2020年2月20日:京大当局による吉田寮生・元寮生への脅迫に対する抗議声明

京大当局による吉田寮生・元寮生への脅迫に対する抗議声明

2020年2月20日 吉田寮自治会

2020年1月21日、「吉田寮現棟に係る占有移転禁止の仮処分の執行とその後の状況について」と題する書面が京都大学学生担当理事・副学長川添信介名義で発出され、吉田寮現棟・食堂の占有権限を持つ債務者の一部とその保護者宛に送付された。

本声明は上記の事実を報告しかつこの度の書面送付における種々の問題点を提起するものである。当該の書面については、宛名の債務者個人名のみを伏せ末尾に添付する。

この書面は、2019年1月17日及び同年3月4日の吉田寮現棟・食堂に対する「占有移転禁止の仮処分」において、吉田寮現棟・食堂の債務者として固定された全80名のうちから、現在進行中の現棟・食堂明渡請求訴訟の被告として選抜された20名を除き、かつ3月4日以降に吉田寮からの退去を報告する「誓約書」を京大当局に対して提出した者を除いた者達に送付されている。

この書面で京大当局は、2020年2月10日という期限を一方的に定めて「退去報告書」を出すよう迫り、「期日までに提出のない場合又は退去報告書に不備がある場合は、本学は、貴君を被告として現棟の明渡請求訴訟を提起する方向で検討する」と述べている。「退去報告書」とは、京大当局が書式を指定しており、吉田寮退去後の住所の証明書類の提出と、「京都大学に許可された場合を除き、吉田寮現棟・食堂に一切立ち入らないことの誓約」を求めている。

今回京都大学が送ってきた書面は、大学当局に話し合いを求め続けている寮生のうち被告とされていない者に対して、提訴をちらつかせて圧力を掛け、なかば強制的に誓約書にサインさせ、吉田寮から追い出そうという大学の姿勢の表れである。何度も大学に対して話し合いを求めてきた(※1)寮生達に対して、話し合いに応じるのではなく、更に脅迫を重ねるという強圧的な姿勢を取っている。

川添理事らは”歴代の学生担当理事がサインしてきた吉田寮自治会との『確約』は有形無形の圧力の下個人が勝手にサインしたものなので京大としては無効”だと主張している(※2)。このように、過去に京大当局の役職者と寮自治会が交わした約束を勝手に反故にし、吉田寮自治会との合意形成はしないと言い張り、寮生を恫喝をもする川添理事が、寮生に対しては「学生担当理事・副学長 川添信介殿」に誓約しろと迫る姿勢は、理事自身の発言とも矛盾している。一方的に短期間の期限を定め法的措置をちらつかせたこの状況で、仮に寮生が誓約書にサインしたとしても、これこそまさしく「有形無形の圧力」下のサインであり、自由意志による拘束力のあるサインとは言えないことは、言うまでもない。

「占有移転禁止の仮処分」当時に債務者とされた寮生の一部は、2019年3月に京都大学を卒業したことに伴って吉田寮を退寮し、他府県に進学・就職した者もいるが、京大当局はそれらの学生に対しても京都大学を卒業したことを把握した上で尚上記書面を送り付けている。

卒業生の中には、2019年3月に「京都大学を卒業するので吉田寮を退寮し、他県の大学に進学する」と京都大学厚生課窓口に自ら進路報告を行った学生もいたが、京大当局はその学生の進学先である他大学の教務に対してまで、この書面を送り付けた上で「当該学生が確実に書面を受け取ったか京大に報告せよ」と伝達していたケースまである。

京都大学が提訴するとしている明渡請求訴訟とは、建物を居住するなどして占有している者に対して起こすものである。既に京都大学を卒業し他府県への転居を報告した卒業生が吉田寮の建物を占有していないことは、何より当該の卒業生から直に進路報告を受けた京大当局こそが把握しているはずである。また、吉田寮自治会は大学との約束通り(※3)、毎月寮生名簿を作成し厚生課窓口に提出し続けており、この名簿は各寮生個人の入退寮報告としての意味も持つ。この寮生名簿を、京大当局の都合で2018年4月より受け取りを拒否し続けているのである。

このような経緯の上で京大当局が卒業生に書面を送付した行為は、京都大学を卒業し新天地で生活を送っている卒業生に対する迷惑行為であり嫌がらせに他ならない。

そもそも吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は京大当局が寮生からの話し合いの要求を無視し続けた挙句、現寮生の中から20人を選択し訴えたものである。経緯の不当性もさることながら、自ら被告とした学生たちを見せしめに使用する行為は大学として、教育者としてあるまじき行為であり、これを吉田寮自治会は断じて許すことはできない。

吉田寮現棟・食堂明渡請求訴訟は、京大当局のたった8人の現執行部のみで決定されたものであり、吉田寮生、寮関係者はもちろんのこと、学内外の地域の人々や卒業生から教授陣に至るまで広く反対の声が上がっている。

吉田寮自治会は京都大学当局に対して改めて、このような自分たちの大学の学生を見せしめとまでするような恫喝訴訟を取り下げ、一刻も早く現棟の改修を含め吉田寮の今後の在り方について寮自治会との話し合いを再開するよう要求する。

(※1)吉田寮自治会から京大当局に対する話し合いの要求は、以下に紹介する公式発表文書や、山極総長・川添理事らへの直接的な伝達、および厚生課窓口を通した間接的な伝達など、幾度にも及ぶ。

  • 2018年10月17日 吉田寮自治会「公開質問状ならびに要求書」
  • 2019年1月19日 吉田寮自治会「京大当局による『占有移転禁止の仮処分』申し立てに対する抗議声明」
  • 2019年2月20日 吉田寮自治会「表明ならびに要求」
  • 2019年3月16日 吉田寮自治会「要求書」
  • 2019年5月5日 吉田寮自治会「吉田寮現棟の明け渡し訴訟に対する声明文」

(各声明文は吉田寮公式サイトに公開されている)

(※2)川添理事「確約書はこれまで『団交』という場で結ばれてきた。その団交というものが…(中略)…数の力による有形無形の圧力のもとで、長時間かけて、自治会の主張を何とか大学側に認めさせる、そういう形態をとっていたと理解している。だから、サインしてきたというのは事実だろうけれども、お互いの自由意志に基づく形の確約書であるとみなせない。また、確約書が、大学の公式な手続きを経て、サインされてきたわけではない。これらのことから、私としては、それ(確約書)に拘束されるものではないと理解してきた。」

(京都大学新聞社「2019年1月17日川添理事記者会見」http://www.kyoto-up.org/archives/2813

川添理事の主張に対する反論は2017年12月26日付け「『吉田寮生の安全確保についての基本方針』に対する抗議声明」で述べているため参照されたい。なお「確約書が大学の公式な手続きを経ていない」という主張に対する明示的な反証の一つとして、大学評議会の承認を受けた、河合隼雄学生部長(当時)との合意事項(後述)が挙げられる。

(※3)「1989年4月以降、在寮者名簿の提出、及び寄宿料の支払いを毎月初め、一括して行う。/寮自治会と確認した以上の諸点に関して、学生部長名文書に記述し次期以降の学生部長に引き継ぐ。/今後も継続して、学生と公開の場での話し合いを行う。他の厚生施設に関しても、当事者と話し合うことなく一方的な決定を下さない。」

(河合隼雄学生部長「吉田寮問題について」(1989年)https://zaiki.github.io/p512.html より、合意事項の一部を抜粋)

添付資料

200121吉田寮現棟に係る占有移転禁止の仮処分の執行とその後の状況について_抗議声明用