カテゴリー: 声明

  • 「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    國府 寛司 殿

    吉田寮自治会
    2023年8月15日

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長國府寛司氏は2023年8月2日、京都大学公式HP上において「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について(※1)」なる文書(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、吉田寮自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において國府理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると吉田寮自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て吉田寮自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。

     その上、吉田寮自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った(※2)。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     吉田寮自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と吉田寮自治会において結ばれた確約に基づいて実施している。この確約とは大学当局と吉田寮自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が吉田寮自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって吉田寮自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも吉田寮自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

     また、吉田寮自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、吉田寮自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (訴訟について)

     2019年、大学当局は吉田寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、吉田寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、吉田寮自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

     さて、現在吉田寮に居住している吉田寮自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者(※3)は吉田寮現棟への居住を裁判所により確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で寮自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

     また、吉田寮自治会は2023年秋期入寮募集を行う旨を公式HP(※4)上にて発表しているが、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない吉田寮西寮(2015年竣工)に限って実施すると公表している。國府理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない吉田寮西寮への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。西寮の存在を隠蔽し、吉田寮自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

    (入寮募集の責任について)

     以上を鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、吉田寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、吉田寮自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、吉田寮自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

     吉田寮自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。

    (注釈)

    ※1 https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2023-08-02-0

    ※2 2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

    ※3 2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。

    ※4 https://www.yoshidaryo.org/

  • 230601進行協議の報告

    2023年6月1日(木)10時半より京都地方裁判所において吉田寮現棟・寮食堂明渡請求訴訟の進行協議が行われました。今回の進行協議は、裁判上の和解について協議する場として裁判官により設定されたものでした。

     結果として、和解は成立しませんでした。京大当局が裁判を取り下げなければ、2023年7月20日に最終口頭弁論が行われ、結審・判決に至ります。

     しかし吉田寮自治会としては元より、京大当局との話し合いによる合意形成(和解)を求めていますし、それは裁判上の手続によらず十分可能です。私たちは、京大執行部が意見の異なる者との対話・歩み寄りの可能性を一切排除し法的措置による立ち退きに固執するのをやめて、当事者との話し合いによる問題解決に立ち返ることを求めます。

    ※6/22(木)追記:7/20(木)に予定されていました、吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟・第一審最終口頭弁論(結審)は延期となります。延期後の日程は決まり次第告知します。

    ※6/30(金)追記:第一審・結審の日時が10/5(木)11時に決定しました。同日、学内にて裁判報告集会を開催する予定です。詳細は決まり次第告知します。

  • オンライン署名「吉田寮を残したい!京大は裁判をやめて!(2023年開始版)」を開始しました

    オンライン署名「吉田寮を残したい!京大は裁判をやめて!(2023年開始版)」を開始しました

    オンライン署名活動「吉田寮を残したい!京大は裁判をやめて!2023年版」を開始しました。署名、拡散にご協力いただけると幸いです。どうぞご賛同をお願い申し上げます。

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    <署名ページ(change.org)へのリンク>
    https://www.change.org/p/%E5%90%89%E7%94%B0%E5%AF%AE%E3%82%92%E6%AE%8B%E3%81%97%E3%81%9F%E3%81%84-%E4%BA%AC%E5%A4%A7%E3%81%AF%E8%A3%81%E5%88%A4%E3%82%92%E3%82%84%E3%82%81%E3%81%A6-2023%E5%B9%B4%E9%96%8B%E5%A7%8B%E7%89%88?redirect=false
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    ~署名ページ説明文~

    みなさんこんにちは!私たちは京都大学吉田寮に暮らす寮生です。吉田寮は現在、京都大学執行部に寮の建物からの立ち退きを要求する裁判を起こされており、存続の危機にあります。

     私たちは京都大学執行部に以下のことを求めます。

    1、現棟の老朽化対策を含む今後の吉田寮のあり方について、団体交渉を含む、寮自治会など当事者との話し合いを再開すること

    2、吉田寮自治会と京大の歴代役職者が締結してきた確約を引き継ぐこと

    3、寮生・元寮生を被告とした建物明渡請求訴訟を取り下げること

    2023年5月6日 吉田寮自治会

    吉田寮の現在の状況

     吉田寮は1913年より続く日本最古の現存する学生自治寮であり、現在でも現棟(1913年建造)と新棟(2015年建造)の二つの建物におよそ120人の寮生が暮らしています。

     寮生自身が寮の運営・管理を行う自治寮であり、長きに渡って大学と公開の場の話し合い(団体交渉)によって約束を定め、寮のあり方を考えてきました。

     長い歴史を持つ現棟の老朽化が指摘されて以降も、寮自治会側から改修案を出して老朽化対策のために話し合いを重ねてきました。

     しかし京都大学は2015年10月以降寮生との話し合いを拒み、2017年12月、突如として新入寮生の募集停止と吉田寮に居住している全寮生の退去を求める「吉田寮生の安全確保についての基本方針」を一方的に発出しました。これは、それまで吉田寮と大学とが話し合いを経て形成してきた数多くの合意を全く無視したものでした。

     それだけに留まらず、京都大学は吉田寮の現棟と食堂の明け渡しを求めて、2019年には吉田寮生を提訴するという強硬手段に出ます。 

     この裁判は第一審が京都地方裁判所で争われており、今年(2023年)の7月に結審し(法廷での最後の議論がなされ)、そして年内に判決が出る見込みです。

     吉田寮自治会は一貫して、京都大学がこの裁判を一刻も早く取り下げ、論点となっている吉田寮現棟の老朽化対策に関する話し合いを再開することを要求してきました。ですが、大学は裁判が進行していることを口実に、寮との対話に全く応じようとしてきませんでした。

    訴訟の問題点

    京都大学が吉田寮生を相手に起こしたこの裁判は、いくつかの重大な問題を含んでいます。

     まず、この訴訟は、その前段階の「基本方針」と合わせて、これまでに吉田寮と大学とが築いてきた数多くの確約(合意)を無視したものでした。私たちがこれまで大学と結んできた確約には、話し合いに基づいて吉田寮のことを決定することが明記されています。裁判所という外部の機関に決着を委託する形で寮生を追い出そうとすることは、確約への明確な違反です。

     これらの合意は、大学側の学生部長や副学長が責任をもって寮自治会と結んだものであり、組織同士の約束です。今の大学執行部はこれを担当者が「個人的に」結んだものに過ぎないと言っていますが事実に反しており、組織間の約束を一方的に破ることは到底許されるものではありません。

     また、京都大学は寮生立退きの主な根拠として現棟の老朽化を掲げていますが、その解決のためには、裁判によって無理やり寮生を追い出すことよりも、当事者との対話を通じて現棟の老朽化対策を行うことがより望ましいはずです。

     京都大学は「対話の精神」を基本理念として掲げていますが、今実際に行っていることはまさしく正反対の行為です。

     また、そもそも大学という場において、学生と大学執行部との間には大きな權力差があります。權力、金銭力を有する主体が、そうでない主体に対して無用な訴訟を仕掛け、金銭的・精神的に圧力をかけることはSLAPP訴訟と呼ばれ、たとえばアメリカの一部の州では規制されている程に不当な行為です。本来話し合いによって解決を図ることができる学内問題について、大学執行部が学生である寮生を訴えることはまさに恫喝的なSLAPP訴訟に当たります。

