以上は管理棟の漫画部屋や食堂で開かれる。吉田寮ではこういった機能のセパレートが生じているといえよう。

 また新棟の特徴としてバリアフリーな設計が意識されていることが挙げられる。エレベーターで地下から三階まで移動できるし、各階に多目的トイレがあり、地下にもバリアフリーのシャワー室がある。また各階フラットな作りが特徴で、段差が少ない。