     事実、吉田寮生は裁判により金銭的にも精神的にも多大な負担を強いられています。未来の世界のために学び生活する寮生が、一刻も早く本来の生活に戻れることを望みます。

    吉田寮の意義

     100年以上の歴史を持つ吉田寮ですが、コロナ禍を経た今、安価な家賃で住むことができ、人と人とのつながりが保障された福利厚生の場として、その重要性は日に日に増しています。

     吉田寮は、そこに暮らす寮生自らが寮のあり方を決めていく自治寮です。多様な年齢、ジェンダー、国籍の人々が共に暮らし、セーフティネットとして、また未来の社会を模索する場としての役割を担っています。

     吉田寮現棟は建築的にも非常に貴重な歴史的建造物であり、日本建築学会近畿支部と建築史学会から保全の要望書が提出されています。

     また、吉田寮は京都大学が基本理念の「社会との関係」の条項に掲げてもいる「開かれた場」としての機能を果たしてきました。大学は単なる学生と教員、研究者の空間であるだけでなく、社会を構成する多くの人が関わる交流と知の創造の空間としての役目も持っていると、私たちは考えます。

     特に裁判で明け渡しの対象になっている吉田寮食堂は、寮内外の人がイベントを企画し、芸術表現の創造の場、学生と市民の学ぶ場として機能してきました。コロナ禍を経て、人と人とがつながり語り合う空間の重要性は一層認知されるようになっています。

     こうした意義をもつ吉田寮を後世につなげていくために、私たちは、京都大学が一刻も早く裁判を取り下げ、吉田寮自治会との対話を再開することを望みます。

     そして、京都大学を動かすためには、寮生だけでなく、幅広い立場の方々の声が必要です。

     是非とも、このキャンペーンにご署名いただくとともに、共有もお願いしたく存じます。私たちの運動に賛同・シェアいただければ、この上ない喜びです。

    署名ページはこちら

  • 確約引き継ぎを求める公開要求書

    【PDFのダウンロードはこちらから】

    京都大学 教育、学生、入試担当理事 兼 副学長 國府 寛司殿
    京都大学 役員会御中

    確約引き継ぎを求める公開要求書

    2023年4月15日
    吉田寮自治会

    目次

    1. 概要
    2. 用語解説
    3. 背景
    4. 項目解説
    5. 注釈

    1、概要

    吉田寮自治会は、本日2023年4月15日時点での京都大学学生担当理事である國府寛司殿、そして京都大学の役員である皆様へ以下の通り要求します。2023年5月20日までに回答してください。なお、やむを得ない事情により期限までに回答できない場合は、その理由と共にいつまでに回答できるかを吉田寮自治会までお知らせください。

    ・吉田寮自治会と歴代役職者が締結してきた確約を引き継ぐこと

    2、用語解説

    吉田寮自治会
     吉田寮自治会とは、吉田寮に居住する全寮生によって構成される自治組織です。

    歴代役職者
     ここでいう歴代役職者とは、主に寮自治会との団体交渉において京都大学当局の代表者として登場し、確約書に押印してきた人物群を指します。大学法人化以前は学生部長が、法人化以降は副学長と学生担当理事を兼任している者がそれにあたることが多く、現在は國府寛司副学長が該当するものと思われます。

    確約
     確約とは、吉田寮自治会と京都大学の間で取り決められた約束事、及びそれを文字に起こしたものに京都大学の責任者と吉田寮自治会の代表者が署名・押印して成立する文書のことを指します。確約は基本的に団体交渉の結果結ばれるものであり、「特定の議題に関して交渉の結果得られた合意事項を確認するもの」と「寮自治会と大学当局の関係のあり方や抽象的な方針などの確認事項も含む包括的なもの」の2種が存在します。今回引き継ぎを求めるのは後者のうち最新のもの(杉万元副学長と2015年2月12日に締結された確約、以下「150212確約」と記述)です。150212確約を含む全ての包括的確約の最終項には「吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ」という文言があり、今回の要求は150212確約のその条項に則ったものです。

    引き継ぐ
     当然ながら引き継ぐとは内容を承認することを含みます。事情や環境が変わって合意の内容を変更する必要性に迫られたのであれば改めて話し合いの場を開いてそのことを述べ、相手と合意に至る努力をすべきであり、両者が合意し署名までした事項について一方的に無視することは自身の社会的信用を毀損する行為と言えるでしょう。また形式的には、今回引き継ぎを求める150212確約の最終項にある「次期の副学長に」引き継ぐという文言が達せられるには川添信介・元副学長に引き継がれることが必要不可欠でした。しかし実際には川添氏にこの確約が引き継がれることはなく、川添氏の副学長就任以降確約の引き継ぎが断絶しています。そこで吉田寮自治会は、國府現副学長への引き継ぎを以て150212確約における最終項の理念が遡及的に達せられ、自治会と京都大学当局の間の関係の回復が図り得るものと考え、今回の声明にて國府氏への確約引き継ぎを求めています。

    3、背景

     「2.用語解説」の「確約」の項にて確認した通り、包括的確約はその最終項に当たる引き継ぎ条項によって次期担当者への引き継ぎをその内容に含んでいます。実際2014年就任の杉万元副学長の代までは新しい副学長の就任とともに引き継ぎのための団体交渉が行われ、先代の副学長と交わされた確約について全ての内容を確認した上で新たな包括的確約が結ばれてきました。しかし、杉万氏に代わり2015年に就任した川添元副学長は団体交渉への出席を拒絶し、それどころか過去に締結された確約書は「半ば強制されて」成立したもので「本学の正式な機関決定を経て署名されたものではな」いため無効である、と主張しました(※1)。川添氏のこれらの言動についてはかねてより批判している通り(※2)ですが、今回確約の引き継ぎを考えるにあたって重要となるのは川添氏が無視したからといって確約の有効性が損なわれることはないという点です。「2.用語解説」で先述した通り確約とは吉田寮自治会と京都大学当局の二者が代表者を通して結んだ合意であり、その内容を否認するのであれば改めて二者の合意をとりもつための公開の話し合いの場を設けるべきであると言えるでしょう。話し合いを公開の場で行うのは、双方の間に存在する大きな権力差を僅かなりとも緩和し、また吉田寮に関係・関心をもつ多様な当事者(※3)を話し合いの場から排除しないためです。実際2015年までの数十年間にわたり、この公開の場での話し合いを通して寮自治会と大学当局は合意形成をはかり、吉田寮食堂の補修・新棟の建設(2012年に確約締結、15年に完了)など、吉田寮の運営に関する問題についてともに取り組んできました。確約を否定した川添氏は確かに京都大学側の責任者ではあったものの、川添氏の任期中に確約を更新する(あるいは破棄する)ような何らかの合意が結ばれたという事実はなく、結果として150212確約は現棟食堂明渡請求訴訟が継続中である現在も有効なままです。

     さて、形式的に「引き継ぐ・引き継いだ」旨を寮自治会に伝えるだけでは、引き継ぐことの意味をなしません。これは確約を引き継ぐにあたっては過去の確約を文字上で認めるだけでなく、その内容をどう解釈するかについても吉田寮自治会と京都大学当局との間で合意し、現状に即した新たな確約を締結することが必要であるためです。確約の引き継ぎとは、合意形成のプロセスを引き継ぐことを含意するのです。150212確約が締結されてから8年が経過しようとし、寮自治会・大学当局の双方を取り巻く環境が変化している現在、双方にとって納得できる内容をもって合意を結ぶ必要があります。従って、現状の両者のスタートラインとなる150212確約の各条項についてその意味するところを相互に確認し、認識の食い違いのあるところは擦り合わせ、その上で新たな確約の内容について合意を目指すための話し合いの場が必要になります。なお、私たちは新型コロナウイルス感染症が完全に収束してはいない現状においては、オンラインツールを利用するなど感染症対策に留意し多くの人が参加できるように開かれた形での新たな話し合いの形式についても、寮自治会・大学当局の双方で協力して模索したいと考えています。

    ※1 2018年8月28日 川添信介理事『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』
    ※2 2020年10月1日 吉田寮自治会『2020年10月からの京都大学役員一同への要求書』などを参照。
    ※3 ここで「当事者」という言葉を用いているのは、吉田寮に関係する主体は居住者である寮生だけではなく、寮籍の有無にかかわらずさまざまな関わり方をする「寮外生」もまた吉田寮という環境を形成する一員であるという事実を強く意識するためです。京都大学の学生寄宿舎である吉田寮に居住できるのは寮生のみですが、吉田寮が外界と切り離されて存在するわけではない以上、寮生だけを利害関係者として見なすことはさまざまな軋轢を生みます。

    4、項目解説

     この項目では、前項以前の各所で触れてきた150212確約の内容―とりわけ現在にも適用され得る重要な項目―について確認します。確約の全文については吉田寮公式ホームぺージに掲載されている(※4)のでそちらを参照してください。

    ※4 https://www.yoshidaryo.org/kakuyaku/

    項目1「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が団体交渉を希望した場合は、それに応じる。」

    [解説]

     150212確約の第一項に設定されているこの項目は二つの部分、すなわち⑴合意による寮運営と⑵団体交渉への応答によって成り立っています。

     これまで吉田寮自治会は、寮生など当事者間の「話し合いの原則」を軸としながら、差別や抑圧を可能な限り減らし学生の学ぶ権利を確保することを目指して京都大学の学生寮として責任ある自治を担ってきました。性のあり方や国籍による入寮資格の制限を撤廃し、福利厚生の門戸を吉田寮自治会が主体的に広げてきたことは、その一例です。

     他方、大学執行部が一方的に寮のあり方を決め、その決定を居住者である寮生に押し付けることは、学生の生活実態にそぐわない、福利厚生施設として不適切な運営を招きかねません。実際、京都大学内の他寮において近年寮費の大幅な値上げが行われ、また当局が管理する留学生寮では在寮年数等が厳しく制限されている現状があります。

     多様な背景・属性を有する当事者が、互いに納得できる結果を得るための「話し合い」というプロセスを経由して初めて、吉田寮は福利厚生施設として十全にその役目を果たすことができます。大学執行部の定める画一的な方針に従った管理・運営では捉え切れないさまざまな課題を克服できる点にこそ、学生自治寮の長所は存在します。逆に言えば吉田寮の管理・運営に際して、寮自治会など当事者の意思が尊重され、当事者との対話と合意形成の上で決定されるのでなければ、福利厚生施設として十分な機能を保持できているとは言えません。つまり、「合意による寮運営」は福利厚生施設としての吉田寮を成立させるための必須条件と言えるのです。

     前項「3.背景」にて詳述した通り、吉田寮自治会と京都大学当局は2015年に至るまで数十年にわたって団体交渉という話し合いの場をもつことによってさまざまな課題を乗り越えてきました。これは団体交渉という形式が寮運営における問題解決に有効であることの証左であり、その有効性は現在でも変わらないと考えられます。当事者の全員が主体的に参加することのできる形での話し合いでなければ、上述した合意による寮運営は有名無実化されてしまいます。従って「団体交渉への応答」もまた、現在も変わらず重要な合意事項であり続けていると言えます。

     現在吉田寮現棟及び食堂は京都大学を原告とし、合計45名の寮生・元寮生を被告とする明渡請求訴訟の対象となっています。学生寮に対する公式窓口である教育推進・学生支援部厚生課に話し合いをしたいと申し出ても「係争中の案件なので話し合いはできない」という回答しか得られず、また学生寮管理を管轄する第三小委員会に繋いでほしいと問い合わせたところ「第三小委員会の議場で吉田寮について扱うことはない」という回答が第三小委員会による議論を経ることなく厚生課窓口から返って来ました。

     しかし我々はそれでも話し合いは可能であり、また必要であると考えています。いわゆる「吉田寮問題」は単に訴訟の勝敗にて決着することはなく、最終的には当事者である寮自治会と大学当局とが互いに納得し合意を結ぶのでなければ真に解決されたとは言えません。私たちは京都大学当局が吉田寮の運営に関する話し合いを再開し、再び合意に基づいた寮運営に戻ってくることを切に願っております。

    項目2「大学当局は、吉田寮の新寮・新規寮の建設と吉田寮現棟の老朽化対策について、吉田寮自治会と誠意をもって合意を形成する努力を行う。」

    [解説]

     ここでは、本文に記す「吉田寮現棟の老朽化対策」に限って解説します(新規寮の建設については、項目12の解説を参照のこと)。

     2017年12月19日、大学当局は「京都大学」文責で『吉田寮生の安全確保についての基本方針』を発表しました。この発表は、寮自治会と大学当局との間の現棟補修案の検討がなされていないままになされています。この補修案の検討をめぐって、寮自治会からは再三にわたって話し合いの再開の要求を行ってきました。それにもかかわらず、当時の大学当局はこれに応じておらず、加えてこの『基本方針』で「現棟の老朽化問題は未解決のまま残された」と記しています。『基本方針』で記されているこの主張は、150212確約以降、この「項目2」の引き継がれることがなかったがゆえに成立しています。

     この「現棟の老朽化問題」について、大学当局と吉田寮自治会には認識の相違があります。吉田寮自治会は現在の大学当局に、『基本方針』で言及されるところの「現棟の老朽化問題」について、認識をすり合わせる努力をしていくことを強く要求します。

    項目10「吉田寮現棟の耐震強度を十分なものとし、寮生の生命・財産を速やかに守るために、吉田寮現棟を補修することが有効な手段であることを認める。」

    [解説]

     前項「項目2」解説でも確認した『基本方針』で、当時の大学当局は「本学はすでに昭和50年代から吉田寮現棟の危険な状態を認識している」と主張しています。2015年に大学当局はこの「危険な現棟に居住する学生がこれ以上増えることを避けるため、吉田寮自治会に対して入寮募集の停止を要請し」ています。この『基本方針』ではこの要請に加えて、安全確保を理由に「吉田寮現棟に学生を居住させ続けることはもはや許されず、可能な限り早急に学生の安全確保を実現することは〔……〕最重要かつ喫緊の課題の一つである」と認定しています。これを踏まえて、大学当局は「平成30年9月末日までに、現在吉田寮に入舎しているすべての学生は退舎しなければならない」と結論づけています。

     しかし、寮自治会は現在、段階的な改修が可能―つまり全面的な寮生の退去を必要としない―、かつ現在の構造や規模を維持できる改修案として、次の3案を検討しました。

    1. 条例適用案:「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を吉田寮に適用することで、現在の構造や意匠を最大限保全して補修する案
    2. RC(鉄筋コンクリート)接合案:建物を部分的に鉄筋コンクリートに置き換えて、建築基準法を適用して補修する案
    3. 居住棟漸次建て替え案:管理棟のみ補修し、より安全性を求められる居住棟は、一棟ずつ現在と同じ規模で建て替える案

    吉田寮自治会は、大学に対しこれらの案を2018年7月の「少人数交渉」で提示しました。この「少人数交渉」において「大学当局でも検討し寮自治会にフィードバックを行う」ことが確認されています。

     この「少人数交渉」にもかかわらず、大学当局は『吉田寮の今後のあり方について』(※5)を公表し、「基本方針を実施する過程において、吉田寮自治会による吉田寮の運営実態が到底容認できないものであることを認識」したと述べた上で、次のように主張しています。「この不適切な実態は、学生寄宿舎設置以来の種々の歴史的経緯があるとはいえ、時代の変化と現在の社会的要請の下での責任ある自治には程遠く、学生寄宿舎である吉田寮を適切に管理する責務を負う本学にとって、看過できないものである。」これに付随するテキストとして、川添氏は厚生補導担当副学長名義で以下のように述べています。「「吉田寮自治会」名で活動し、平成31年1月17日に執行された占有移転禁止の仮処分の対象となった寮生の団体については、危険な吉田寮現棟に居住する寮生を増やし続けたことなどの行為・言動に鑑みて、同様の無責任な行為・言動を改め責任ある自治を実現させない限り、本学は〔……〕詳細に係る今後の検討のための話し合いには応じられない。」(※6)このように「話し合いに応じ」るとはしながらも大学当局側から一方的にその条件を提示し、寮の利害関係者を代表する寮自治会との交渉を避けるという大学当局の姿勢は、『基本方針』発出から『吉田寮の今後のあり方について』に到るまで連続しているものです。居住者の安全確保を目指した寮自治会側からの対案があるにもかかわらず、同じ安全確保を理由に大学当局が補修案を斥け続けているということが現状です。

     もとをただせば、これらの対案をもとにした折衝は、150212確約が引き継がれなかったがゆえに止むを得ず試みられたものに他なりません。150212確約が連綿と寮自治会・大学当局の合同で解釈され、かつ現在的な確約へと更新していく作業がなされ、かくてこの確約が次期の副学長に引き継がれたのであれば、このような齟齬は起こらなかったと言えます。『吉田寮の今後のあり方』では、吉田寮現棟の供用に関して「安全確保に加えて収容定員の増加や設備の充実等を図りうる措置」を講ずるに際し、「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮することとする」と述べられていますが、これは寮自治会側が提示した改修案でも達成可能なものです。それにもかかわらず一致点を見出せなかったのは、大学当局が寮自治会との話し合いに応じてこなかったからではないでしょうか。寮生の安全確保のあり方について、現在の状況に即した新たな「基本方針」を寮自治会・大学当局の合意のもとで形成していくことが求められます。

    ※5 2019年2月12日 京都大学『吉田寮の今後のあり方について』
    ※6 2019年2月12日 川添信介理事『現在吉田寮に居住する者へ』

    項目12「吉田寮新棟の運営は吉田寮自治会が行う。また、大学当局は継続中の協議事項について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が吉田寮新棟に関して団体交渉を希望した場合は、それに応じる。」

    [解説]
     ここでは主に吉田寮新棟建設の経緯やこの条項自体の重要性について述べます(合意による寮運営や団体交渉への応答については項目1の解説を参照のこと)。

     現存する吉田寮新棟は、吉田寮自治会と京都大学当局との間の話し合いの成果のうち近年における最大のものと言えるでしょう。2012年9月18日に赤松明彦・元副学長が署名した確約(※7)にて確認された吉田寮新棟(当時はA棟と呼称)建設についての合意は、赤松氏の副学長就任とともに発展したことによって成立しました。そして新棟の建設以降、当項目に記載のあるように大学当局は吉田寮現棟のみならず新棟の運営も吉田寮自治会が行うことを決めるようになります。これは、大学当局が項目1の解説にて述べたような「話し合いを原則とする自治会による寮運営の意義」を認めたということにほかなりません。そのためこの項目は、吉田寮自治会の存在意義を京都大学当局が認めた条項として重要であると考えられます。

    ※7 この確約では、主に①現寮の処遇は補修の意義を踏まえた上で継続協議していくこと、②新棟を木造と鉄筋コンクリートの混構造で建設すること、③寮食堂を補修することの3点が合意されました。つまり新棟の建設・寮食堂の補修と並行して現棟(当時は現寮と呼称)の処遇に関しての議論を進めていくことが確認されたのであり、川添氏が『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』にて述べた「本学は、止む無く平成 24 年 9 月に、現在の新棟の新築と旧食堂棟の改修のみを行うこととした」という歴史認識は誤っていることがわかります。

    項目17「吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ。」

    [解説]

     「2.用語解説」の「引き継ぐ」の項を参照のこと。

     前項「3.背景」でも確認したように、この確約の引き継ぎは、文字上で確約文書を次期の副学長に渡すだけではなく、その内容の解釈を双方で擦り合わせ、その時の現状に即した新たな確約を結ぶことを含めて行われなければなりません。本項目17で書かれている「責任をもって」とは、この実践的な面をも含めた引き継ぎがなされなけばならないということを含意します。すなわち、形骸的に文書を次期の副学長に渡すだけではなく、その解釈が現在どうなりうるかを検討する作業を、当期の副学長は次期の副学長に要請しなければなりません。

    5、注釈

     当声明にて度々言及されている川添氏の発出した『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』に対する詳細な反論については、以下の声明を参照のこと。 

    https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/1626/

  • 金沢大学当局による泉学寮への寮生退去通告に対する抗議声明

    金沢大学当局による泉学寮への寮生退去通告に抗議する

    吉田寮自治会
    2023年2月15日

    1. 概要

     金沢大学当局は、2023年3月31日をもって学生自治寮である泉学寮を廃寮することを、2019年2月に一方的に決定した[1]。退去期限を迎えようとしている中、吉田寮自治会は金沢大学当局に対し、泉学寮の廃寮及び寮生への退去通告について、厳重に抗議する。


    2. 経緯

     泉学寮は1965年に設置された自治寮であり、金沢大学の男子学生が居住できる。寄宿料月700円、諸経費月約8千円という廉価[2]をもって学生に居住の場を与えることにより、福利厚生施設として、金沢大学において欠かせない役割を担っている。
     2019年2月、金沢大学当局は老朽化を理由として、一方的に泉学寮の廃寮を決定し、寮生に通告した。その後当局と寮生との間で話し合いの場が持たれるも、学生側の意見が聞き入れられることはなく、本年3月末の退去期限を迎えようとしている。


    3. 問題点

     このような当局による廃寮通告には、以下のような問題点が挙げられる。
      (1)金沢大学当局が、適切な話し合いのプロセスを踏んでいないこと
      (2)代替学生寄宿舎が、大学の福利厚生施設としてあまりにも不十分であること

     (1)に関して、大学当局と学生との間の問題は、本来当事者どうしの話し合いで解決されるべきである。しかし金沢大学当局は、廃寮方針を一方的に決定し、当事者である寮生には「説明会」という形で伝えたにすぎない。当局は廃寮の理由を、建物の老朽化、不採算性、民業圧迫としている。しかし、老朽化の根拠は示されておらず、その他の理由も到底廃寮の理由たりえない[3]。のみならず、その後も寮生からの説明を求める要請を無視したり、個々の寮生に対し処分をほのめかしたりと、話し合いを放棄する態度を取っている[4]。

     (2)に関して、金沢大学当局は泉学寮生に対し、留学生との混住型寄宿舎を代替宿舎として提供する方針を示している。これらの学生寄宿舎は寮費が月3万円を上回っている。話し合いではなく、大学当局による一方的な決定により、泉学寮の3倍以上と多額の負担を現在、未来の学生に強いることとなる。また入居条件として、「ある程度の本学における大学生活経験や外国語能力」あるいは「在学時における海外留学等,国際交流活動を具体的に計画している」ことが求められるなど[2]、学生の入居に対する障壁が高い。さらに、これらの寄宿舎は自治寮ではなく、大学当局が管理を民間業者に委託している管理寮である。過去に吉田寮が声明文で言及した[5]ように、自治寮であることと、福利厚生施設であることは不可分である。また、前段で述べた一連の金沢大学当局の姿勢を見ると、やはり学生の立場を反映する寮自治会が必要であるといえる。


    4. おわりに

     金沢大学当局による、老朽化を理由とした泉学寮への一方的な廃寮通告は、以上のような問題点を有している。吉田寮自治会はこれに厳重な抗議を表明するとともに、泉学寮生との話し合いにより問題の解決を図ることを金沢大学当局に要求する。

    泉学寮の存続を求める署名サイトはこちら

    [1] 毎日新聞「金沢大学生寮が廃止の危機 築50年以上、月1万円…安全か安価か」2022年5月21日(https://mainichi.jp/articles/20220520/k00/00m/040/126000c

    [2] 金沢大学公式HP「住居(学生寄宿舎)」(https://www.kanazawa-u.ac.jp/campuslife/livelihood/residence

    [3] 2022年11月2日吉田寮自治会主催全学シンポジウム「開け大学!みんな集まれ」泉学寮生登壇時原稿を参照:https://www.yoshidaryo.org/wp-content/uploads/2022/10/ef8c0ed2322cb16d60a6cf964f2fb914.pdf  

    [4] 「泉学寮廃寮問題に関する要望書」に対する回答への抗議声明を参照: https://twitter.com/sengaku_1965/status/1585466440857141249?s=46&t=xYX1I4T5LtFKBAc9d_GIGg  

    [5] 声明「吉田寮の未来のための私たちの提案」2019年2月20日, 吉田寮自治会(https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

  • 「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    平島 崇男 殿

    吉田寮自治会
    2023年2月5日

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長平島崇男氏は2023年2月2日、京都大学公式HP上にお
    いて「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」[1]なる文書(以下、当該文書)を発出し
    た。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、本自治会はこの文書について
    撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において平島理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い、合意のもとに決する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると本自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て本自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。
     その上、本自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建
    設的な提案を大学当局に対して行った[2]。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     本自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と本自治会において結ばれた確約[3]に基づいて実施している。この確約とは大学当局と本自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が本自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって本自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも本自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

     また、本自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、本自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (訴訟について)

     2019年、大学当局は本寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、本寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、本自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

     さて、現在吉田寮に居住している本自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者[4]は吉田寮現棟への居住を確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で本自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

     また、本自治会は2023年春期入寮募集を行う旨を本寮公式HP[5]上にて発表しているところであり、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない本寮新棟(西寮)(2015年竣工)に限って実施すると公表している。平島理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない本寮新棟への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。新棟の存在を隠蔽し、本自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

    (入寮募集の責任について)

     以上を鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、本寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、本自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、本自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

     本自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた本自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう強く求める。

    [1] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2023-02-02-1

    [2]2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/

    [3] https://www.yoshidaryo.org/archives/kakuyaku/397/

    [4]2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。

    [5] https://www.yoshidaryo.org/

  • 確約引き継ぎを求める公開要求書

    京都大学 教育、学生担当理事 兼 副学長 平島 崇男殿
    京都大学 役員会御中

    吉田寮自治会
    2023年1月15日

    1. 概要

    吉田寮自治会は、本日2023年1月15日時点での京都大学学生担当理事である平島崇男殿、そして京都大学の役員である皆様へ以下の通り要求します。2023年3月31日までに回答してください。なお、やむを得ない事情により期限までに回答できない場合は、その理由と共にいつまでに回答できるかを吉田寮自治会までお知らせください。

    ・吉田寮自治会と歴代役職者が締結してきた確約を引き継ぐこと

    2. 用語解説

    • 吉田寮自治会

     吉田寮自治会とは、吉田寮に居住する全寮生によって構成される自治組織です。

    • 歴代役職者

     ここでいう歴代役職者とは、主に寮自治会との団体交渉において京都大学当局の代表者として登場し、確約書に押印してきた人物群を指します。大学法人化以前は学生部長が、法人化以降は副学長と学生担当理事を兼任している者がそれにあたることが多く、現在は平島崇男副学長が該当するものと思われます。

    • 確約

     確約とは、吉田寮自治会と京都大学の間で取り決められた約束事、及びそれを文字に起こしたものに各主体の代表者が署名・押印して成立する文書のことを指します。確約は基本的に団体交渉の結果結ばれるものであり、「特定の議題に関して交渉の結果得られた合意事項を確認するもの」と「寮自治会と大学当局の関係のあり方や抽象的な方針などの確認事項も含む包括的なもの」の2種が存在します。今回引き継ぎを求めるのは後者のうち最新のもの(杉万元副学長と2015年2月12日に締結された確約、以下「150212確約」と記述)です。150212確約を含む全ての包括的確約の最終項には「吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ」という文言があり、今回の要求は150212確約のその条項に則ったものです。

    • 引き継ぐ

     当然ながら引き継ぐとは内容を承認することを含みます。事情や環境が変わって合意の内容を変更する必要性に迫られたのであれば改めて話し合いの場を開いてそのことを述べ、相手と合意に至る努力をすべきであり、両者が合意し署名までした事項について一方的に無視することは自身の社会的信用を毀損する行為と言えるでしょう。また形式的には、今回引き継ぎを求める150212確約の最終項にある「次期の副学長に」引き継ぐという文言が達せられるには川添信介・元副学長に引き継がれることが必要不可欠でした。しかし実際には川添氏にこの確約が引き継がれることはなく、川添氏の副学長就任以降確約の引き継ぎが断絶しています。そこで吉田寮自治会は、平島現副学長への引き継ぎを以て150212確約における最終項の理念が遡及的に達せられ、自治会と京都大学当局の間の関係の回復が図り得るものと考え、今回の声明にて平島氏への確約引き継ぎを求めています。

    3. 背景

     「2.用語解説」の「確約」の項にて確認した通り、包括的確約はその最終項に当たる引き継ぎ条項によって次期担当者への引き継ぎをその内容に含んでいます。実際2014年就任の杉万元副学長の代までは新しい副学長の就任とともに引き継ぎのための団体交渉が行われ、先代の副学長と交わされた確約について全ての内容を確認した上で新たな包括的確約が結ばれてきました。しかし、杉万氏に代わり2015年に就任した川添元副学長は団体交渉への出席を拒絶し、それどころか過去に締結された確約書は「半ば強制されて」成立したもので「本学の正式な機関決定を経て署名されたものではな」いため無効である、と主張しました[1]。川添氏のこれらの言動についてはかねてより批判している通り[2]ですが、今回確約の引き継ぎを考えるにあたって重要となるのは川添氏が無視したからといって確約の有効性が損なわれることはないという点です。「2.用語解説」で先述した通り確約とは吉田寮自治会と京都大学当局の二者が代表者を通して結んだ合意であり、その内容を否認するのであれば改めて二者の合意をとりもつための公開の話し合いの場を設けるべきであると言えるでしょう。話し合いを公開の場で行うのは、双方の間に存在する大きな権力差を僅かなりとも緩和し、また吉田寮に関係・関心をもつ多様な当事者[3]を話し合いの場から排除しないためです。実際2015年までの数十年間にわたり、この公開の場での話し合いを通して寮自治会と大学当局は合意形成をはかり、吉田寮食堂の補修・新棟の建設(2012年に確約締結、15年に完了)など、吉田寮の運営に関する問題についてともに取り組んできました。確約を否定した川添氏は確かに京都大学側の責任者ではあったものの、川添氏の任期中に確約を更新する(あるいはを破棄する)ような何らかの合意が結ばれたという事実はなく、結果として150212確約は現棟食堂明渡請求訴訟が継続中である現在も有効なままです。

     さて、形式的に「引き継ぐ・引き継いだ」旨を寮自治会に伝えるだけでは、引き継ぐことの意味をなしません。これは確約を引き継ぐにあたっては過去の確約を文字上で認めるだけでなく、その内容をどう解釈するかについても吉田寮自治会と京都大学当局との間で合意し、現状に即した新たな確約を締結することが必要であるためです。確約の引き継ぎとは、合意形成のプロセスを引き継ぐことを含意するのです。150212確約が締結されてから8年が経過しようとし、寮自治会・大学当局の双方を取り巻く環境が変化している現在、双方にとって納得できる内容をもって合意を結ぶ必要があります。従って、現状の両者のスタートラインとなる150212確約の各条項についてその意味するところを相互に確認し、認識の食い違いのあるところは擦り合わせ、その上で新たな確約の内容について合意を目指すための話し合いの場が必要になります。なお、私たちは新型コロナウイルス感染症が流行している現状においては、オンラインツールを利用するなど感染症対策に留意し多くの人が参加できるように開かれた形での新たな話し合いの形式についても、寮自治会・大学当局の双方で協力して模索したいと考えています。

    4. 項目解説

     この項目では、前項以前の各所で触れてきた150212確約の内容―とりわけ現在にも適用され得る重要な項目―について確認します。確約の全文については吉田寮公式ホームぺージに掲載されている[4]のでそちらを参照してください。

    • 項目1「大学当局は吉田寮の運営について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が団体交渉を希望した場合は、それに応じる。」

    [解説]

     150212確約の第一項に設定されているこの項目は二つの部分、すなわち⑴合意による寮運営と⑵団体交渉への応答によって成り立っています。

     これまで吉田寮自治会は、寮生など当事者間の「話し合いの原則」を軸としながら、差別や抑圧を可能な限り減らし学生の学ぶ権利を確保することを目指して京都大学の学生寮として責任ある自治を担ってきました。性のあり方や国籍による入寮資格の制限を撤廃し、福利厚生の門戸を吉田寮自治会が主体的に広げてきたことは、その一例です。

     他方、大学執行部が一方的に寮のあり方を決め、その決定を居住者である寮生に押し付けることは、学生の生活実態にそぐわない、福利厚生施設として不適切な運営を招きかねません。実際、京都大学内の他寮において近年寮費の大幅な値上げが行われ、また当局が管理する留学生寮では在寮年数等が厳しく制限されている現状があります。

     多様な背景・属性を有する当事者が、互いに納得できる結果を得るための「話し合い」というプロセスを経由して初めて、吉田寮は福利厚生施設として十全にその役目を果たすことができます。大学執行部の定める画一的な方針に従った管理・運営では捉え切れないさまざまな課題を克服できる点にこそ、学生自治寮の長所は存在します。逆に言えば吉田寮の管理・運営に際して、寮自治会など当事者の意思が尊重され、当事者との対話と合意形成の上で決定されるのでなければ、福利厚生施設として十分な機能を保持できているとは言えません。つまり、「合意による寮運営」は福利厚生施設としての吉田寮を成立させるための必須条件と言えるのです。

     前項「3.背景」にて詳述した通り、吉田寮自治会と京都大学当局は2015年に至るまで数十年にわたって団体交渉という話し合いの場をもつことによってさまざまな課題を乗り越えてきました。これは団体交渉という形式が寮運営における問題解決に有効であることの証左であり、その有効性は現在でも変わらないと考えられます。当事者の全員が主体的に参加することのできる形での話し合いでなければ、上述した合意による寮運営は有名無実化されてしまいます。従って「団体交渉への応答」もまた、現在も変わらず重要な合意事項であり続けていると言えます。

     現在吉田寮現棟及び食堂は京都大学を原告とし、合計45名の寮生・元寮生を被告とする明渡請求訴訟の対象となっています。学生寮に対する公式窓口である教育推進・学生支援部厚生課に話し合いをしたいと申し出ても「係争中の案件なので話し合いはできない」という回答しか得られず、また学生寮管理を管轄する第三小委員会に繋いでほしいと問い合わせたところ「第三小委員会の議場で吉田寮について扱うことはない」という回答が第三小委員会による議論を経ることなく厚生課窓口から返って来ました。

     しかし我々はそれでも話し合いは可能であり、また必要であると考えています。いわゆる「吉田寮問題」は単に訴訟の勝敗にて決着することはなく、最終的には当事者である寮自治会と大学当局とが互いに納得し合意を結ぶのでなければ真に解決されたとは言えません。私たちは京都大学当局が吉田寮の運営に関する話し合いを再開し、再び合意に基づいた寮運営に戻ってくることを切に願っております。

    • 項目2「大学当局は、吉田寮の新寮・新規寮の建設と吉田寮現棟の老朽化対策について、吉田寮自治会と誠意をもって合意を形成する努力を行う。」

    [解説]

     ここでは、本文に記す「吉田寮現棟の老朽化対策」に限って解説します(新規寮の建設については、項目12の解説を参照のこと)。

     2017年12月19日、大学当局は「京都大学」文責で『吉田寮生の安全確保についての基本方針』を発表しました。この発表は、寮自治会と大学当局との間の補修案の検討がなされていないままになされています。この補修案の検討をめぐって、寮自治会からは再三にわたって話し合いの再開の要求を行ってきました。それにもかかわらず、当時の大学当局はこれに応じておらず、加えてこの『基本方針』で「現棟の老朽化問題は未解決のまま残された」と記しています。『基本方針』で記されているこの主張は、150212確約以降、この「項目2」の引き継がれることがなかったがゆえに成立しています。

     この「現棟の老朽化問題」について、大学当局と吉田寮自治会には認識の相違があります。吉田寮自治会は現在の大学当局に、『基本方針』で言及されるところの「現棟の老朽化問題」について、認識をすり合わせる努力をしていくことを強く要求します。

    • 項目10「吉田寮現棟の耐震強度を十分なものとし、寮生の生命・財産を速やかに守るために、吉田寮現棟を補修することが有効な手段であることを認める。」

    [解説]

     前項「項目2」解説でも確認した『基本方針』で、当時の大学当局は「本学はすでに昭和50年代から吉田寮現棟の危険な状態を認識し」ていると主張しています。2015年に大学当局はこの「危険な現棟に居住する学生がこれ以上増えることを避けるため、吉田寮自治会に対して入寮募集の停止を要請し」ています。この『基本方針』ではこの要請に加えて、安全確保を理由に「吉田寮現棟に学生を居住させ続けることはもはや許されず、可能な限り早急に学生の安全確保を実現することは〔……〕最重要かつ喫緊の課題の一つである」と認定しています。これを踏まえて、大学当局は「平成30年9月末日までに、現在吉田寮に入舎しているすべての学生は退舎しなければならない」と結論づけています。

     しかし、寮自治会は現在、段階的な改修が可能―つまり全面的な寮生の退去を必要としない―、かつ現在の構造や規模を維持できる改修案として、次の3案を検討しました。

    1. 条例適用案:「京都市歴史的建築物の保存及び活用に関する条例」を吉田寮に適用することで、現在の構造や意匠を最大限保全して補修する案
    2. RC(鉄筋コンクリート)接合案:建物を部分的に鉄筋コンクリートに置き換えて、建築基準法を適用して補修する案
    3. 居住棟漸次建て替え案:管理棟のみ補修し、より安全性を求められる居住棟は、一棟ずつ現在と同じ規模で建て替える案

     吉田寮自治会は、大学に対しこれらの案を2018年7月の「少人数交渉」で提示しました。この「少人数交渉」において「大学当局でも検討し寮自治会にフィードバックを行う」ことが確認されています。

     この「少人数交渉」にもかかわらず、大学当局は『吉田寮の今後のあり方について』[5]を公表し、「基本方針を実施する過程において、吉田寮自治会による吉田寮の運営実態が到底容認できないものであることを認識」したと述べた上で、次のように主張しています。「この不適切な実態は、学生寄宿舎設置以来の種々の歴史的経緯があるとはいえ、時代の変化と現在の社会的要請の下での責任ある自治には程遠く、学生寄宿舎である吉田寮を適切に管理する責務を負う本学にとって、看過できないものである。」これに付随するテキストとして、川添氏は厚生補導担当副学長名義で以下のように述べています。「「吉田寮自治会」名で活動し、平成31年1月17日に執行された占有移転禁止の仮処分の対象となった寮生の団体については、危険な吉田寮現棟に居住する寮生を増やし続けたことなどの行為・言動に鑑みて、同様の無責任な行為・言動を改め責任ある自治を実現させない限り、本学は〔……〕詳細に係る今後の検討のための話し合いには応じられない。」[6]このように「話し合いに応じ」るとはしながらも大学当局側から一方的にその条件を提示し、寮の利害関係者を代表する寮自治会との交渉を避けるという大学当局の姿勢は、『基本方針』発出から『吉田寮の今後のあり方について』に到るまで連続しているものです。居住者の安全確保を目指した寮自治会側からの対案があるにもかかわらず、同じ安全確保を理由に大学当局が補修案を斥け続けているということが現状です。

     もとをただせば、これらの対案をもとにした折衝は、150212確約が引き継がれなかったがゆえに止むを得ず試みられたものに他なりません。150212確約が連綿と寮自治会・大学当局の合同で解釈され、かつ現在的な確約へと更新していく作業がなされ、かくてこの確約が次期の副学長に引き継がれたのであれば、このような齟齬は起こらなかったと言えます。『吉田寮の今後のあり方』では、吉田寮現棟の供用に関して「安全確保に加えて収容定員の増加や設備の充実等を図りうる措置」を講ずるに際し、「現棟の建築物としての歴史的経緯に配慮することとする」と述べられていますが、これは寮自治会側が提示した「居住棟漸次建て替え案」に符合するものです。こうした符合にもかかわらず一致点を見出せなかったのは、大学当局が寮自治会との話し合いに応じてこなかったからではないでしょうか。寮生の安全確保のあり方について、現在の状況に即した新たな「基本方針」を寮自治会・大学当局の合意のもとで形成していくことが求められます。

    • 項目12「吉田寮新棟の運営は吉田寮自治会が行う。また、大学当局は継続中の協議事項について一方的な決定を行わず、吉田寮自治会と話し合い、合意の上決定する。また、吉田寮自治会が吉田寮新棟に関して団体交渉を希望した場合は、それに応じる。」

    [解説]

     ここでは主に吉田寮新棟建設の経緯やこの条項自体の重要性について述べます(合意による寮運営や団体交渉への応答については項目1の解説を参照のこと)。

     現存する吉田寮新棟は、吉田寮自治会と京都大学当局との間の話し合いの成果のうち近年における最大のものと言えるでしょう。2012年9月18日に赤松明彦・元副学長が署名した確約[7]にて確認された吉田寮新棟(当時はA棟と呼称)建設についての合意は、吉田寮現棟の老朽化対策として長年望まれていた新棟建設についての交渉が老朽化対策に意欲的であった赤松氏の副学長就任とともに発展したことによって成立しました。そして新棟の建設以降、当項目に記載のあるように大学当局は吉田寮現棟のみならず新棟の運営も吉田寮自治会に委任するようになります。これは、大学当局が項目1の解説にて述べたような「話し合いを原則とする自治会による寮運営の意義」を認めたということにほかなりません。そのためこの項目は、吉田寮自治会の存在意義を京都大学当局が認めた条項として重要であると考えられます。

    • 項目17「吉田寮自治会と確認した本確約の全項目について、次期の副学長に責任をもって引き継ぐ。」

    [解説]

     「2.用語解説」の「引き継ぐ」の項を参照のこと。

     前項「3.背景」でも確認したように、この確約の引き継ぎは、文字上で確約文書を次期の副学長に渡すだけではなく、その内容の解釈を双方で擦り合わせ、その時の現状に即した新たな確約を結ぶことを含めて行われなければなりません。本項目17で書かれている「責任をもって」とは、この実践的な面をも含めた引き継ぎがなされなけばならないということを含意します。すなわち、形骸的に文書を次期の副学長に渡すだけではなく、その解釈が現在どうなりうるかを検討する作業を、当期の副学長は次期の副学長に要請しなければなりません。

    5. 注釈

     当声明にて度々言及されている川添氏の発出した『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』に対する詳細な反論については、以下の声明を参照のこと。

    脚注

    [1] 2018年8月28日 川添信介理事『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』
    [2] 2020年10月1日 吉田寮自治会『2020年10月からの京都大学役員一同への要求書』などを参照。
    [3] ここで「当事者」という言葉を用いているのは、吉田寮に関係する主体は居住者である寮生だけではなく、寮籍の有無にかかわらずさまざまな関わり方をする「寮外生」もまた吉田寮という環境を形成する一員であるという事実を強く意識するためです。京都大学の学生寄宿舎である吉田寮に居住できるのは寮生のみですが、吉田寮が外界と切り離されて存在するわけではない以上、寮生だけを利害関係者として見なすことはさまざまな軋轢を生みます。
    [4] https://www.yoshidaryo.org/kakuyaku/
    [5] 2019年2月12日 京都大学『吉田寮の今後のあり方について』
    [6] 2019年2月12日 川添信介理事『現在吉田寮に居住する者へ』
    [7] この確約では、主に①現寮の処遇は補修の意義を踏まえた上で継続協議していくこと、②新棟を木造と鉄筋コンクリートの混構造で建設すること、③寮食堂を補修することの3点が合意されました。つまり新棟の建設・寮食堂の補修と並行して現棟(当時は現寮と呼称)の処遇に関しての議論を進めていくことが確認されたのであり、川添氏が『「吉田寮生の安全確保についての基本方針」の実施状況について』にて述べた「本学は、止む無く平成 24 年 9 月に、現在の新棟の新築と旧食堂棟の改修のみを行うこととした」という歴史認識は誤っていることがわかります。

  • 2022年12月22日:吉田寮における新型コロナウイルス感染者について

    吉田寮における新型コロナウイルス感染者について

    吉田寮新型コロナ対策委員会
    2022/12/22

    2022年12月22日現在、寮内で5名の新型コロナウイルス感染症の陽性者が確認されています。感染した寮生及び濃厚接触者に関しては、個室隔離と共有スペースのゾーニングを行った上で、それぞれ療養中です。

    これに伴い、通常行っている吉田寮内の見学・案内は一時停止とさせていただきます。感染症拡大防止のため、ご協力をお願いします。

    今後寮内の感染状況が変わり次第、同様の声明にてお知らせいたします。

    ※2023年1月5日追記:現在寮内の感染者・濃厚接触者は0人となり、通常の体制に戻っております。見学・案内も普段通り対応しております。感染拡大防止のご協力、ありがとうございました。

  • 【2022/10/17 声明】UAQ(ケレタロ自治大学)の執行部に抗議する

    [声明]UAQ(ケレタロ自治大学)の執行部に抗議する

    ストーカー行為を行なった加害者学生を擁護し、そして、これまで、数々の性暴力事件を意図的に隠蔽してきた大学当局に対して抗議するため、10月1日、メキシコのケレタロ自治大学(Universidad Autónoma de Querétaro、以下UAQ)の学生たちは、学生連合学部(Facultades Unidas UAQ)を組織し、全学ストライキを起こした。しかし、このストライキに対するテレサ・ガブリエル総長を中心とする、UAQの執行部の返事は、謝罪ではなく、機動隊を動員した学生弾圧だった。

    京都大学の一方的な弾圧と闘っている吉田寮自治会は、このような大学による暴挙を「海外のとある大学の問題」として他者化し、看過することはできない。

    したがって、我々は、UAQの執行部に対して厳重に抗議する。

    経緯

    10月1日、UAQで学生たちが全学ストライキを起こした。ストーカー被害を受けている学生が公式的な手続きを踏んで加害学生を告発したが、大学当局の処置は、加害者の通学時間を変えることだけだった。結局、加害者は数日前銃器で武装してキャンパスの中に入り、学生を脅迫した。UAQでは、この事件以外にも数百件の性暴力事件が意図的に隠蔽されてきた。学生たちはこの事実に憤慨し、ストライキを起こした。

    学生たちの直接行動は、現在キャンパスの5カ所の中の2カ所を占拠している。学生たちは、数多い性暴力事件を隠蔽し、黙認したテレサ・ガルシア総長と告発加害行為をおこなってきた教授の辞任を要求している。しかし、総長は全ての嫌疑を否定し、ストーカー学生と他の加害者を擁護している。また、学内では、機動隊まで投入され、キャンパスの学生たちと対峙している。

    2022/10/17 吉田寮自治会

  • 「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

    京都大学
    学生担当理事・副学長
    村中 孝史 殿

    吉田寮自治会
    2022年9月5日

    「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について」に対する抗議声明

     京都大学学生担当理事・副学長村中孝史氏は2022年9月1日、京都大学公式HP上において「『吉田寮自治会』名義の入寮募集について[1]」なる文書(以下、当該文書)を発出した。当該文書は複数の誤解を招く表現・誤謬を含むため、本自治会はこの文書について撤回を求めるとともに、京都大学当局に対して強く抗議する。

    (「基本方針」について)

     当該文書において村中理事は、「吉田寮生の安全確保についての基本方針」(以下、「基本方針」)に吉田寮自治会が従わないことを以て非難しているが、これがそもそも見当違いである。「基本方針」は、大学当局と吉田寮自治会が積み重ねてきた合意文書である確約書において、「吉田寮の運営について一方的に決定せず、自治会と話し合い、合意のもとに決する」と定められていることに反するものであり、無効なものであると本自治会は指摘し続けてきた。つまり、「基本方針」で求める寮生の退去は、正当性のない大学当局の一方的な主張に過ぎないのであり、それに従わないことを以て本自治会を非難するのは、単なる誹謗中傷である。

     その上、本自治会は、現棟の老朽化対策のための一時的な退去を含めた包括的かつ建設的な提案を大学当局に対して行った[2]。こうした提案をも却下して訴訟を起こし、現棟の老朽化対策すなわち寮生の「安全確保」を遅延させているのは、大学当局の方である。こうした点を捨象した当該文書は、吉田寮についての誤った情報を流布する印象操作と言わざるを得ない。

    (入寮募集について)

     本自治会が行う入寮募集は、2015年に大学当局と本寮自治会において結ばれた確約に基づいて実施している。この確約とは大学当局と本自治会との間で交わされた合意文書のことであり、入退寮選考権が本自治会に帰属することについての合意は1971年に浅井学生部長(当時)と交わされた確約以来引き継がれ続けてきた。最新の確約の内容を改訂する新たな確約が結ばれていない以上、この合意は今も有効であり、したがって本自治会の行う入寮募集は京都大学当局との合意に基づく正当なものである。当該文書はこの事実を無視し、あたかも本自治会が根拠なく入寮募集を行っているかのような表現を行っているが、これは事実に即していない。

     また、本自治会の行う入寮募集について「無責任」と形容するにあたり、もし仮に入寮に社会的・物理的危険が存在し得るということを指しているのであれば、これは不当であるだけでなく悪質かつ不誠実な言及である。訴訟により学生の住環境を脅かし、また大学当局と寮自治会との間で結ばれた確約によって定められた「吉田寮の補修」を行わず補修サボタージュによって吉田寮現棟の老朽化を促しているのは大学当局であるにも関わらず、本自治会に責任転嫁することは、それこそ「到底容認できない」ことである。

    (訴訟について)

     2019年、大学当局は本寮を構成する建築物の一部を対象として明渡請求訴訟を提起しており、現在裁判が進行中である。この訴訟に関しては、本寮の運営について一方的な決定を行わないとした確約に反しており容認できず、本自治会は一貫して訴訟の取り下げを求めている。

     さて、現在吉田寮に居住している本自治会構成員について、進行中の訴訟における債務者[3]は吉田寮現棟への居住を確認された者であり、その現棟居住を妨げる法的な制限は現状存在しない。にも関わらず、上述した文書のような形で本自治会構成員の行いについて「不法」であると表現することは事実に即しておらず、また多大な誤解を生じさせるという点からやはり悪質かつ不誠実である。

     また、本自治会は2022年秋期入寮募集を行う旨を本寮公式HP[4]上にて発表しているところであり、2019年春期以降の入寮募集は上記訴訟とは関わりのない本寮西寮(2015年竣工)に限って実施すると公表している。村中理事が何をもって「不法」と断定しているのかは不明だが、少なくとも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟の対象となっていない本寮西寮への居住・新規入寮が「不法」であると表現される根拠は存在しないはずである。西寮の存在を隠蔽し、本自治会への事実無根の偏見を助長するこのような文書は再三述べているように悪質かつ不誠実なものである。

    (入寮募集の責任について)

     以上を鑑み、当該文書は、「不法」というワードによって、本寮への入寮を考える者に対して危機感を煽り、入寮への道を閉ざすことが目的であると推察される。一般に学生寮が学生の福利厚生施設であることは言うまでもないが、その福利厚生を享受できる学生数をこのような形で大学当局自らが減じている事態を、本自治会は深く憂慮している。大学当局が現棟の具体的な老朽化対策を含めた将来的なプランを示さないまま無責任にも寮生を退去させようとする中、本自治会には福利厚生施設維持の観点から入寮募集を継続し、未来の学生に対しても福利厚生施設の門戸を開く責任がある。

    (最後に) 

      本自治会は当該文書の撤回を求めるとともに、このような形での寮運営の妨害を止めるよう抗議する。大学当局が第一に行うべきことは確約に基づいた寮自治会との交渉の再開であり、合意形成を経ずにこのような文書を発出することのないよう再度要請する。


    [1]https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2022-09-01-0
    [2]2019年2月20日「吉田寮の未来のための私たちの提案」https://www.yoshidaryo.org/archives/seimei/495/
    [3]2019年1月・3月に京都地裁により執行された占有移転禁止仮処分による。
    [4]https://www.yoshidaryo.org/